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朝の光が、プラントの天井から差し込む。
ベッドの並ぶ部屋のなか、あちこちから寝息が聞こえていた。
「エマ、起きて! 朝だよ!」
元気な子の声とともに、布団がガサッと揺れる。
エマがぱちっと目を開け、隣でまだ眠っているノーマンとレイに笑いかける。
「おはよ、ノーマン、レイ! 今日もテスト、がんばろーね!」
「……んー……あと5分……」
レイが布団に顔をうずめたままつぶやく。
そのすぐ横では、白いシャツを着た少年が、静かに立っていた。
「おはよう、エマ。……朝、ちゃんと起こせたね」
「うん! シンム兄ちゃんはもう起きてたの?」
「うん。早く起きちゃった」
優しい声で笑ったその少年――
それが、シンム兄ちゃん。みんなの優しいお兄ちゃん。
彼はいつも静かで、穏やかで、誰かのために動いている。
テストのことも、運動のことも、あまり話さないけど、
誰かが困っていたら、一番に気づいてくれる存在。
その日も、朝の準備は慌ただしく進んだ。
みんなが顔を洗って、白い制服を着て、ダイニングに集まる。
「みんな、ちゃんと並んで〜!」
エマの声が響く。シンムは後ろで静かに小さな子の手を引いている。
「ほら、ガラっと扉が開くよ。ママが来る」
カツン、カツン――
足音とともに現れたのは、ママ(イザベラ)。
「おはよう、みんな。今日も元気に頑張りましょうね」
子どもたちがいっせいに「はーい!」と答えたその後で、ママは笑顔を崩さずに告げる。
「エマ、ノーマン、レイ。今回もフルスコアだったわね。よく頑張ったわ」
拍手が起きる。小さい子たちが「すごーい!」と歓声を上げる。
その中にいるシンムは、何も言わない。
ただ、静かに笑っていた。
褒められることもなく、名を呼ばれることもなく――
でも、それでいいと、そういう顔だった。
「……シンム兄ちゃん、今回もすごかった?」
ふいに、小さな子が顔を上げて聞いた。
シンムは少し考えたふりをして、優しく首をかしげた。
「うーん……普通、かな。エマたちの方がすごいよ」
「そっか〜! シンム兄ちゃんもがんばって〜!」
笑顔で駆けていく弟分の背中を見ながら、
シンムはそっと、袖で口元を隠して笑った。
――そう、仮面のような、完璧な笑顔で。