テラーノベル
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⚠︎年齢指定作品です。未成年の方は読まないでください⚠︎
タイトルの通りのあほえろです。副題「煽り上手の佐伯さん」。
19000字あるのでお暇な時にどうぞ。
=====
夏。それは灼熱の苦しみと納涼の楽しみを併せ持つ、唯一無二の季節。
煌めく太陽に青い空。それらを揺るがす蝉の大合唱に包まれる中、リトとイッテツは絶賛────、
「あ゛っっっっづ…………」
「死ぬ………………」
──死にかけていた。
事の発端はつい先日、イッテツの自宅周辺で電気回路の工事が行われることになった日へと遡る。夏休みが終わるまでに仕上げなくてはならない課題やらレポートやらを抱えていたイッテツはリトに泣きつき、リトの自宅へ一時的に滞在することになったのだった。
しかし問題はそこから。リトはヒーロー業に加えてジムトレーナーを兼業しており、日中は家を留守にすることが多い。その間イッテツは涼しい家の中で作業を進め、熱い陽射しに灼かれて帰宅するリトを労ってやる。
実に完璧な共同生活であった。ただ一点──エアコンを消す時間が全くないというところを除けば。
「いやまさか、朝一番にエアコンがぶっ壊れる音で目覚めることになるとはね……」
「まぁ、テツが来てからは毎日フル稼働だったしな……」
「……修理業者の人、いつ来るって?」
「わかんねえ……今日暑すぎて色んなとこでトラブル起きてるっぽいから、下手したら十何時間後になるかもしれないってさ」
「……あー、………………死ぬね」
「かもなあ……」と力なく呟いて、リトはカーペットの上を這いずり冷蔵庫を開ける。昨日の夜に満杯まで作っておいた麦茶はもうすでに4分の3ほど減っており、今から飲む分を引くとあともう1〜2杯分しか残されていない。
一応非常時用にミネラルウォーターの蓄えはあるものの、あれも常温で置いてあるものだ。こんな暑い日に飲むのであればどうせなら冷たい飲み物がいい。そんな風に考えながら製氷機から氷を掬い、麦茶を注ぐ前のグラスへカラカラと落とす。
イッテツは比較的涼しい窓辺のフローリングに寝転がりつつ、何となくその様子を眺めていた。キンキンに冷えた麦茶を美味しそうに飲むその健康的な肉体には玉のような汗があちこちに浮かんでおり、それらは彼の動きに合わせてつるつると滑り落ちていく。
嚥下のたびに上下する喉仏、グラスを持つ腕にくっきりと浮き上がった血管、シャツの下からちらりと覗く、たくましい腹筋の陰影────……
……あー、……なんか、
「……ね、リトくん」
「あ?」
「麦茶セックスって知ってる?」
「ッ!?? げほ、」
普段絶対にそういった話をしない恋人から発せられるあまりにストレートすぎる単語に、リトは思わず咽せ込んだ。
「おッ、まえ……ハァ!?、急に何だよ、その、麦茶──」
「しない?」
「……は?」
「麦茶セックス。しようよ」
のそのそと起き上がってきたかと思うと、立ったままのリトの脚をツンとつついてちょっかいをかけてくる。
普段あまり見せない幼げで煽情的な態度に、リトは暑さのせいではない目眩に襲われた。
「いやっ、だから……まず、麦茶セックスって何なんだよ……?」
「ほら、あれだよ。同人誌でよく見る、真夏のクソあっつい日にエアコンも付けず麦茶もほったらかしにして性行為に耽るっていう、あのシチュエーション」
「えなんでそんなことすんの……? 見たことねえんだけど」
「え? そんな人いる……?」
まるでこちらがおかしなことを言っているみたいな顔をしてイッテツは首を傾げる。リトは目線を合わせるために一旦その場に腰を下ろすと、麦茶の入ったグラスをテーブルに置いてイッテツの額に手を当てた。
……この気温のせいで汗ばんではいるものの熱は無さそうだ。突然こんなことを言い出すなんて風邪でも引いて意識が朦朧としているんじゃないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
あと、体温を計るのに適した部位といえば、血管の集中している首あたり──、
「っ、んは……くすぐった、」
「…………っ」
首筋に這わされた手に擦り寄って悩ましげに身を捩らせるイッテツに、リトは危うく理性を手放しそうになる。今日は一体どうしたんだ、こいつは。本当に暑さのせいで頭でもやられたのか?
襟口から覗く白い肌に伸びそうになる手をすんでのところで引き返し、緩みかけた口元を慌てて覆う。
「っ待てって! ……まずいだろ、わざわざこんな暑い日に……」
「暑い日だからこそじゃん。こんな暑さじゃ他に何もできないだろ」
「いやいやいや、あるだろ他にもっと! せめてほら、涼しいとこに行くとか──」
「……あのさ、」
突然ぐるんと半回転した視界に、一瞬何が起きたのか分からなかった。イッテツに押し倒されたのだと気付いたのは、その本人に唇を塞がれてから。
「……っ!? ぅ、ん……ン゛〜……!!」
「ん、ちゅ……ふ、っ♡」
意外と強い力で雁字搦めにされてしまい、体勢的にも上手いこと抵抗ができない。イッテツの薄い舌は麦茶で冷たくなったリトの口内を器用に弄び、上擦ったような甘い声は僅かに残った理性を無情にも溶かしていく。
「っん……はぁっ♡ ……あのさ、リトくん」
「……ぁ……?」
ようやく顔を離したかと思えば、上体を起こしたイッテツはリトの膝を立てた脚にぐっと股座を押し付けた。脛には確かな熱と湿度を持った何かが押し当てられる感覚。
こいつもう勃ってんのかよ、と思うと同時に、リトの自身も硬く張り詰めているのが目に入ってしまう。
はぁ、とぬるい吐息がぶつかり合う。
「──きみ、据え膳に手つけないタイプ?」
「……ッ、」
じっとりと淫らな欲を滲ませた瞳に射抜かれ、とうとうリトの鋼の理性が決壊を迎えた。
明らかに様子の変わったリトに内心ほくそ笑みながら、イッテツは伸ばされる手に迷いなく頬擦りをする。浮いた汗がじわりと吸い付き、首筋へと垂れていった。
§ § §
「はぁ、あっつ……服なんか着てらんないよね、こんな暑くっちゃさぁ」
「…………」
服なんぞただの布と言わんばかりの雑な脱ぎっぷりを見せるイッテツだが、リトは突然始まったストリップショーに目が離せなくなる。
薄い胸に薄い腹、胸に至ってはうっすら浮いた胸筋の凹凸よりも、肋骨の影の方が目立ってしまっているほどだ。肉も脂肪も見当たらない、内臓なんてどこに詰まっているのかと疑いたくなるほど華奢で、これで一応は鍛えているのだと言い張るのだから笑わせる。
そうしてイッテツはややオーバーサイズなTシャツを脱ぎ捨てると、その場にどかっと座り込む。仕草といい態度といいどこまでも色気がないはずなのに、浮いた腰骨や内腿の筋、そしてそこに伝う汗にどうしようもなく劣情を唆られてしまう。
「……ふ、ちょっとぉ……見てないでリトくんも脱ぎなよ」
「あ、おう……」
あからさまな視線に気付いたイッテツは冗談めかして身体をくねらせるが、リトにとってはそれも含めて興奮材料にしかならなかった。
イッテツとしても、いくら気安い仲とはいえ股間をギンギンにいきり勃たせながらこちらをガン見されてはさすがに居心地が悪い。ここは平等にリトが脱ぐ様子も眺めさせてもらうことにする。
リトはイッテツよりかは少しばかり恥じらいを見せながらTシャツの裾を掴み、ぐいっと捲り上げた。
……しかし、見れば見るほど惚れ惚れする肉体だ。彼の場合鍛えるとは言ってもただ単に見せるための筋肉ではなく、ヒーローとして強くなるために必要な、謂わば実用的な肉付きなのだ。ボコボコ浮き出た立体的な腹筋も、イッテツのふくらはぎほどはあろうかという太さの腕も、全ては市民の皆さんのため──とは言いつつも、あの身体に覆い被されたり抱きしめられたりした時のことを思い出すと、自然とふしだらな気分になってきてしまう。
あのごつごつした大きな手で抱き寄せられると否が応でもときめいてしまうし、見るからに豊かな胸筋は脱力している時に触ると意外と柔らかい。それに、あんな巨躯にのしかかられてしまえばこちらは逃げ出すことも叶わないのに、触れる手つきはどこまでも優しく慈しみに満ち満ちていて。──ああ、愛されてるんだなぁ、と分からされてしまう。
ぼうっと見惚れているうちに襟口からオレンジ頭が現れて、チャリ、とピアスの揺れる音がする。
目が、合ってしまった。
「……ふっ、はははっ! お前、なんつー顔してんだよ!」
「りっ、リトくんがあまりにもセクシーすぎるからいけないんだろ……!!」
「え今更? 俺結構セクシーでやってきたと思ってんだけど」
「はは、抜かすな」
「さっきと言ってること違うじゃねえか」
いつものように軽口を叩きつつも交わる視線は双方ともギラついており、いつ襲いかかってやろうか虎視眈々と狙っている。
2秒にも満たない沈黙が流れたあと、先に唇を開いたのはリトだった。
「そういやお前、準備はできてんの?」
「え? あぁ……さっきあまりにも暑くてシャワー浴びた時ついでに済ませてあるから、大丈夫だよ」
「……は!? じゃあお前元からヤる気満々だったってことじゃねーか!」
けろりとして答えるイッテツにリトは掴みかかりそうな勢いで問い詰める。
先ほどリトがエアコンの修理業者に電話をかけている最中、イッテツは汗が気持ち悪いからとシャワーを浴びに行ったのは知っている。……ということはつまり、暑さに項垂れながら床に這いつくばっていた時も、何気ない会話をしている最中も、ずっと準備万端で好機を狙っていたということで。
こちらを責めるようなことを言いつつも表情は喜色が隠せていないリトに、イッテツは心なしか頬を赤く染めながら平静を装う。
「…………悪い? 普段より薄着で汗だくの彼氏にドキドキしてムラついちゃあ……」
「そっ……れはズルいだろ……!」
側から見れば逆ギレもいいところだが、リトからしてみれば可愛くてしょうがない恋人の『男の子』の部分が垣間見られた気がして口元が緩むのを抑えられない。
──何だか調子を崩された気分だ。イッテツは普段意識してこういった猥雑なノリには混ざらないようにしているのだが、どうにも自分の欲が絡んでくると抑えが効かなくなる。それも最愛の恋人であるリトを前にした時だけは。
暑さのせいだけではない汗を手の甲で拭いつつ、イッテツは胡座をかいているリトの腰元へ手をついた。
「……よく言うよね? きみだってさぁ、こんな……うわ、」
「……うわって言うなよ……」
張り詰めすぎてかろうじて引っかかっていた程度の下着をおろしてみれば、血管が浮き立つほど完勃ちしたそれがぶるんっ! と勢いよく飛び出した。
こうして間近で見るとより一層その規格違いのサイズを理解させられる。イッテツの自慢の息子だってそんなに小さいというわけではない。むしろ平均よりちょっと大きいくらいだ。それなのにリトと比べるとまるで子供のようにすら思えてしまって、雄としての格の違いをありありと見せつけられてしまう。腹につくほど反り返りグロテスクとも言えるその見た目が、雌としての悦びを身体に叩き込まれてしまって久しいイッテツにとっては、力強く自分を貫いてくれる愛おしい存在にしか見えなかった。
イッテツがすん、と鼻を鳴らすのを聞いて、リトは顔を顰める。
「ちょっ……嗅ぐなって」
「っは……かぁっこいい……♡ こんなの、俺の顔よりでっかいじゃん……っ」
「や、やっぱ風呂入ってくる。汚ねえからあんま触ん……ッおい!」
リトが腰を浮かしかけたその時、イッテツは躊躇なくその赤黒い先端をぱくりと口に含んだ。無理矢理引き剥がそうにも恋人相手に乱暴はできないし、何より散々焦らされた末にされる口淫は抵抗する気も失せてしまうほど気持ちよかった。
一応抵抗の意思を示すものとしてイッテツの頭に手を乗せると、彼は切れ長の瞳を三日月の形に歪めて根本から先端の裏筋をれろぉっ♡ と一気に舐め上げた。柔らかくも微かにざらついた舌が這わせられる感覚に、ズンと腰が重たくなる。
「ぁッ……ぐ……っ゛」
「ろぉ? ひもひぃ?」
「そこで喋んな……っ! ……歯当てんなよ」
「……っ♡」
ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に優しい手つきで頭を撫でられ、イッテツは肯定の代わりに舌を出して熱い吐息をかけた。
ただでさえ自身のものを美味しそうに舐めしゃぶる愛しい人の姿というだけで目の毒なのに、愛撫の質が明らかに上がっている。暑さでまともな思考ができないことも相まってリトはもうすでに限界が近かった。
イッテツはリトの反応を楽しそうに見上げながら、カウパーを垂れ流している尿道にちゅっ♡ と吸いつき、口内だけでは到底収まらないそれを根本まですっぽり咥え込んだかと思えば、粘性のある唾液を纏わせてずろぉっ♡ と吐き出す。
喉奥まで咥えるとか、AVじゃねえんだから。そもそも今までの人生でアブノーマルなプレイにあまり触れてこなかったリトは、現状に混乱を隠せないまま快楽に身を委ねるしかなかった。
「、っく……どこで、っそんなん、覚えてきたんだよッ……」
「んむ……そりゃまぁ、色々だよ。せっかくならさ、試してみたいじゃない? 色々」
「っ色々って何だよ!? ……あ゛ッ、ちょ、止まれ……っ!」
カリ裏をちろちろ舐められながら大ぶりな動きで竿を扱かれ、ぐっと射精欲がこみ上げる。
さすがに口内射精の趣味はないのでやめさせようとするが、如何せん達する寸前の敏感な身体では上手く力が入らない。そうこうするうちに絶頂はすぐ目の前まで迫ってきており、『離す気ねえなこいつ』と悟ったリトは形だけの抵抗をやめた。
「んッ゛、ぐ……も、でる、っ射精る……ッ」
「ん……らひていいよ♡」
「ぁ゛ーー、クソっ、……っう゛……ッ!!」
「んぶっ♡ ッん゛、グ……っ♡」
ぞわ、と全身の毛が逆立つ感覚とともに、リトはいつもより早く射精を迎えた。
びゅるる〜っ!♡ と勢いよく吐き出されたそれを、イッテツは一滴たりとも溢すことなくすべて飲み干してゆく。彼もまた濃厚な精液が喉奥に叩きつけられる感覚に軽く達してしまっており、下半身に甘ったるい痺れが走るのを止められない。
リトの息が整うまで続いた長い射精の後、最後に尿道に残った精液までぢゅっ♡ と吸い取ってからようやくイッテツは顔を離した。
「ぁ、は……っ♡ リトくんの味する……♡」
「……んだよ、俺の──ってお前、飲んだのかよ……?」
「だってもったいないし……ねぇ、気持ちよかった?」
「あー、……すっっげえ気持ちよかった……」
「へへ、だろ。研究したからね」
不本意そうに口元を覆うリトを見て、イッテツは満足げに笑ってみせた。先ほど妖艶な表情を見せられた時ともまた違うときめきに苛まれ、それを誤魔化すために顎まで垂れてしまった涎を指で拭ってやる。顎から唇へと届けてやれば、イッテツは見せつけるようにそれを指ごと器用に舐め取った。
──この小さな口がたった今自分のものを咥えて、あまつさえ吐き出した精液までも愛おしそうに飲み込んだのか。そう思うと、普段は心の奥底へと押し込めている支配欲がじわり満たされていくのを感じる。
うなじがぞくりと震え、危うい思考を振り払うようにわざと軽薄な声を作った。
「……あ、今日はもうキスしねえから」
「えッ!? なんで!!?」
「当たり前だろ。自分のちんこ舐めた口とキスしたい奴がどこに居んだよ」
「…………」
「ちょっと考えんのやめろ?」
好奇心旺盛にも程がある恋人にも不穏な気配を感じつつ、リトはイッテツの両脇に腕を差し込み、そのまま上体をひょいと持ち上げる。「こうしてみると本当に猫みたいだな」と呑気なことを考えているリトに対し、イッテツは一瞬のうちに起きた非常事態に目を白黒させた。
「はぇっ!? ちょ、いきなり何すんのリトくん!!」
「はは、声デカ。やっぱテツに任せんの心配だからさ、ちょっと見さして」
「見るって……あ、まって──ぁっ……♡、」
イッテツを膝の上に座らせると、リトは短パンと下着の下へ手を潜り込ませた。一体どれだけの熱を忍ばせていたのか、その中はサウナのように暑くむわっとした湿気が充満している。
脚を開いた状態で動けないように固定したおかげで簡単に見つかったそこへ、リトはゆっくり中指を這わせた。
「……うわ、ローション垂れてぬるっぬるじゃねえか。……え、お前今までずっとこれで過ごしてたの?」
「っ、うん……だから、すぐ挿れて大丈夫だって、」
「それはだぁめ。お前に怪我させたくねえの。……な?」
あえて子供に言い聞かせるような優しい声で諭すと、イッテツは途端に黙り込んで大人しく頷いた。ぴったり合わせた素肌越しに早まる鼓動を感じ取り、リトは「こいつ本当に俺の声好きだな」と思った。
こちらから挿れようとせずともむちゅむちゅと吸いついてくる窄まりに、焦らないよう慎重に中指を沈めていく。第二関節が埋まったあたりで、イッテツは極まったような声を上げた。
「……っぁ、う゛……♡ リトくんの指、ふっと……♡」
「は、……何それ、褒めてんの?」
「はっ、当たり前じゃん♡ 俺、リトくんの指で触られると──あっ♡、そこ……っ♡」
「ん、ここきもちーなぁ。テツはここ大好きだもんな?」
「んッ♡ ……っうん、すき♡ リトくんにっ、そこいじめてもらうの♡ すっげぇ好き……っ♡」
「……あ゛ーー……お前、マジでさあ……」
「ッあ♡ きもちぃ……っ゛♡ ゃ、ぁっ♡ あ゛っ……♡」
周りと比べて少し感触の違うそこをとんとん♡ と軽く押し込んでやれば、イッテツは全身をびくびく跳ねさせて悦んだ。いつの間にかリトの背中へ回されていた腕は内壁が収縮するたびに拘束を強めていき、しがみつくような姿勢になっている。
ぬるい言葉責めをしているつもりが完全なカウンターを食らってしまい、リトは言葉を詰まらせる。よくもまぁそんなことを恥ずかしげもなく言えるものだ。イッテツはリト以外とこういった行為をした経験は無いはずだが、これも耳年増というやつなんだろうか。
「指、増やすからな」
「ん……──は?、ちょッ……♡ 一気に2本、はっ♡ むり、だって……っ♡」
「ッ、悪りぃ、ちょっと俺もさ、……限界なんだわ」
「〜〜〜、も、しょうがないなぁ……っ!♡」
リトは余裕なさげに息を詰まらせ、駄目推しと言わんばかりに耳元で囁いてやった。内壁がきゅうん♡ と指を甘噛みするので、それだけで返事はもらったも同然だ。
許可も降りたことだし、とリトは意識を手元に集中する。余裕がないのは本当だ。たった今射精したはずの怒張はもうすでに補填を完了させて、臨戦態勢に戻っていた。
人差し指と薬指で壁を拡げて、中指で例の箇所を避けつつ緊張した筋肉をほぐしていく。と言ってもそこはもうすでにしなやかな伸縮を繰り返す魅惑の肉壺と化しており、イッテツいわく「ついでに済ませた」という前準備はかなり入念なものだった。
……どんだけヤりたかったんだよ、こいつ。マジでかわいいな。
リトは自分の表情に凶悪な笑みが浮かぶのを自覚しながら、それを見せないようイッテツの耳元に顔を寄せた。
「──な〜ぁ、テツ。……腰動いてんだけど」
「ゃ……だ、だって……っ♡ 気持ち、よくて……とまんねぇんだもん♡」
「……んじゃしょうがねえかぁ……つか、腰つきエロすぎね……? 誘ってんの?」
「ッ見て、わかんない? ……誘ってんだろ、どっからどう見ても……っ♡ はやくリトくんの挿れて、好きにしていいから──……っあ゛ッ♡♡」
とうとうリトの最後の砦が崩壊し、指を3本一気に引き抜く。ごつい関節部分が敏感になった前立腺をごりゅっ♡ と抉っていくものだから、イッテツは打ち上がった魚のようにびくんと飛び跳ねさせられた。リトの指はふやけて白っぽくなってしまっており、それが内側の感触を物語っていて思わず生唾を飲み込む。
脱力したままのイッテツを優しく押し倒して仰向けに寝かせると、下着ごと短パンを脱がせてしまう。汗でべたついて手こずっていると、まともな意識を取り戻したイッテツが腰を浮かせて手伝ってくれた。
「……いや、自分で脱げよ」
「無粋なこと言うなよダーリン」
そう言ってへらりと笑う顔が何故かとてつもなく煽情的に見えてしまい、つい唇を塞いでしまう。舌を合わせた時に広がる青臭い匂いで、ああさっきフェラされたんだったな、とどこか他人事のように思い出した。
「はッ──……キスは、しないん、じゃ、……なかったの」
「あー……もう、どうでもいいわ」
名残惜しげに最後ちゅっと軽いリップ音を立てて唇を離す。熱い吐息が首筋にかかって不快なはずなのにどうしてかそれを嫌だとは思えず、こんなに茹だるような暑さで密着しているのに全く離れようという気が起きないのは、それだけお互いがお互いを求め合っているということなのかもしれない──だなんて、てんで寝ぼけたことを考えてしまう。
くっついたままの腰と腰の間に、双方の臍にまで届くかというほど長大な猛りが跨っている。イッテツはこれが今から自分の中に入るのかと思うと、目の前に迫る期待にとろとろと先走りが溢れるのを止められなかった。
「……ね、ゴム着けてあげよっか」
「…………口は使うなよ」
「ちぇー」
イッテツは脚をリトの腰に絡めたまま背を伸ばし、棚の中段に無造作に置かれている箱を取った。リトのサイズに合うものは薬局やコンビニには置いておらず、今のところ某激安店でしか売っているのを見たことがない。
……そんな上振れの極地みたいな大きさに慣れてしまっている自分も自分だ、と、ビニールを破りながらイッテツは自嘲する。それもこれもきみのせいだ。初めての時からずっと、こんな凶器に怯える余裕もないくらい毎度毎度でろでろに甘やかしてくるものだから、異常性に気付く暇もなく慣れてしまった。
裏表を確認して、先っぽの空気を抜いて、ふちを下ろして──その一連の動作を見守るリトが何やら複雑そうな顔をしているのを見て、イッテツは手を止める。
「えっ何、俺手順間違えてる??」
「……なんかお前手慣れてきてねえ?」
「そりゃ何度もやってきてるからねぇ。……あ、安心してよ。きみのにしか着けたことないから」
考えていたことを物の見事に当てられ、リトはばつが悪そうに目を逸らしながら口元を手の甲で覆う。そんな風に誤魔化したところで耳が真っ赤じゃ何も隠せていないも同然なんだけど。
そうして準備が整ったところで、イッテツは残りのゴムが今装着した分を含めてあと2つしかないことに気がついた。2回。それがどうやらリミットらしい。足りるか? たったそれだけで、健全な成人男性ふたりの性欲が。
──まぁ、最悪中に出してもらえばいっか。
知らぬところで悪魔のような発想をしているイッテツに、リトは愛おしげに目を細めそっと上体を近づける。
そうして三度唇が重なった時、グラスの氷が溶けて落ちるカラン、という涼しげな音が微かに耳に届いた。瞬く間だが意識は現実へと引き戻され、気付けば蝉の声はお互いの吐息くらいなら掻き消してしまいそうなほどの音量で響き渡っている。
リトはそういえばこれが当初の目的だったなあと今更ながら思い出したが、一方イッテツは先ほど適当に口をついて出た口実などとっくに忘れてしまっており、すぐ近くに迫った分厚い唇に噛みついた。
§ § §
ぬち、ずちゅ、と卑猥な水音を立て、結合部からは早くも泡が立っていた。その泡がお互いの肌に潰されて弾ける感覚でさえ過敏に拾ってしまうイッテツは、己の開発されきった身体を恨む。
「あ゛ッ♡ は、ァッ゛──〜〜っっ゛♡♡ ッ……ぐ♡ 〜〜ッね、もう、奥ばっかり……っ♡」
「だぁってテツがあんまり良さそうだからさあ? ほら、ここ当てたまんま揺さぶるとさ……」
「ッぎゅ、〜〜〜ッっ゛!?♡♡ ぁ、だめだめだめっ♡ それ、ッ♡ 俺ほんと弱いからッ゛……ぉ゛お……っッ♡♡」
「んは、すげー……またイった」
弓なりに反る腹を慈しむように撫でながら、リトは一度腰の動きを止めてやる。イッテツは最初のうちは余韻を引き伸ばせば伸ばすほど余裕が無くなり、後になるにつれて休みを短くすると前後不覚のでろ甘状態になる。その様子が可愛くてたまらなくて、いつもついついいじめてしまうのだ。
皮膚も肉も薄い腹には直腸で必死に食いしばっているものの凹凸がうっすらと浮かび上がっており、リトが少し腰を引けばそれも同調して位置を変える。構造を想像すると何だかグロテスクにも思えるが、最初のうちは半分も挿れられなかったことを考えると感慨深いものがある。
リトがそんな風に思い出に浸っていることなんて知る由もないイッテツは、一向に再開されない抽送に早くも焦れ始めていた。
「……ちょっと……なに、恋人抱きながら考え事してんのさ」
「いや、よくもまぁこんな、すんなり入るようになったよなぁって……」
「はは、ゆるいって言ったら殺すよ」
「そういうんじゃねえって。ごめんごめん」
不満げなイッテツの機嫌を取るため、リトは張り付けた笑みを浮かべる薄い唇にキスを落とした。イッテツは「絆されないからな」と口では言いつつも満更でもなさそうな顔をしている。それが可愛くて、リトはついでに鼻先にもキスをしてからぬるい律動を再開した。
「ッん♡ ぁ゛ー……っ♡、……っゆっくりするの、きもち……♡」
「あー……えろ、……冷静に考えて、ケツだけでイけんのってエロすぎると思うんだけど」
「っ、……それ、開発した張本人が言う……?♡ ……でもさぁ、」
ふいにイッテツの手がリトの頬に伸ばされて流れる汗を拭うように指が滑る。それに気を取られた隙に内壁がぎゅうっ♡ と締め付けられ、リトは短い呻き声を上げた。
「──そんなえっろい僕に腰振って気持ちよくなっちゃってるきみって、もっとエロいよねぇ……?♡」
「っ……こんにゃろぉ……」
挑発的に舌なめずりをするイッテツに、リトの何かがプツンと切れてしまった。リトは埋まったままのそれを一度ずろぉ……っ♡ と引き抜くと、薄いクッションの上にイッテツの身体を半回転させて乗せる。突如視界が回ったイッテツが状況を把握する前に、リトは己の張り詰めきった怒張を物欲しげにヒクつく肉壺へと再度埋め直した。
「──〜〜〜んぉ゛……っッ゛!?♡♡ ほ、っ♡゛、……〜〜っ?♡ へ、なに……?♡ 」
「……じゃあお望み通り、気持ちよくならせてもらうからな。……飛ぶなよ、」
「ぇ、……あ、ごめんなさ、ちょっと待っ──ッぁ゛ぐ……ッッ゛!!♡♡」
途切れ途切れの言い訳を遮り、入り口のギリギリまで引き抜いてから最奥までを一気に貫く。一番敏感な最奥を責め立てられているのに腹側を床に遮られているせいで逃げ場がなく、背中側はリトの巨体に覆い被されているせいで身動きを取ることもできない。
どうにか快感を逃がそうと膝から下をバタつかせるイッテツを気にも止めず、リトはまた入り口まで腰を引き、緩みかけた結腸めがけて思い切り穿った。
「──〜〜〜お゛っッ♡♡♡」
「ッ……はは、結腸入っちまったなあ? 今からここたっぷり使ってやるから、覚悟しとけよ、テツ」
「ぉ゛っ……むり゛♡ ひんりゃう゛……っ♡♡」
「死なすわけねえから、安心しろよ……ッと、」
「っひぐ……ッ♡ ンぅう゛〜〜……ッッ゛♡♡」
リトは軽く腰を浮かせてはS状結腸の狭い壁から一旦先端だけを引き抜き、そしてまたぐぽんっ♡ と突き入れる。ただでさえ圧迫感でいっぱいいっぱいな中を反り立つカリでいじめ抜かれて、イッテツは天井から降りて来られなくなってしまった。
「あーー、きもち……重くねえ? 大丈夫?」
「ッんぐ♡ ら゛ぃじょ、ぉ゛っ、ッっ゛……♡♡」
「あ、そう……かぁわいいなあ、お前」
口頭で返事をすることもできず首をこくこくと振るイッテツの頭を、リトはくしゃっと撫でてやる。
本当は上からのしかかられている重みも熱もお互いの肌が張り付く感触だって不快なはずなのに、快楽でだめになった身体ではそれがどうにも愛おしく思えて仕方なかった。腰周りをぐうっと押し潰されているせいで、とっくにメスイキを覚えてしまった陰茎は硬度を保ったまま、クッションにずりずりと擦り付けられて快感を拾うことしかできない。
その上で汗ばんだ大きなてのひらで頭なんて撫でられて更に「かわいい」だなんて囁かれてしまったら、もう正気なんて保っていられなかった。
「んぃ゛ッ……ぐぅ♡♡ あ゛ッ♡ んン゛ぅ゛……ッ゛♡ ぅ゛──〜〜っ♡♡ ……ッまた゛いぐ♡ イく、イっぐ……っあぁぁ゛〜〜〜……ッッ♡♡」
「すげ……イきっぱなしじゃん。──ッは、そろそろ……っ俺も……、」
早くも意識を手放しかけているイッテツと同じく、リトもそろそろ限界が近かった。ラストスパートと言わんばかりに、最奥だけを責めるのではなく竿全体を扱くような動きに変える。
結合部からはばちゅ、ばちゅっ♡ と肉のぶつかり合う水っぽい音がして、リトはまるで獣じみたセックスをしていることに羞恥を覚えた。しかしそれも理性を上回るほど強い射精欲によって掻き消されてしまい、気持ちが逸るのに合わせ、律動も自然とその速度を上げていった。
そしてそれは当然、イッテツからしても強い刺激になるわけで。
「ぁッ゛♡ あ゛ぁ〜〜〜ッ♡♡ 〜ッづよ、♡ はげしすぎ、だってッ゛……!♡♡」
「っフ……ごめんなぁテツ、……は、っもうちょい、だから……ッ、……いい子にしてて」
「〜〜〜っっ♡♡ み、み♡ ずるい……ッ♡♡」
耳の真後ろからウィスパーボイスで囁かれて、イッテツは内壁をきゅうんと締め付けてしまう。そのせいで余計に凶悪な形の隅々までを感じ取ってしまい、結果的に自分の首を絞めることになった。
こんな乱暴な動きであってもイッテツの弱点を突いてやることだけは忘れずに、入り口から最奥まで全ての性感帯を余すところなく抉りながらピストンを続ける。それはリトの優しさでもあり、残酷さでもあった。
リトはぞくっ、と腰が重たくなるのを感じ、もうずっと歪な痙攣を続けているイッテツを後ろから抱き締める。
「ッぁ゛〜〜……っ、は、イく……っ、……テツ、テツ……♡」
「んぐ、……ッりとく゛♡ っ、はァ゛♡♡ リトくんの……っ♡ ……あ、あァ゛ぁ……っ♡♡ ……〜〜っで、てるっ゛……♡♡ 」
例えゴム越しであったとしても、力強くどくどくと脈打つ感覚で理解させられる。イッテツはきつく抱き締められてまともに四肢も動かせないまま、支配される多幸感だけで深い絶頂に押し上げられた。
対してリトは、恍惚に浸り甘ったるい嬌声を上げている恋人をこの手の内に支配しようと腰を押し付けるのがやめられない。これは雄として種を植えるための本能のようなもので、最後の一滴まで奥に塗り込んでやるまでは離してやれそうになかった。
やがて長い射精が終わって余韻のような血管のビクつきも治まった頃。ようやくリトはその上体を起こして、未だ伸縮を繰り返すぬかるみから、ほとんど硬度の変わらないそれをずるりと引き抜いた。
「ッはぁ……っ、……ごめん、ちょっとやりすぎた……」
「んン゛っ……♡♡ ……っそ、れは別にいいけど、さぁ……っ♡ 射精、なっがすぎでしょ……♡」
「……や、それは煽るようなこと言ったテツが悪くね?」
「……あー……一理あるね」
──それってつまり、僕が煽ったせいで余計興奮しちゃって歯止めが効かなくなったって言ってるようなもんなんだけど、分かってんのかな。
ゴムを着け直すリトをぼんやり眺めつつ、イッテツは散々啼かされたせいで痛む喉をさすった。
いつも思うが、あんなにも明るい太陽みたいな彼が、昨日なんかスイカの種を飛ばして子供みたいにはしゃいでいた彼が、さほど歳の変わらない男を押し倒してまるきり大人の男の顔をしていることの破壊力について、きちんと理解しているのだろうか。最近覚えた『メロい』という単語は、彼のためにあるような気がしてならない。
そして当のリトは、喉を気にするイッテツを見て「汗やべえしそろそろ水分取らないとまずいよな」なんて冷静なことを考えていた。
「テツ、起きれそうか? なんか飲んどいた方がいいと思うんだけど」
「えー……リトくんが飲ませてよ」
「はぁ? なんでわざわざそんな──」
「口移しで」
「………………しょうがねえな」
途端に乗り気になるリトに、イッテツは笑いを堪えきれなかった。
男の子だもんな。好きな子に口移しで水飲ませる妄想くらいしたことあるよな。わかるよ、俺も男の子だから。
リトは冷蔵庫からまた麦茶のポットを取り出して、今度は氷を入れずにグラスへと注ぐ。いつの間にかグラスに残っていた氷は全て溶けきっていたらしく、底に溜まった水のせいで若干麦茶が薄まってしまっている。
リトはイッテツの上半身を少しだけ起こすと、まずは自分で一口飲んだ。あくまで目的は水分補給なんだと自分に暗示をかけるために。
よく冷えたそれが喉を通り過ぎた後、今度はそれより少ない量を口に含み、イッテツの顎を掬ってぴったりと隙間なく唇を合わせる。
「ン、ふ…… っ、♡」
「──ッふ、…………、」
少しぬるくなった麦茶を息継ぎをするみたいに吐息ごと貪れば、ごきゅっと良い音を鳴らして喉仏が上下する。飲み込みきれなかった雫が唇の端から垂れて、首筋へと伝う感触ですら震えるほど気持ちよくて。イッテツは半分のぼせた頭で、もったいないなぁ、と思った。
リトはイッテツの狭い口内に舌を差し込むと移してやった分をちゃんと飲み干したことを確認して唇を離す。こんなんで足りるかよ、という心の中でついた悪態は、果たして自分とイッテツどちらに向けてのものなんだろうか。
唇を離してしまってから、意識の輪郭すらぼやけてしまいそうなほど暑苦しいというのに、離れていく体温が何故だか惜しくてたまらなくて。考えることは同じなようで、お互いにじっと見つめ合った末に何も言わず再度唇を重ね合わせる。
「──ッ、んン゛……、フ……っ」
「……ふ、ッ♡ ン、んむ……♡」
つい今しがた感じた冷たさはもうどこにも無く、人肌と同じ温度の粘膜同士が卑猥な水音を立ててもつれ合う。愛情表現なんて言葉じゃまるで生ぬるくて、それはもはや人工呼吸のような必死ささえ内包していた。
リトは口付けを深めたまま手探りでイッテツの脚を掴み、反応をみながらぐいと押して抱え込む。汗が冷えてしっとりしたそれを左右に割り、ちょうどその真ん中へ自身を当てがうと、赦しでも乞うようにずりずりと擦り付けた。
イッテツはそれを拒絶するどころか、うっそりと微笑んで掴まれたままの脚をリトの腰へと巻きつけてやった。足の裏で尾てい骨のあたりをつついてやり、びっしりと汗をかいたうなじに手を這わす。
──早く来なよ、とでも言うかのように。
「……──ぁ゛ッ♡ ふゥう゛……ッ♡♡」
「ん、はッ……せま、」
もうすでにぐずぐずになったそこはもはや何の抵抗もなくすんなりと入るが、とっくに昂りきった神経を無遠慮に甚振られたイッテツは、早くも絶頂に達してしまった。
行き止まりまでたどり着いただけできゅうきゅうと健気に締め付けてくるそこを愛おしげに見下ろし、リトは早々に抽送を始める。
「んぁ♡ っぁ、あ゛……っ♡ 〜〜っも、イってる♡ のにぃ゛……っ♡♡」
「は、……うん、イったまんま奥ぐりぐりされんのきもちいな? 降りて来れなくなっちゃうもんなぁ、」
「ぁ、はァ゛……っ♡ ッり、リトくんの♡ 全部ほしいっ♡ ぜんぶ挿れて……っ♡♡」
「、あ゛ーー……もう、知らねえからな」
お互いの指を絡めながら愛らしくねだるイッテツに、リトは本能のままにありったけの力で腰をぶつけてしまいたいのを必死で堪え、閉じきっていない奥の壁をごちゅごちゅと穿つ。
慣れというのは恐ろしく、ただでさえ凶悪なサイズに赤子の拳ほどはあろうかというほどの亀頭がたった2、3回のノックでいとも容易く入り込んでしまった。ぐぽっ♡ と重たい音と同時に細い首を反らしながら、イッテツは何度目か分からない絶頂を叩き込まれる。
「──ッあぁ゛っ♡♡♡ ぁぐ、……ッっ゛♡ァ゛っ……♡ 〜〜〜ッかひゅ、♡♡」
指の根本までがっちり絡んだ手にぎゅっと力が籠り、快楽の波が押し寄せるのに合わせて緊張と弛緩が繰り返される。その動きのあまりの生々しさに、リトは思わず唇を噛んだ。
「っあ゛ぁ〜〜……っ♡♡ ぁ、ふ……♡ んは、……だめ、だぁ♡ 余韻、ぜんぜん引かない……♡♡」
「ッ、はは……顔、すっげえとろとろ……かわいいなぁ。好きだよ、テツ」
「〜〜〜っ♡♡♡ ──そ、んなこと、言われたらっ……余計、止まんなくなっちゃうだろ……っ♡♡」
空いた方の手で頬を撫でられ、一瞬見開かれた瞳がすぐさま桃色に潤む。リトに触れられたところが熱くて熱くてたまらなくて、その熱がじわじわと伝わってくる感覚にさえ身震いするほど感じてしまう。
ああ、彼と同じ熱が自分の中にもあることが、こんなにも嬉しい。
「、俺も……すき、好きだよ、リトくん♡ 大好き……♡♡ ……ね、ちゅーしよ」
「熱中症?」
「ふふ、ばか」
他愛ない会話につい溢れた笑みが、吐息とともに吸い込まれてゆく。濡れた唇がちゅ、ちゅっ♡ と可愛らしい音を立てて重ねられ、それだけで途方もないほどの多幸感で満たされてしまう。
リトが薄く瞼を開くと、同じく細められたぶどう色と目が合った。瞬きをすれば互いの睫毛が微かに触れ、その感触がくすぐったいのかイッテツは僅かに肩を震わせる。そんな仕草の全てが愛おしくて仕方なくて、差し出された舌に噛み付かずにはいられなかった。
やがてなるべくしてキスが深くなり、腰の動きも緩やかに再開される。
「……ぁ、ん……っ♡ ン、ふ♡ ふーー〜……っ♡♡」
「んン、……ふ、……ぁー、ごめん、ちょっと……止めらんねえかも」
「っぷは、……いいよ──リトくんの、好きにして♡」
乱れた黒髪から覗く瞳に誘われるまま、リトはイッテツの脚を抱え直す。
その様子はイッテツから見ても絶景で、自分の血色の悪い白い脚とリトの健康的な肌色の差異も、たくましく鍛え上げられた肉体に拘束されている背徳感も、こちらを見下ろして揺れる水色の瞳も、全てが悶えるような興奮材料でしかなかった。
「んぁ……っ♡ は、きもち……♡♡ ……んっ♡ ふァ゛、あ゛っ……♡」
「ふ、……ちょっと激しくしてい?」
「ッ……い、いいよ♡ ──ッぁ゛、♡ んぁあ゛……っ!?♡♡」
リトはしばらくぬるいピストンで甘やかした後、最奥の壁を超えてぐちぐちとこね始めた。
たっぷり時間をかけて快楽を蓄積されたそこをいきなり責め立てられ、イッテツの頭はちかちかとスパークを起こした。それなのに、あまりに突然すぎて身体の方が達しきれず、許容量オーバーの快感を一撃で食らった頭だけ危険信号を出している。
「ッ?♡ へ……っ♡ ? ……あ゛♡、ぁ……っ♡ や、やば、これっ♡ やばいやつ……ッ゛♡♡」
「……な。やばいうねり方してるもん」
「ゃ゛♡ こぇ゛やばいんだって、♡ ぁ、♡ まってだめ、」
そうこうしている間も変わらず結腸口は責められ続け、ずくんっ♡ と鼓動の音が耳元で鳴り始める。もうすでに快楽が限界に達しているのに、更にその上の層に押し上げられるような──そんな錯覚。
そのうち身体が言うことを聞かなくなって、目の前に迫るぞっとするような質量の波に恐怖さえ覚えたイッテツは、たまらずリトの身体にしがみついた。
「あぅ゛♡ ぁ、──〜〜っ゛!♡♡ ぁ゛♡、クる、っ♡ だめなイきかたする゛……ッッ♡♡」
「は……いーよ、しちゃえ」
優しくも残酷な甘い声で囁かれてしまえば、腹の奥から広がる痺れを抑える術などなかった。
「ヒっ♡ ぁ、あァ゛……ぁあ゛あ……っ♡ 〜〜〜ぃ゛っ、イぐっ♡ い゛っっぐぅ……ッっ゛♡♡♡ あ゛〜〜〜〜ッッ゛……♡♡♡」
がくんっ! とイッテツの身体が大きく跳ね、歪な痙攣を繰り返しながら全身に力が入る。
処理しきれなかった分が一気に押し寄せるような特大オーガズムに、イッテツはあっという間にだめにされてしまった。頭の中は『きもちいい』と『しあわせ』だけがぐるぐると渦を巻いて、口角が勝手に引き攣る。受け止めきれない快楽をどうにか逃がそうと腰が勝手にくねり、その動きによって更にいいところを掠めてしまうので世話がない。
それと同調してぎゅうぅっ♡ と締まる腸壁に、リトは歯を食いしばって何とかギリギリ持ち堪えた。
「ッは……締めすぎ、だって」
「むり゛♡ 〜〜っこ、なの、たえらんな──〜〜ッまたイぐ……っ♡♡♡」
ぶしゅっ♡ と音のした方を見てみれば、自身の上限値を超えたイッテツはどうやら潮を吹いたようだった。
──そういやこいつ今日ちゃんと射精してねえな。それをどこか他人事に見つめながらリトは、どうやら自分にも限界が迫っていることを察する。まるでそれ自体が意思を持っているかのように精を搾り取ろうとうねる内壁が、リトの冷静な思考を奪っていく。
「ぁ゛ーー……っやべえ、もう出る……ッ」
「っあ゛は……っ♡ イ゛、っ♡ 〜〜イっちゃえよっ♡♡ 僕のなか、ッで♡、きもちよくなろうよ♡ ね♡♡」
「、おっまえ、なぁ……!」
リトの顔を見るなりイッテツは目の色を変え、未だ余韻の残る脚を無理矢理引きずってリトの腰へ絡めた。なんちゃらホールド、という馬鹿みたいな呼び方があると本人から聞いたことがあるが、生憎元々ネットに疎いリトは忘れてしまっていた。
ゴムは着けてあるんだし、この拘束に意味はないことは承知の上で、イッテツはリトを離したくなかった。それは本能によるものか、それとも本人の倒錯した性癖によるものなのかは分からない。
そのいじらしい──とも言えなくもない言動ですらのぼせた頭は愛おしく感じてしまい、射精に向けて最奥へとがつがつ腰を振りたくった。
「ッふ──、っ……出す、からな……テツ、受け止めろよっ……ッく、う゛……!」
「うん♡ うん……っ♡ 〜〜っぁ゛♡♡ っおく、きたぁッ……♡♡ あ、へぁあ゛……っ♡♡♡」
3回目だというのに全く勢いの衰えない射精は、ゴムを隔てていてもその衝撃は腸壁へとしっかり叩き込まれていた。下半身を丸ごと持っていかれるんじゃないかというほどの強い快感に襲われ、リトは獣のように低く唸った。
そうしてリトが身体を強張らせるのに対し、イッテツは脱力したようにだらしない笑みを浮かべ、大好きな人に組み伏せられて一番奥へ吐精される、幸福たっぷりの絶頂を味わっていた。いつも十分すぎるくらいに満たされているのに、こうしてゴム越しに吐精される瞬間は過剰なくらいに脳内快楽物質が分泌される──……気がする。
お互い1ミリも離れようとしないまま、むしろ少しでも互いの熱を食らってやろうと抱き合いながら、どうにか荒い息を落ち着ける。先に平素を取り戻したのは、リトの方だった。
「っはぁ……──ッ、は、……テツ、大丈夫かぁ……?」
「ぁ、ま、まって……っ♡ 〜〜っいま、抜かないでッ……♡♡」
「んなこと言われても、……ッそんな締め付けられたら、また勃ってきちゃうんだけど……?」
イきっぱなしになっているらしく、イッテツの中はひっきりなしに痙攣して、まだまだ足りないと言わんばかりにリトのものを食いしばっている。──足りない。それはリトの方も、全くもって同じ意見だった。
しばらく経ってようやくビクつきが収まってきたので、ゴムがずれないよう慎重に腰を引き、離れないで♡ と亀頭を甘噛みしてくるふちを超え完全に引き抜いてしまう。
「ッんぐっ……♡♡ ぁ゛ーー……っ♡」
「ははっ、抜いただけだって……」
その感覚にすら軽く絶頂するイッテツを宥めるように撫で、汗で張り付いた前髪を払ってやる。瞳は上の方を見つめたままゆらゆらと揺れていて、あんまり正気じゃなさそうだ。
リトはゴムの口を縛って捨てると、箱の中が空っぽなことに気がついた。この野郎、知ってて黙ってやがったな?
「……なあ、どうすんの? ゴムもう無いんだけど」
「どう、って……きみ、たったこれだけで満足するつもり……?♡」
よれよれの身体を何とか起こし、イッテツはリトの首に腕を回す。未だ余韻を引きずっている身体は時折小さくぴくりと跳ね、目の前に甘く熟れた極上の獲物がいることを主張してくる。
リトはその玉のような汗が浮く不健康な身体から目が離せなくなり、無意識のうちに唾を飲み込んだ。誘われるまま両脇に手をつき、再び覆い被さるような形になる。
頭がぐらりと煮え立つのは、きっと暑さのせいだけじゃない。
「……良いのかよ。……じゃあ、────あ、」
「あっ」
ぱたたっ、と白い肌に赤が落ちる。リトの鼻から滴り落ちたものだった。
興奮によるものというよりは、おそらくいい加減涼しいところへ避難しろと体が信号を出しているのだろう。『お前ら馬鹿じゃないのか?』とでも言いたげな鮮烈な赤色を見て、2人は妙に冷静になってしまった。
「……あー……アジト行くか」
「…………賛成」
§ § §
──場所変わって、Oriensのアジト。
「あ゛ーーー、涼し〜〜……エアコンって最高。やっぱ文明の利器って神だわ。崇め奉ろっかな、普通に」
「アイスうめえ〜〜〜」
「お前らほんま何しとんねん……」
PCに向かいながら、呆れたようにマナが言う。今日は報告書及び始末書作成のためアジトに来ており、作業に没頭していたところ今にも死にそうな同僚2人がインターホンから入れてくれと懇願してきたので、慌てて鍵を開けてくれたのだ。
もちろん詳細は省いて説明したが、エアコンも壊れた部屋ですることなど本来あろうはずもないので、もしかすると勘付かれているかもしれない。
出された麦茶はすでに2つとも空になっており、溶け残った氷がグラスに四角い曇りを作っている。ソファにもたれかかりながら片や電子煙草を吸い、片や2本目のアイスを頬張り、もう好き勝手といった感じだ。
マナはこいつらホンマにしばいたろかな、と拳を握りかけて作成途中の資料のことを思い出し、自分の作業スペースに戻ることにした。
「いくらでも涼んでってええけど、アイスのストックだけは補充しとけよ」
「はーい」
「あとテツはあんま吸いすぎんなよ」
「……はい」
しっかりと釘を刺されて縮こまるイッテツに、リトはスマホの画面を見ながら話しかける。
「……あ、そういや修理業者の人、夕方には来れそうだってさ」
「あぁマジ? 良かった〜、最悪アジトにPC持ち込んで作業しようかと思ってたわ」
な、と短く同意しつつ、リトはどうにか思考を散らそうと画面の文字に注力する。
──2回ぽっちで足りるわけがないのだ。健全な、特に健康な自信のある成人男性の性欲が。
気を抜くとまたすぐに勃ってしまいそうになるのを必死に紛らわそうと、アイスの棒を噛み締める。そんなリトの様子をじとりと見つめ、イッテツはそっと耳打ちしてやった。
「……──ね、……帰ったら、続きやろっか♡」
「ッッ!!、────〜〜〜っあ゛ーもう! どうしてくれんだよこれェ!!」
マナには聞こえないよう最小限の声量で囁かれ、アイスの棒は無慈悲にも噛み砕かれる。本当にどうしてくれるんだ。一瞬にして元気になってしまった息子を前屈みになって隠しながら、リトは顔を真っ赤にしてお茶目な恋人を睨みつける。
イッテツは愉快そうにそれを眺めつつ、腹の奥から消えてくれない甘い疼きを煙とともに吐き出した。本当は立って歩くだけでもやっとで、実はここに来るまでも何度か天井を掠りかけている。
──待ちきれるかな、俺。
お互いが全く同じことを考えながら、ギラついた視線は絡み合ったままだ。
コメント
10件
これ最高過ぎますね( *˙ཫ˙*)و グッ! めっちゃ元気になったありがとうございます!!!!!!!!
おっふ…………… 最高…なんでこれが無料でレジ袋が有料なんだよ、おかしいだろありがとうございます(土下座)
良すぎてやばいです。これ無料なのおかしいって!