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「ほう、貴公は剣も扱えるのか。ますます帝竜や冥竜の申しておった逆神を彷彿とさせる!! その腕前はいかほどか!! 我が値踏みしてくれよう!!」
六駆くん、黙って秘宝剣・ホグバリオンを地面に突き刺す。
何か考えのあっての事だろうと、幻竜ジェロードは警戒する。
だが、六駆はその場から動かず、秘宝剣にも触れようとしない。
確かに、彼には考えがあった。
「僕を見て、親父を彷彿としたのか……!?」
その事実はあまりにも重く、切なく、ジェロードの繰り出して来た攻撃の中で最も六駆を傷つけていた。
暇さえあればパチンコに行って、親からは愛想を尽かされ、嬉々としてトラックで自分の息子を崇高な使命(笑)のために轢き散らかした六駆の父。
自分にその面影を見つけられたのなら、いっそ死のうとすら思えるほどの屈辱だった。
「グルゥゥゥアァゥ! どうした、逆神! 怖気づいた訳でもあるまい? 貴公ほどの者が! あの逆神の名を継ぐ者が!!」
「うっ! ぐぅぅう!! なんて精神攻撃だ!!」
その逆神の名前をうっかり継いでいるために受ける永続ダメージ。
一生背負い続ける呪いの装備である。
そんなしょうもない事情でピンチに陥っている六駆の元へ、援軍がやって来た。
南雲のサーベイランスである。
『どうした、逆神くん! 苦しそうだな!? 毒でも喰らったか!?』
「はい。とんでもない毒を吐かれました。僕を見て、親父を思い出すんですって」
『うん。うん? そりゃあまあ、お父上と同じ血が流れてるんだから。ねぇ?』
「うわぁぁぁぁぁ! うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
南雲監察官、六駆に追撃をかける。
だが、彼は悪くない。
六駆も悪くない。
現世で饅頭の取り合いを四郎と繰り広げて、結果70過ぎのじいさんに押し負けた逆神大吾が悪い。
「ジェラートさん。いえ、ジェロードさん。ひとつお願いがあります」
「ふふっ。よもや、この期に及んで敵に何を願う?」
「僕があなたを倒したら、親父と僕は赤の他人って事にしてくれますか?」
「グルゥアアァ! すまぬが、意味が分からぬ!!」
古龍を困らせ始めた六駆おじさん。
幻竜ジェロードは死に場所を見つけてここまでやって来たのに、変な事を変なタイミングで言うのはヤメろ。
「もう一度言います。僕と親父を赤の他人って事にしてくれたら、本気でお相手します。何なら、お墓も作って差し上げます。墓標も付けます」
「ぐっははは! 面白い! 父を超えると申すか! 良かろう、その申し出、受けたぞ!」
六駆の表情に活力が戻って来た。
南雲はモニター越しに考えていた。
「この子、よくガチった古龍と世間話ができるなぁ」と。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「こちらも出し惜しみはせぬぞ! 『幻竜八神首』!!」
「おお! すごい! 首が9つになった! でも、8個は幻ですね」
「ふははっ! 我の名は幻竜! ただの幻と侮るなかれ!! 喰らえ、『九頭竜黒炎!!』」
「むっ! これはまた、すごいスキルですね!! 『天滑走』!!」
六駆は咄嗟に回避行動に出た。
相手のスキルを1度も受けずに避けるのは、彼の戦闘スタイルにしては珍しい。
その理由は、ジェロードの奥義にあった。
彼の九つに増えた竜の首。六駆の言うように本体以外は幻である。
だが、ジェロードは幻を実体化させる事ができる。
これこそ彼が幻竜と呼ばれる所以。
幻は時として幻のままで、ある時は真実を捻じ曲げる幻として、変幻自在に相手を翻弄する。
つまり、六駆はジェロードの出す幻を全て本物だと認識しながら戦わなければならない。
「よもや翼も持たずに宙を駆けるか!! だが、我が尾も自在に舞う! 『九尾乱撃』!!」
「あいたたたたっ!! 想定よりもずっと速い!! しかも結構硬い!!」
今回の攻撃は9ある尻尾のうち全てが実体化。
さすがの六駆もこれほどまでに巧みな幻を操られると、何発かは被弾してしまう。
「仕方がない! 剣を使うしか!!」
「来るか、逆神六駆!!」
六駆は秘宝剣・ホグバリオンを手に、再び宙を滑走する。
そこに襲い掛かるのは九つの鋼よりも硬い尾。
「煌気付与! 『薔薇薔薇乱切刃』!! ふぅぅぅぅぅぅん!!」
六駆の剣技の師匠は父の大吾。
大吾の基本戦闘スタイルは古龍たちが言っていたように、剣技とスキルを組み合わせて戦う、剛と柔の一体型。
その指導を受けていた六駆は、異世界転生周回者時代にも剣技を多用していた。
剣技の良いところは、煌気の消費が少なく、それでいて煌気を武器に付与する事で強大な破壊力を得られる点にある。
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では、なにゆえこれまで彼が頑なに剣を使わなかったのか。
思い出して頂きたい。
彼は探索員になってからここまでの戦いで、『光剣』を具現化する以外はほとんど剣を持ったことはない。
それも全て、親父のイメージが悪すぎるせいである。
幻竜ジェロードとの初戦で、彼は山嵐の得意スキルである『ガイアスコルピウス』を使用している。
山嵐も相当にイメージが悪いはずなのに、である。
六駆くんの親父嫌いは、結構深刻なものであった。
「グオオォォ!? こやつ、幻を斬りおった!?」
「煌気を纏った僕の剣は、実物も斬り、幻も斬ります! そう学びました! そして、誰から学んだかは忘れました!!」
親父である。
「ならばぁ! これをどう避ける!! 『九頭竜黒炎!!』」
「ふぅぅぅんっ! 一刀流! 『次元大切断』!!」
六駆の一太刀は、襲い来る9つの黒炎を全て切り払った。
このスキルは空間を切り裂く。
ならば、無属性の炎だって例外ではない。
「ぐぅぅっ! ならばこの牙で噛みつくのみ!!」
「それを待ってましたよ!! ふぅぅぅぅぅんっ! ぶっ飛べ、秘宝剣!!」
六駆は捨て身で攻撃を仕掛けて来たジェロード目掛けて、ホグバリオンを全力で投げつけた。
幻をいかに実体化しても、体の中心に対する攻撃は回避のしようがない。
幻竜ジェロ―ドに致命傷を与えるならばこの方法しかないと彼は知っていた。
「グオォォオォォ……!! 見事……!!」
「あなたこそ。竜にしとくには勿体ないほど強かったですよ!」
こうして、幻竜ジェロードは全ての力を出し切り、満足そうに倒れた。
六駆もいつになく爽やかな表情をしている。
まるで勇者のようである。どうした、逆神六駆。
『逆神くん。お疲れ様』
「南雲さん。僕、やりましたよ。親父との関係を断ち切りました!」
『うん。こんなこと言いたくないけどね。幻竜が死んだら、その事実を語る者はいなくなるよね』
「……あっ」
『もう一つだけ良いかな? 逆神くん、秘宝剣ぶん投げてたけど、良かったの?』
「んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ぼ、僕はなんて事を!!!」
現世に持って帰るつもりでウキウキしていた、ホマッハ族の作った秘宝剣。
今は幻竜ジェロードの背中に深く突き刺さっており、とても取り出せそうにない。
さらに、新たな逆神伝説の語り部まで亡くそうとしている。
損失ばかりが増えていく現状に、六駆は天に向かって吠えた。
「ちくしょう! こんなのってないじゃないか!! この世界の神は鬼か悪魔だ!!」
悪魔の君がそれを言うのか。
コメント
1件
うわ、今回もめっちゃ面白かったです!六駆くんの親父嫌いがここまで拗れてるとは……でも「親父と僕は赤の他人って事にしてくれますか」って古龍相手に交渉するシーン、笑いました。幻竜戦のバトル描写も熱かったけど、最後に秘宝剣ぶん投げちゃって「んあぁぁぁ!」って叫ぶオチが六駆らしくて最高です。南雲さんの追撃(「語り部も消えるよ」)も容赦なくて草。現世に持って帰るつもりだったのに、ね……。次回も楽しみにしてます!