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あの忘年会の夜から、瀬名は理人の部屋がすっかり気に入ったらしい。週末になると決まって転がり込んできては、朝まで抱き潰される日々が定着していた。
意外にも瀬名の作る料理は美味しく、それを口実に「泊まっていけ」と言っているのは、理人の小さな秘密だ。瀬名と一緒に過ごす時間は楽しく、驚くほど心が落ち着く。 最近、そんな風に思い始めている自分に、理人自身が一番驚きを隠せずにいた。
そんなこと、本人には口が裂けても言えない。
「……おい、いい加減に離れろ」
「嫌です」
ちゃぽん、とバスタブの中で湯が跳ねる。本来なら一人でゆったりと浸かるための浴槽だ。大の大人が二人で入るには、どうしたって窮屈すぎる。 だが、そんなことはお構いなしに、瀬名は理人を背後から包み込むようにして密着してきた。
「狭ぇんだよ」
「知ってます」
「お前なぁ……っ」
濡れた髪や肩に当たる唇がくすぐったくて身を捩るが、瀬名は気にせず理人のうなじに顔を埋めてくる。文句を言おうと振り返りかけた瞬間、熱い首筋にチクリと歯を立てられて、ビクンと身体が震えた。
「んっ……!」
「理人さんは僕のモノだって、マーキングしてるんですよ。……ほら、ここにも」
「ん、ぅっ……!」
ちゅう、と吸い付かれ、理人は情けない声が漏れそうになるのを唇を噛んで必死に堪える。瀬名は満足げに笑うと、今度は湯船の中で泳いでいた手に力を込め、理人の胸を這わせた。
「ここも……」
「あぁっ……!」
乳首を指先で弾かれ、理人の背中が弓なりに跳ね上がる。
「こんな風に弄られて喜んで……。やっぱり理人さん、敏感ですね。可愛い」
「やっ……あぁっ……! はぁ……っ」
胸を揉みしだかれ、突起を執拗に刺激されると、制御不能な熱い吐息がこぼれる。理人は悔しげに眉を寄せると、自分を抱きしめる瀬名の腕を掴んで引き剥がそうとした。
「……ばか瀬名、こんなとこでサカるんじゃねぇよ……」
「……ねぇ。前から気になってたんですが、僕のこと、そろそろ名前で呼んでくださいよ」
「な、名前……?」
予想外の要求に、理人は毒気を抜かれたように戸惑った。これまで「瀬名」と苗字で呼んでいたのを変えるというのは、今の理人にとっては高い壁だ。
「ね? 呼んでみてください」
「……調子に乗るなっ」
「いいじゃないですか。減るもんじゃないし。ねぇ、理人さん?」
「う、……っ」
瀬名は甘えた声を出しながら、さらに胸を撫で回してくる。突起をキュッと強く摘ままれ、その鋭い感触にゾクリと背筋が粟立った。
「あっ……! ばか……やめろ……っ」
「ねぇ。早く」
耳元に吹きかけられる熱い吐息が、頭を真っ白にさせていく。瀬名の低く甘い声が、肌に触れる湯の熱さよりも深く脳内を犯していくようだ。
「――っいち…………」
「聞こえないです」
「チッ……! ま、また今度、気が向いたら呼んでやるっ! それと、明日は萩原の結婚式に出るんだから、今日は『これ以上』するのは無しだからなっ!!!」
ばしゃん、と勢いよく水面を揺らして立ち上がったかと思うと、理人はそのまま大慌てで脱衣所へと逃げ出してしまった。
「……ぇえ〜。なんですか、今の……」
浴室の中から、瀬名の呆れたような、不満そうな声が響く。だが、すぐにそれは愉しげな忍び笑いへと変わった。
「ほんと、素直じゃないなぁ……」
(……全部、丸聞こえだっつーの!!)
理人は顔から火が出る思いで、濡れたままの身体をバスタオルで強引に拭い、逃げるように寝室へと飛び込んだ。