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第5話
ピンポーン。
行くか迷ったけど、結局来ちゃった。
「……誰だよ。」
かすれた声。
出た瞬間、思わず叫んだ。
「うわっ、ほんとに風邪ひいてる顔!」
「……お前、失礼だな。」
「いや、マジで顔色悪いし。ゾンビ映画出れるよ!」
「帰れ。」
即答。
ドアが閉まりかけるのを、慌てて手で押さえた。
「ちょっ、待って待って! ノート持ってきたんだって!」
「……はぁ。勝手にどうぞ。」
(……うわ、これ、なんか可愛い。)
「なにニヤニヤしてんだよ。」
「えっ!? してないしてない! ってか、顔真っ赤じゃん!」
「熱あるに決まってんだろ。」
「うん、でもそれ以上に照れてるように見えるけど?」
「照れてねぇ。」
「もしかして、私が来たの嬉しかった?」
「は? 誰が? 」
「え、違うの? ノート届けてあげたのに?」
「……ノートは助かるけど、お前はいらん。」
「ひどっ!」
笑いながらノートを差し出すと――
その瞬間、黒瀬がドアの横にもたれかかるように、ふらりと体を崩した。
「ちょっ!? 黒瀬っ!!」
「わ、悪い……ちょっと立ちくらみしただけだ。」
「なに“だけ”って言ってんの! 顔真っ赤だよ!」
「熱のせいだって。」
「そうやって無理するの、昔から変わんないんだから!」
「ちゃんと休むの! ご飯は? 食べた?」
「……母親かお前は。」
「だって!心配だもん!」
「……はいはい。ありがとな。」
ボソッと聞こえたその声は、
思ってたより優しくて、
ちょっとドキッとした。
「え? 今なんか言っ……」
「言ってねぇ。早く帰れ、ゾンビ。」
「だから誰がゾンビだってばー!!」
「……ほんと、バカだな。」
目を閉じて、少しだけ口元がゆるむ。
「……あー、マジで、うるさい女。」
少し間を置いて、
ぽつりと笑った。