才川家の側室(強制的)になってから2日目の朝を迎えた。
栞「いただきます」
ここでは毎日決まった時間にご飯が出される。お風呂も毎日入れるがこちらも決まった時間にしか入れない。トイレやお風呂の様に部屋を出る場合には必ず護衛が付いていないといけない。
(この徹底ぶり絶対に逃げられない様にしているのか)
お陰で簡単に逃げる事が出来ずこの部屋で暇を持て余す限りだ。
他にも気になる事がある。他の側室達と全く会えないことだ。初日にすれ違ったくらいで未だ顔も合わせていない。接触を禁止されているのだろう。
栞「側室に自由は無いのか!」
総悟「あるわけないだろ」
扉の向こうから総悟さんの声が聞こえてきた。
(ひとりで呟いてたのバレてたの?! )
栞「じゃあせめて、文だけでも銀次さん達に書く事は出来ませんか?」
総悟「残念だがそれは出来ない。こちらの情報が他に渡る事は許されないんだ」
(絶対心配してるはず。早く帰らなきゃ。やっぱりここから脱出しよう!)
そう決心してからというもの城の規則に従いつつも部屋で静かに脱出の作戦を練って過ごしていた。
総悟さんは非常に勘が鋭く所々バレそうになったがその度に何とかやり過ごしている。
ここに来て10日が経った頃、急遽殿様に呼ばれた。総悟さんと大広間へ行くとそこにはふてぶてしく座っている殿様がいた。
殿「おぉ! 栞や。ちこうよれ、これからお前には余の側室としての仕事をしてもらう。よいな? 」
栞「…はい」
(聞いてないこんな事?!)
殿「総悟、説明を」
総悟「はい。この城で側室として働いている女は栞を含めて10人。ここでは側室に与えた部屋の名前とその順番で毎日義時様のお傍で仕事をしてもらう事になっている。そして栞がここへ来てから今日で10日が経った。今日はお前が仕事をする日だ 」
(つまり、当番制で殿様の近くに居ないといけないって事か…嫌だなぁ)
殿「栞は初めての仕事だろう。師匠は、余の側室の中で1番歴が長く頭も良い『帰蝶』を付けてやろう」
栞「帰…蝶…さん?はどちらに?」
殿「帰蝶をここへ」
帰蝶「失礼致します。ただいま参りました」
(うわぁ。綺麗な顔、猫目で肌も白く声まで鈴の様に可愛い。それに大人のオーラが凄い。これが才色兼備ってやつか… )
殿「この娘が新しく側室になった栞だ。帰蝶よ、暫くの間栞の師匠として側室の仕事を教えなさい」
帰蝶「承知しました」
殿「もう下がって良いぞ」
帰蝶「失礼します」
殿「それでは栞よ、側室としての成長期待しているぞ」
栞「はい」
それから部屋に戻り総悟さんと話していた。
帰蝶「失礼致します。帰蝶で御座います」
栞「帰蝶さん?!どうぞ入ってください!」
帰蝶「改めまして帰蝶と申します。どうぞよろしくお願い致します」
栞「栞です。よろしくお願いします!」
総悟「それでは帰蝶殿、ご教授の程よろしくお願いします」
帰蝶「はい」
総悟「それでは失礼します」
栞「それで側室の仕事ってどういう事をするのですか?」
帰蝶「……。」
栞「帰蝶さん?」
帰蝶「総悟様…今日も美しい〜///」
栞「え?美しい?」
(そうかな?)
帰蝶「栞様が大変羨ましゅう御座います。総悟様は側室全員が惚れているお方なのです!」
栞「ちなみに帰蝶さんは総悟さんのどこに惚れているんですか?」
帰蝶「全部です!あのキリッとしたお顔に鍛錬で鍛え抜かれたであろうお身体、そして紳士的で知的な性格それに~~~~~~~~」
(滝のように出てくる。聞かなきゃ良かった…… )
それから3時間ずっと総悟さんのいい所を聞かされ、側室の話はたったの3分程度で終了した。帰蝶さんは満足気に自室へ帰って行った。
栞「長かった〜。3時間も正座して聞いたせいで足が痺れて立てない…うぅぅ。」
総悟「入るぞ。何してんだ」
栞「総悟さんのせいで足が痺れました」
総悟「俺のせいにするな。
他の側室達との接触が許可された。それから明日から仕事の実践だ、気を抜くなよ。その足明日までに治しておけ」
(この人の何処が良いんだ!!)
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!