テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
18
52
148
そんなある日、私は同じ陸上部で大親友のサキに引っ張られるようにして、いつものドアを押した。カランコロン。
「いらっしゃい。……あ、潮凪北中の陸上部ちゃんじゃん。今日もお疲れ様!」
カウンターの奥から、いつもの聞き馴染んだ軽やかな声が降ってくる。
「……あ、こんにちは」
サキは私の横で、一瞬で目を丸くして固まっていた。
「お、今日は可愛いお友達も一緒なんだ。奥の席、空いてるよ」
席に着いた瞬間、サキがもの凄い勢いで私に顔を近づけてきた。
「ちょっと、〇〇!!あのお兄さんめちゃくちゃイケメンなんだけど!何あの芸能人レベル!?聞いてない!」
「し、声が大きいってば……!」
やがて、羽鳥先輩がトレイを持って戻ってきた。
「はい、お待たせ。お友達はアイスティー、〇〇ちゃんはいつもの特製レモンスカッシュね」
グラスを置く先輩の指先を、私は盗み見るように見つめる。すると、サキがニヤニヤしながら、とんでもない爆弾を落とした。
「ねえねえ、羽鳥先輩!先輩って、彼女いるんですか!?」
「ごほっ、げほっ……!」
私はレモンスカッシュを本気で喉に詰まらせそうになった。
「ちょっとサキ!何聞いてるの!?」
「だって気になるじゃん!」
恥ずかしさと焦りで頭がどうにかなりそうな私を前に、羽鳥先輩は驚いたように目を丸くしていた。――あ、終わった。馴れ馴れしい中学生だって、嫌われちゃったかも。涙目で俯く私を見て、先輩はふっと、いつもより少しだけ低くて優しい声で笑った。
「あはは、彼女?……いないよ、全然。毎日部活とダンスで泥だらけだしね」
「えー!本当ですか!?チャンスじゃん、〇〇!」
「ちょ、ちょっと待ってってば……!」
サキの言葉に、私は顔が真っ赤になる。すると、羽鳥先輩がカウンター席の椅子を引いて、私の目の前まで顔を近づけてきた。綺麗な瞳が、じっと私を捉える。
ねえ、
〇〇ちゃん。今の聞いて、ちょっと安心した?」
「ち、違っ……!」顔が近すぎて、熱さで頭がパンクしそうだ。声が出ずに首を振る私を見て、先輩は「冗談冗談」と声を立てて笑う。「でもさ、もし俺に彼女ができたら、こうやって可愛い後輩たちとゆっくりお喋りできないでしょ?だから、時間は彼女いない方がいいんだわ」
先輩はそう言って立ち上がると、私のお皿を指さした。
「〇〇ちゃん、それ、パンケーキの横の生クリーム、いつもより多めにしといたから。部活がんばったご褒美。友達には内緒ね?」
そう言って、片目を瞑ってウインクをしてみせた。先輩がカウンターの奥に戻った後、サキが机をバンバン叩きながら身を乗り出してきた。
「ちょっと〇〇!!今の絶対『特別扱い』じゃん!先輩も絶対あんたのこと意識してるって!」
「もう、からかわれてるだけだよ……中1だし、子供だと思われてるもん」
パンケーキの横の、山盛りの生クリームを見つめる。甘くて、美味しくて、でも高校生の先輩との歳の差が少しだけ切なくて。
「早く高校生になりたいな……」
私は小さく呟きながら、いつもよりずっと甘いパンケーキを口に運んだ。この恋が、これからどんな風に動いていくのか、まだ中1の私には何も分からなかったけれど。
コメント
3件
もう、サキの爆弾質問に私も一緒にむせたよww レモンスカッシュ吹き出さなくて偉い!笑 でも「彼女いないよ」って言った後の先輩の「ちょっと安心した?」って追撃がずるすぎる…!あれは絶対わざとだよ、中1相手に反則級の破壊力あるよ…✨ 「生クリーム多め」も「友達には内緒ね」も、特別扱いされてるってバレバレじゃん!サキの言う通り、先輩絶対〇〇ちゃんのこと意識してるよ…! 最後の「早く高校生になりたいな」って切ない気持ちもすごくわかる。歳の差の甘酸っぱさがぎゅっと詰まったエピソードだったよ、続きが気になる〜!