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三日月さくら🎼🍵👑🌞
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※実在の人物・配信者とは関係のない、二次創作上のフィクションです。
※やや重めの感情描写がありますが、自傷などの具体的な描写はありません。
※🐙🌟の激重感情です
※伏字なし
※初心者
※👻🔪のボイスだけまだ全部追えてないです
透 明 な 夜 に 、君 だ け が い る 。
星導side
俺は、眠れない夜が嫌いでした。
正確に言えば、眠れないことそのものが嫌いなのではない。眠れないまま時間だけが過ぎていくのを、誰にも気づかれずに見つめ続けることが嫌だった。
午前二時。
部屋の明かりはつけていない。モニターの青白い光だけが、机の上と、そこに置かれた水の入っていないグラスを照らしている。
配信を終えてから、もう三時間が経っていた。
配信中は笑えていた。いつも通り、軽口を叩いて、コメントを拾って、くだらないことで騒いで。終わった直後だって、マネージャーさんに「今日もよかったよ」と言われて、「でしょ?」なんて返した。
なのに、部屋に戻ってひとりになると、全部が嘘に見えた。
笑ったことも。
楽しかったことも。
「また次もよろしく」と言ったことも。
どれも、自分の口から出たものなのに、自分のものではないような気がした。
今日の配信のアーカイブを開いた。
自分の声が、部屋の中に流れ出す。
『いやそれはさぁ、違うって! 俺は悪くないもん!』
数時間前の自分が笑っている。明るくて、軽くて、少しだけ面倒くさくて。いつもなら、そんな自分を「まあ、悪くない」と思えた。
けれど今夜は、その声が遠かった。
画面の向こうにいる人たちは、あの星導ショウを見ている。
笑って、騒いで、時々変なことを言って、でも最後にはちゃんと「来てくれてありがとう」と言う星導ショウ。
なら、今ここにいる自分は誰なのだろう。
動画を止めた。
途端に、部屋が静かになる。
静かすぎて、耳鳴りがした。
「……俺、今日なんか変だったかな」
誰もいない部屋で呟く。
返事はない。
スマートフォンを手に取る。通知はたくさん来ていた。配信の感想、切り抜きの話、次の予定の確認。どれも嬉しいはずのものだった。
ひとつひとつ、ちゃんと嬉しい。
嬉しいのに、胸の奥まで届かない。
指先で画面をスクロールしながら、星導はふと思った。
もし明日、配信をしなかったら。
もし一週間、何も言わなかったら。
もし自分が、今より少しだけ静かになったら。
誰か気づくだろうか。
それとも、代わりはいくらでもいるから、何も変わらないだろうか。
そんな考えが浮かぶたび、「また始まった」と思う。
自分を試すような考え。
誰かに必要とされているか確かめたくなる考え。
けれど、本当に確かめられてしまうのが怖くて、結局何も聞けない。
画面を閉じようとしたとき、通知がひとつ届いた。
小柳ロウ。
『起きてる?』
短いメッセージだった。
星導は、すぐには返さなかった。
返せば、小柳くんはたぶん「どうした」と聞く。
どうしたと聞かれたら、星導は「別に」と答える。
別に、と答えたら、小柳くんはたぶん、それ以上踏み込まないふりをしながら、ずっと気にする。
その優しさが、今は怖かった。
自分がどれだけ面倒な人間でも、見捨てないでいてくれるような優しさ。
そんなものを向けられたら、余計に離れられなくなる。
星導はスマートフォンを伏せた。
しかし数分もしないうちに、また画面を見てしまう。
通知は増えていなかった。
安心したような、寂しいような、よくわからない感情が胸の中で混ざる。
短く文字を打った。
『起きてるよ』
送信。
すぐに既読がついた。
『なんかあった?』
予想通りだった。
しばらく考えてから、
『なんもない』
と返した。
『そっか』
小柳くんからの返事は、それだけだった。
少しだけ肩の力を抜いた。
これで終わる。そう思った。
けれど、続けてもう一通届く。
『でも、寝るまで通話つなぐ?』
画面を見たまま固まった。
優しくされると困る。
放っておかれると苦しい。
自分でもどうしてほしいのか分からないくせに、相手の反応だけを求めてしまう。
そんな自分が、どうしようもなく嫌だった。
『別にいいけど』
素っ気なく返す。
『じゃあかける』
数秒後、着信が鳴った。
不安になって一度、拒否ボタンに指を伸ばした。
そのまま切ってしまえばいい。今日はひとりでいたいと言えばいい。
けれど、指は動かなかった。
着信音が三回鳴ったところで、通話を取る。
「……はい」
『おー。生きてる?』
「第一声それ?」
『いや、起きてる? のほうがよかった?』
「もう遅いでしょ」
いつもの調子で返す。
小柳くんが小さく笑った。
『声、変じゃね』
「変じゃないけど」
『そっか』
「そっか、じゃないんだよなぁ」
『じゃあ何て言えばいい?』
「もっとこう……心配してる感じを出して?」
『心配してるけど』
即答だった。
ちょっとおどろいて黙った。
小柳くんの声は、いつも通り落ち着いていた。無理に明るくしようともしないし、こちらの沈黙を急かすこともしない。
それが、俺には苦しかった。
沈黙を許されると、自分の中にあるものが全部浮かび上がってくる。
「……ねえ、小柳くん」
『ん?』
「俺さ」
言いかけて、やめる。
何を言うつもりだったのか、自分でも分からなかった。
寂しい。
怖い。
誰かに必要だと言ってほしい。
でも、そんなことを言ったら嫌われるかもしれない。
全部、喉の奥に引っかかって、言葉にならない。
「……いや、何でもない」
『何でもないって言う時、だいたい何かあるよな』
「小柳くんってさぁ、そういうとこあるよね」
『どういうとこ?』
「余計なこと言うとこ」
『悪かったな』
「ほんとに」
笑おうとした。
けれど、声がうまく震えた。
小柳くんは気づいたのか、気づかないふりをしたのか、何も言わなかった。
通話の向こうで、何かを置く音がする。
たぶん水でも飲んだのだろう。
『今日、配信見てた』
「へえ。珍しいじゃん」
『珍しくないだろ』
「いや、忙しいかなと思って」
『見てたよ。面白かった』
「そりゃどうも」
『でも』
小柳くんの声が少し低くなる。
『終わった後、絶対落ちるだろうなって思った』
呼吸が止まった。
「……何それ」
『何って?』
「俺のこと、分かったみたいに言うじゃん」
『分かってるわけじゃない。ただ、なんとなく』
「なんとなくで決めつけないでよ」
思ったより強い声が出た。
小柳くんが黙る。
しまった、と思った。
けれど、謝る言葉は出てこなかった。
俺の中で、何かが一度崩れると、止められなくなる。
「俺がいつも落ちてるみたいに言わないで。俺だって普通に楽しい時あるし。ちゃんと笑ってるし。小柳くんが思ってるほど、俺は弱くないから」
『……うん』
「なんかさ、俺のこと、壊れやすいものみたいに扱うのやめてよ」
『うん』
「そうやって何でも受け入れるのも、やめて」
『……うん』
「小柳くんはさ、俺がいなくても平気なくせに」
言ってしまった。
言葉にした瞬間、自分が一番言ってはいけないことを言った気がした。
『……それは、どういう意味?』
小柳くんの声から、初めて余裕が消えた。
星導はスマートフォンを握りしめる。
「そのままの意味」
『星導』
「小柳くんには他にもいるじゃん。話す人も、遊ぶ人も、必要としてくれる人も。俺ひとりがいなくなったって、別に困らないでしょ」
『困る』
今度は、小柳くんがすぐに答えた。
胸が痛んだ。
『困るよ』
「嘘」
『嘘じゃない』
「じゃあ、どれくらい?」
『どれくらいって……』
「俺がどれくらい必要?」
聞いてしまってから、目を伏せた。
最低だと思った。
小柳くんに答えられない質問を投げて、困らせて、試している。
けれど、もう止められなかった。
「俺が一日連絡しなかったら気づく? 三日なら? 一週間なら? 俺が配信で笑わなくなっても、何も言わずにいられる?」
『星導、落ち着け』
「落ち着いてるよ」
『落ち着いてる人はそんなこと聞かない』
「じゃあ何? 俺、どうすればいいの? 何も聞かずに、何も期待せずに、勝手にひとりで大丈夫になればいい?」
返事がない。
その数秒が、永遠みたいに長かった。
小柳くんに呆れられた。
面倒だと思われた。
もう付き合いきれないと思われた。
そう考えた途端、息が苦しくなる。
「……ねえ」
声を落とした。
「今、切ろうとした?」
『してない』
「でも、切りたいとは思った?」
『思ってない』
「ほんとに?」
『ほんとに』
「俺がこんなこと言っても?」
『言っても』
「何回も同じこと言っても?」
『何回でも』
「そのうち嫌になるよ」
『嫌になったら言う』
「言わないでしょ。優しいから」
『俺、そんなに優しくない』
「優しいよ。優しすぎる。だから嫌い」
辛くなったから笑った。
けれど、目の奥が熱くなった。
「優しくされると、もっと欲しくなるから」
沈黙。
「もっと、もっとって思っちゃう。小柳くんが一回返事してくれたら、次は二回欲しくなる。名前呼んでくれたら、ずっと呼んでほしくなる。俺のことだけ見てって思う。俺のことを一番にしてって思う。でも、そんなの無理じゃん」
『……』
「無理なのに、勝手に期待して、勝手に苦しくなって、勝手に小柳くんを責める。俺、何してるんだろうね」
『星導』
「俺、重いよね」
『重いとかじゃない』
「重いよ」
『……』
「俺が小柳くんの立場なら、絶対嫌だもん。こんな面倒くさい奴。何しても足りないって顔して、勝手に不安になって、勝手に怒って。しかも、離れようとすると引き止めるくせに、近づかれると怖がる」
そこまで言って、息を吐いた。
「……本当に、何なんだろうね。俺」
小柳くんはしばらく黙っていた。
その沈黙が怖くて、痛くて、通話を切ろうとした。
その瞬間。
『星導』
名前を呼ばれた。
低くて、静かな声だった。
『俺は、お前が面倒だからここにいるわけじゃない』
「……」
『勝手に不安になってもいい。勝手に怒ってもいい。俺に全部ぶつけろとは言わないけど、少なくとも、ひとりで勝手に消えようとするな』
「消えないよ」
『その言い方、信用できない』
「ひど」
『ひどくていい』
小柳くんの声が、少しだけ震えていた。
『俺だって、お前がいなくなったら困る。お前が笑ってなくても気づく。連絡がなくなったら、たぶん何回も送る。うざいくらい送る』
「……ほんと?」
『ほんと』
「一週間でも?」
『一週間も待たねえよ』
「三日」
『一日』
「早」
『それくらいには、気づく』
目を閉じた。
胸の奥に溜まっていた何かが、少しずつ崩れていく。
安心したかっただけなのかもしれない。
必要だと言ってほしかっただけなのかもしれない。
でも、言われたら言われたで、今度はその言葉を失うのが怖くなる。
「……小柳くん」
『ん』
「俺、たぶん今、かなり嫌な奴だよ」
『知ってる』
「そこは否定してよ」
『でも、俺も似たようなもんだろ』
「小柳くんは違うよ」
『違わねえよ。俺だって、余裕ない時あるし。言わないだけで、勝手に考えて勝手に落ちることもある』
「嘘」
『嘘じゃない』
「だって、いつも平気そうじゃん」
『平気そうにしてるだけ』
その言葉が、ひどく胸に刺さった。
画面の暗いスマートフォンを見つめた。
平気そうにしているだけ。
それは自分も同じだった。
笑っているだけ。
ふざけているだけ。
大丈夫なふりをしているだけ。
だったら、自分だけが壊れかけていると思っていたのは、勘違いだったのかもしれない。
「……じゃあさ」
『ん?』
「俺が大丈夫じゃない時は、大丈夫じゃないって言ってもいい?」
『いいよ』
「何もできないけど」
『何もしなくていい』
「話せないかも」
『じゃあ黙ってればいい』
「返信できないかも」
『俺が送る』
「うるさかったら?」
『その時はうるさいって言え』
「言えるかな」
『言えなくてもいい』
また、胸が痛くなった。
優しくされるのが嫌いだ。
でも、今夜だけは、その優しさに縋りたかった。
「……小柳くん」
『ん』
「寝るまで、いて」
『いる』
「ほんとに?」
『ほんとに』
「寝落ちしても?」
『たぶん俺のほうが先に寝る』
「じゃあダメじゃん」
『起きてるように努力する』
「努力じゃなくて、絶対」
『無茶言うな』
小柳くんが笑う。
その声を聞いているうちに、まぶたが少しずつ重くなっていく。
けれど、眠りに落ちるのが怖かった。
目を閉じたら、またひとりになる気がした。
次に目を開けたとき、小柳くんがいなくなっている気がした。
「……小柳くん」
『いるよ』
呼ぶ前に返事が返ってきた。
驚いて、少しだけ笑った。
「まだ何も言ってないけど」
『言いそうだったから』
「何それ」
『分かるんだよ』
分かられてたまるか、と思う。
でも、本当は少しだけ嬉しかった。
「……ねえ、小柳くん」
『ん』
「俺がさ、明日になったら今日のこと全部忘れたふりしても」
『うん』
「普通に接してくれる?」
『もちろん』
「でも、忘れないで」
『忘れない』
「どっち?」
『普通に接するけど、忘れない』
「……そっか」
ゆっくりと目を閉じた。
通話の向こうから、小柳くんの呼吸が聞こえる。
一定で、静かで、確かにそこにある音。
それだけで、部屋の暗さが少し薄くなった。
「小柳くん」
『今度は何だよ』
「俺のこと、嫌いにならないで」
小柳くんはすぐには答えなかった。
心臓が、嫌な音を立てる。
やっぱり困らせた。
そんな約束はできない。
人の気持ちは変わる。
今は大丈夫でも、いつかは離れていく。
そんな現実的な答えを待っていた。
けれど、小柳くんは静かに言った。
『嫌いになる理由がない』
「いっぱいあるよ」
『ない』
「面倒だし」
『それは今さら』
「重いし」
『それも今さら』
「勝手に不安になるし」
『それも知ってる』
「すぐ疑うし」
『それはちょっと腹立つけど』
「ほら、嫌いになるじゃん」
『でも、嫌いにはならない』
ぎゅっと目を閉じた。
『星導』
「……ん」
『俺は、お前が大丈夫じゃない時にまで、大丈夫なふりしなくていいと思ってる』
「でも、嫌われる」
『嫌わない』
「見放される」
『見放さない』
「いつかいなくなる」
小柳くんは、ほんの少しだけ息を吸った。
『いつかのことは、誰にも分からない』
胸が冷えた。
『でも、少なくとも今はここにいる。明日も、俺がいる限りはいる。だから、まだ起きてもいないことまで怖がって、今ひとりになるな』
それは、永遠の約束ではなかった。
絶対に離れないとも、何があってもそばにいるとも言わなかった。
だからこそ、俺には少しだけ信じられた。
未来を保証する言葉ではなく、今この瞬間を手渡してくれる言葉だった。
「……分かった」
『ほんとか?』
「分かんないけど、分かったことにする」
『それでいい』
ぼんやりと天井を見た。
暗闇はまだ消えていない。胸の奥の重さも、完全になくなったわけではない。
明日の朝になれば、また不安になるかもしれない。
今日のことを後悔して、何でもないふりをするかもしれない。
小柳からのメッセージを何度も読み返して、言葉の裏を探すかもしれない。
それでも今だけは、ひとりではなかった。
「小柳くん」
『ん』
「寝るね」
『おやすみ』
「……ちゃんといる?」
『いる』
「起きたら?」
『いる』
「本当に?」
『しつこい』
「だって不安だから」
『じゃあ、起きたら連絡する』
「小柳くんから?」
『俺から』
「絶対?」
『絶対』
ようやく少しだけ笑った。
「……おやすみ、小柳くん」
『おやすみ、星導』
通話は切れなかった。
やがて、小柳くんの呼吸がゆっくりになる。
裏切って先に眠ったのだろう。
その音を聞きながら、暗い部屋でじっと目を閉じた。
眠りはすぐには来なかった。
けれど、もう時計の針を数える必要はなかった。
午前四時。
窓の外が、ほんの少しだけ白み始めている。
眠りに落ちる直前、かすかな声で呟いた。
「……俺も、ちゃんといるから」
聞こえているかは分からない。
それでも、言っておきたかった。
消えない。
勝手にいなくならない。
大丈夫じゃなくても、ここにいる。
その言葉を、まずは自分自身に聞かせるために。
朝になれば、きっとまた平気な顔をする。
いつも通りに笑う。
何もなかったみたいに、小柳くんにくだらないメッセージを送る。
けれど、昨日までとは少しだけ違う。
大丈夫なふりをしている自分を、知っている人がいる。
その事実だけが、暗闇の中に残った。
やがて、通話の向こうの呼吸に包まれるように眠った。
ひとりではない夜は、ほんの少しだけ、やさしかった。
END
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ご視聴 ありがとうございます
コメント
1件
うわぁ……なんかもう、読んでて胸がぎゅーってなった……🥀 星導くんの「大丈夫なふり」がすごくリアルで、夜の静けさの中で自分を疑う感じとか、ひとりきりの部屋の空気感とか、全部伝わってきたよ。小柳くんの「困る」って即答とか、「寝るまで通話つなぐ?」って優しさとか、ああいうのが一番グサッとくるんだよね……。 あと、最後の「俺も、ちゃんといるから」って自分に言い聞かせるみたいなセリフ、すごく好き。自分からもちゃんといるって言えるようになったの、この2人の関係性が少しずつ変わってきてる証拠だと思う。 重いけど温かい、そんな夜の話、ありがとうございます🌙