テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
160
そらま゚⋆˙⟡#DESIRE
1,878
核爆弾
186
228
『総統の電撃作戦、至高の伴侶を確保せよ!』バトルでの大勝利から数時間後。アジトでドンドル銃を手入れしていたライは、ふと動きを止めた。「……待てよ。そういえば、あのドンドル銃の奥から漂った、ハンダとブキオイル、そしてシトラスの香水が混ざったあの独特な匂い……」彼女の天才的な脳内ネットワークが、過去の記憶を急速に繋ぎ合わせる。数日前、広場で「シトラスの良い匂いがする」と自分が衝動的に抱きついた、あのネクラな宇宙人(S4のマスク)。あの時、彼の首元から嗅いだ匂いと、ドンドル銃の匂いが、完全に、ミリ単位の狂いもなく一致したのだ。「フッ……そういうことか、我が妻よ」ライは不敵に笑うと、黒い軍服のケープを翻し、一人でロビーへと向かった。ロビーに入ると、そこには案の定、ライのバトルデータをハッキングしようと、物陰でブツブツ言いながら端末を叩いているマスクの姿があった。ライは音もなくその背後に忍び寄り、気さくに、しかし有無を言わせぬ覇気で声をかけた。「おい、マスク。少々付き合え。そこのカフェで茶でもしばこう」「ひ、ひえええ!? ら、ライちゃん……っ!? ぼ、僕とお茶とか、意味不明だし……っ!?」突然の推しからの誘いに、マスクの心臓は爆発寸前だったが、断る理由などあるはずもなく、這うようにして近くのカフェのテラス席へと付いていった。カフェの席に着き、注文を済ませると、ライはドンドル銃をテーブルの上にコト、と置いた。「マスク。お前はブキの改造や自作に詳しいと聞いた。我が軍の家宝であるこのドンドル銃なのだが、少し気になる点があってな。この銃身のライフリング(腔線)のピッチ、および高圧インクを凝縮するシリンダーの『ガス抜け対策のシーリング(密閉)』には、一体どんな素材と工具を使うのが正解だと思う?」それは、このドンドル銃の構造を隅々まで設計し、自らの手で組み上げた「製作者」にしか絶対に分からない、極めて専門的で意地悪な質問だった。だが、目の前にいるのは大好きなライちゃんだ。マスクは「ライちゃんが僕にブキの相談をしてくれてるし!」という嬉しさと尊さのあまり、完全に脳のブレーキが外れていた。なんの警戒もせず、オタク特有の早口で完璧に答え始めた。「ひえっ? そんなの簡単だし。銃身のピッチはインクの直進性を最大にするために『1対12の右回旋』で削り出されてるし、シリンダーのシーリングには市販のゴムじゃなくて、耐酸性のフッ素ゴムを特殊な旋盤で極薄にカットして噛ませるのが唯一の正解だし! じゃないとスライドの衝撃に耐えられないし!」「……フッ、やはりな」完璧すぎる回答を聞き、ライは確信を持った。このネクラなイカこそが、自分の愛銃を作り、あの美しい軍服を仕立てた、最愛の「差出人(妻)」であると。「ごちそうそう(お粗末様)」ライは伝票を手に取ると、スマートにカードを提示して一瞬で会計を済ませた。その流れるような大人の所作に、マスクが「ひえ、スマートすぎて意味分かんないし……」と見惚れた、次の瞬間だった。「――我が軍の最高機密、ついに確保したぞ」「ひえっ?」驚くマスクの体が、ふわりと宙に浮いた。ライはその鍛え上げられた強靭な腕で、細身のマスクの体をガシッとお姫様抱っこで抱え上げたのだ。漆黒の軍服のケープが、二人の体を包むようにふわりと舞う。「あ……あ……あわわわわ! ら、ライちゃん!? お、お姫様だっこ……!? 近い、尊い、死んじゃうしぃぃぃ!!」マスクの顔面は一瞬で真っ赤になり、頭からプシューと蒸気を噴き出しながら大パニックに陥った。だが、戦闘狂の総統が、一度捕らえた獲物を逃すはずがない。「フハハハ! 観念せよ我が妻よ! 今日からお前は我が軍の『最高技術顧問』兼『私の伴侶』だ! アジトへ連行し、一生私の隣でブキのメンテナンスをさせてやるからなァ!」ライは暴れる(と言っても嬉しさと恥ずかしさで悶絶しているだけの一頭のイカ)マスクを軽々とお姫様抱っこしたまま、ハイカラシティの広場を堂々と歩き、アジトへと連行していった。◇アジトのリビングのドアが勢いよく開いた。「諸君! 連行してきたぞ! 我が最愛の妻だ!」軍服姿のライが、顔を真っ赤にして気絶しているマスクをお姫様抱っこして入ってきた。「「「えええええええええええ!!!??」」」リビングで待っていたユキ、アール、リンの絶叫がハモった。「ちょっとライ、なんであいつ(マスク)を抱っこして連れてきてんのよ!?」ユキ(オカン女装)が紅茶のカップを落としそうになりながら叫ぶ。「う嘘でしょ!? ライの隣の座が、そんなネクラな宇宙人に奪われるなんて嫌だーーー!!」アール(オレンジ髪女装)がおちゃらけ顔を完全に失くして、泣きそうな顔でライの服を引っ張る。「ライ……そのイカを今すぐ床に降ろして。じゃないと、私、あいつを今ここで永久にキル(解体)しちゃう……」リンの目が完全に据わり、ドライブワイパーカスタムからかつてないほどの漆黒の殺気が立ち上る。「フハハハ! 喧しいぞ諸君! 婚姻届の準備だ、書記長!」ハハハと快活に笑うライの腕の中で、マスクは白目を剥いたまま「……幸せすぎて……このまま……成仏するし……」と呟いていた。ライチームの本当の戦い(身内もめ)は、ここから始まるのだった。(終)
コメント
1件
うわっ、ついにバレたか!っていうかライ、匂いで気づくってさすが戦闘狂の観察眼……。でもその後のドンドル銃のライフリングとかシーリングの質問でマスクを追い詰める手法、めちゃくちゃスマートで笑った。そしてお姫様抱っこからの「我が妻よ」連行!ユキたちの絶叫も含めて、最高にカオスで面白かったです。身内もめ、楽しみにしてます!