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どうやら泣き疲れて眠ってしまっていたようだ。外からは賑やかな声が聞こえてくる。馬車から覗いてみるとそこは桜町よりも大きな都市だった。
栞「ここって江戸?でも、才川なんて城聞いた事無い」
馬車が止まり御家人がこちらに向かって来た。
御家人「着いたぞ。ここは三都市の1つ江戸だがその近くにある城の1つである才川城だ」
栞「ここが才川城…」
(大きいなぁ、ここに人々を苦してきた殿様がいるのか…)
思い出すだけで腹が立ってくる。入口には近衛兵が2人立っており厳重に門を守っていた。
御家人「入れ」
門をくぐると立派な日本庭園に大きな池と赤く塗られた反橋が掛かってあった。
栞「綺麗な庭……」
屋敷の中に入り奥へ進んでいく。通り過ぎるのは大体が美しい女性であった。才川は美しい女性が好みなのか。
御家人「この者が妙な成りをしていた娘だ。」
私は御家人から旗本に受け渡された。旗本の連中は御家人とは違い皆冷酷な人達だった。
さっきまで見てきた襖とは一段と違う金で装飾された襖の前にやって来た。
(この奥に多くの民を苦しめた元凶が……)
旗本の連中の1人から告げられた。
旗本「座れ、分かっているとは思うが無礼な事をすれば最悪命は無いと思え」
栞「……はい 」
そんな事をすれば彼らは本気で私を殺すだろう。彼らの冷酷さに体が震え上がる。
旗本「ただいま連れて参りました。こちらが城中で噂になっていた娘でございます。」
?「こちらへ」
聞こえてきたのは男性の声だった。
?「表を上げよ」
言われた通り顔を上げるとそこには、1人の男性を取り囲む多くの女性達の姿があった。
?「お前達下がりなさい」
その一言で周りいた女性達は全員部屋の外へ出て行った。
旗本「このお方が15代目才川家の長男であらせられる才川義時様である。」
殿「余が才川義時じゃ。そこの娘、名は何という。申してみよ」
栞「栞と申します。」
殿「そちが噂の娘というのは本当か?」
栞「はい」
殿「気に入った。この娘を余の側室にしてやろう」
栞「?! ちょっと待って下さい!私は… 」
殿「良かったのー。栞とやら。これからは贅沢な暮らしが待っておるわ。存分に楽しめ」
そう言い残すと奥へ行ってしまった。
旗本「それでは部屋に案内する」
栞「ちょっと待って下さい。話が違います!側室だなんて聞いてません!」
旗本「義時様がそう仰られたんだ。それに従うしかなかろう。着いて来い 」
(冗談じゃない。こんな事になるなんて…)
旗本「ここがお前の部屋だ」
最初に目に付いたのは着物掛けに掛かっている菊の柄の着物だった。所々に金の刺繍が縫われており、光の加減でキラキラと輝いていた。
旗本「側室には一人一つ部屋と1人の護衛が付く。お前の部屋は『菊の間』だ。そこに掛かってある着物に着替えておけ。それとお前の護衛は俺だ。名は斎藤総悟だ。」
栞「分かりました。総悟さん私からも1ついいですか。」
総悟「なんだ」
栞「お前呼びはやめてください。私にはちゃんと名前があるので名前で呼んでください!」
総悟「…まあいい。何かあったら俺を呼べ。それじゃあな」
以外にも反論すると少し驚いてはいたが聞いてくれた。
着物に着替えて髪も整えた。
(どうにかしてここから出ないと)
戸を開け顔だけを出して覗いた。誰も居ない。
ー 今のうちに逃げようと外に出た瞬間 ー
総悟「何をしている。もしかして逃げようなどと考えているんじゃ無いだろうな」
全く気配がしないから驚いたがどうにか誤魔化す為に嘘をついた。
栞「お、御手洗に行こうと思いまして…ハハ……何処ですか」
総悟「御手洗?厠の事か?」
栞「そ、それです!」
総悟「こっちだ」
危なかった。一瞬疑われはしたものの、何とか逃れた。
これからどうなって行くのやら検討もつかない。