テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
すちはまだ、みことの身体を逃がさない強さで抱きしめていた。
胸の奥で何かがぎしぎしと軋む音がする。
「みこと。答えろよ」
耳元で囁かれる声は、静かなのに刺すようで。
みことは唇を震わせながら、首を横に振った。
「……っ、むり……選べない……」
声に出した瞬間、胸の中がぐしゃっと崩れた。
すちはその答えに微かに目を細めた。
怒るでもなく笑うでもなく、ただ測るような冷たい視線。
「……そう」
その一言だけで、みことの心は限界に達する。
「でも……っ……すちを失いたくない……!」
堰が切れたように、涙がぽろぽろ溢れた。
袖で拭っても追いつかない。
止めたいのに止まらない。
「すちが……離れていったら……俺……耐えられない……っ……!」
喉の奥がひりつくほど必死に叫んだその言葉に、 すちは一瞬――ほんの一瞬だけ、息を飲んだ。
みことの肩が震える。
その震えごと抱きしめられているから、すちにも全部伝わってしまう。
「……なんで、泣くんだよ」
すちの声が低く掠れた。
責める声じゃなく、戸惑いと抑えきれない何かがにじむ声。
「うそ……じゃないよな」
みことは首をぶんぶん振った。
言葉にならないけれど、とにかく伝えたかった。
「すち……ほんとに……いなくならないで……やだ……やだよ……」
涙に濡れた顔で必死にすがるように見上げる姿は、 すちの理性をぐしゃりと握りつぶすように直撃する。
抱きしめる腕の力が、じわりと変わった。
逃がさないための強さではなく、
噛みしめるような、切実な抱擁へと。
「……みこと」
すちの声が、震えていた。
額をみことの肩に押しつけながら、
ぎゅっと目を閉じる。
「……もう無理だ……」
その呟きは、執着と愛情の境界が崩れ落ちる音だった。
NEXT♡500
142
149
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!