みことが泣きながらすちの胸にすがりついている。
「いなくならないで……」
その言葉が、すちの心の奥の奥まで突き刺さっていた。
腕に込めていた力が、震えながら強くなっていく。
このまま抱きしめ続けたら──壊れる。
みことも、すち自身も。
だからこそ。
すちは息を深く吸い込んだ。
そして、ゆっくり、ほんの少しだけみことの肩から顔を離す。
涙で濡れたみことの顔が、すぐ目の前にあった。
その表情があまりにも必死で、弱くて、愛しくて。
胸の奥が痛いほど締めつけられる。
「……みこと」
すちは微笑んだ。
寂しくて、苦しくて、本当は泣きたいのに、 どうしても優しい形にしかならない笑み。
「ごめんね」
その言葉は、すち自身が折れる音と一緒に落ちた。
みことの目が揺れる。
「すち……? なんで……?」
すちはその問いに答えず、
みことの頬にそっと触れた。
涙を指で拭ったその手が──ゆっくりと離れていく。
「やだ……離れんといて……!」
みことは腕を伸ばして、すちの服を掴もうとした。
けれど。
すちは、そっとその手を避けた。
逃げるみたいじゃない。
拒絶でもない。
ただ、みことを傷つけないように触れないだけ。
「大丈夫だよ。みこと」
すちはもう一度、微笑んだ。
その微笑みは綺麗で、でも壊れそうに儚かった。
「ほんとは……抱きしめていたいけどさ」
喉が詰まって、声が少し掠れる。
「……離せそうにないからさ」
冗談めかした口調なのに、目は笑っていなかった。
すちはほんの少しだけ後ろへ下がった。
その距離が、みことには胸を刺すほど痛かった。
「だから……ごめんね」
手を離したすちは、
まるで自分の心臓ごと千切るみたいな顔をしていた。
みことの伸ばした手は、空を掴んだまま震えていた。
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