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テキオリョク部族集落。
屋外だが長い机が用意され、たくさんの部族民が卓を囲んでいる…
長老ウェング「妖の象徴の誕生に……」
「乾杯じゃ!」
ルディア「おいし〜!」
次々と食べ物を口に放り込む。
コブシ「あっは、豪快だね!アタシそんなに入んないや。」
テキオリョクの伝説として語り継がれるであろう戦いの翌日、200年不在だった妖の象徴の誕生を祝する宴が開催されていた。
盛り上がって今回のことについて話す民もいれば、お立ち台で踊る人もいる。
あの時、妖の象徴ディアンシーを気絶させたことにより、ダーティ災害は鎮まった。
気絶したディアンシーは目覚めるまでかなりかかる見込みらしいが、その後は200年前のように『妖の象徴』としてテキオリョク部族集落を守ってくれるだろう。
つまるところ、一件落着。
ルディア・コブシ・デュランタは包帯を身体に巻いてはいるものの、元気そうだ。
デュランタ「お食事中失礼。」
ルディアの後ろから話しかけ、肩を掴んで軽く引き寄せる。
ルディア「おおおお??」
困惑しながらも、食べていたものを急いで咀嚼し、飲み込む。
コブシ(食に対する執念が感じられる…)
デュランタ「うーむ…そうだな、やはりコブシにも来てもらおう。」
コブシ「えっ、アタシ!?」
デュランタ「踊り子の方達。踊っていてもいいから、中央を開けてくれるかな。」
踊り子たちが芸術的なステップで横に逸れる…
ルディアを引き連れたデュランタがマイクの前に立つ。
ルディア(これがマイク…!ウェングさんも使ってたけど、やっぱり不思議だなあ。本当に声が大きくなるんだもんね…)
(やっぱりタナバタ地方の機械ってすごいや!近くで見ると、より緊張するなあ…)
デュランタ「えー、コホン。今回の象徴選抜に参加した学者のデュランタだ。」
陽気な男性部族民「よっ!学者サマ!」
意地悪そうな女性部族民「その子彼女ー!?」
デュランタ「………こっちは同じく参加者、ルディアだ。セイザタウンからの来訪者ながらも、象徴選抜に最高級の貢献をしてくれた。」
ルディア「初めまして!ルディアって言います!」
「好物はクレープ!趣味は星空を見ること、好きなことは人助け!」
デュランタ「テキオリョクに住む者は僕とコブシを知るものが多いが…ルディアに関してはテキオリョクに来て間もない。」
「だから、偉大な貢献者ルディアを記録として残すためにも…インタビューを行う。」
部族民たちから「おお〜!」という声が上がる。
ルディア「インタビュー?」
デュランタ「質問は基本的にこっちでするが、おおかた質問を終えたら皆も質問してくれて構わないぞ。だが、あまりルディアを困らせないように。」
「ということで、インタビュアーコブシ、頼んだ。」
マイクスタンドからマイクを外して、コブシにパスする。
コブシ「アタシ!?」
デュランタ「良いから、早く。みんな待ってるぞ。」
コブシ(そんな!?聞くことも思いつかないんだけど…!?)
「ええっと、ルディア…氏!今回の『象徴選抜』を終えて、どういったお気持ちですか?」
ルディア「どういった…って言われてもあんまりはっきりと答えられる自信はないけど、とりあえず良かったって気持ちが強いよ。」
コブシ「無事に成功した安堵の感情が強い…と?」
ルディア「うん!成功したってこともそうだけど、みんな無事に帰って来れたことの方が大きいかな。」
「みんな傷を負ったりピンチになったりして、負けるかも!って思う瞬間もあったから。私たちみんなのコンビネーションが生んだ勝利だって、私は信じてるよ!」
コブシ「…ふふ!」
デュランタ「フン。」
コブシ「次の質問です!ルディア氏はすでにテキオリョク内で話題になっていて、『幸運の申し子』や『救世主』などと噂されていますが…」
ルディア「そんなに!?」
コブシ「自身がこのテキオリョク内で有名になるのは、やっぱり嬉しいですか?」
ルディア「確かに嬉しいよ!褒められたりすると、元気になるし。頑張って良かったなあって、実感が湧くんだ…」
「でも、『救世主』とかはちょっと大袈裟なんじゃないかな。せめて『救世の少女』みたいに呼ぶ方が可愛くない?」
コブシ「…」
「…ということなので皆さん、『救世の少女』という風に呼んであげましょう!」
どっと笑い声が聞こえてくる…
コブシ「じゃあ、私からは最後の質問になりますが…」
(…テキオリョクの次はどこに行くのか聞こうとしたけど、雰囲気を壊しちゃうかな…)
「テキオリョクの人々、およびここにいる人物に伝えたいことなどはありますか?」
ルディア「伝えたいこと?そんなにないけど…」
「まずテキオリョクの人たちに伝えたいことは、これからもこの集落をよくしてってねってことと…」
「コブシとデュランタに伝えたいことは、色々大変だったけど…一緒に戦ってくれてありがとうってことと!」
デュランタ「…」
観客が「foo〜!」という歓声をあげる。
コブシ「…えへへ、アタシからは以上だよ!お兄ちゃん、インタビューしたいこととか…」
デュランタ「ない。」
コブシ「…じゃあ、皆さんは…」
全く間を空けずに「ハイ!ハイ!」と手が上がる。まるで大量に並んだ針山のような、挙手の大群だ。
コブシ「……え〜っと…」
デュランタ「お前ら、強欲すぎる。ルディアもコブシも困るだろう、これ以上の質問はなしだ。」
部族民が「え〜!」「boo〜!!」「カスがよ!」「ケチ!」「クソメガネがーー!!」「ヒョロヒョロサラサラ丸眼鏡!!」「ぜひサインを…!」「スリーサイズは!」「彼氏いる!?」などと声が上がる。阿鼻叫喚である。
コブシ「あ、あははは…」
デュランタ「まあ、茶番はここまでってことさ、皆の衆。素晴らしい旅人の来訪を祝して、もう一度…乾杯だ。」
3人とも胴上げなどに付き合わされてそろそろヘトヘトだが…
夕方。宴は終わり、解散する…
デュランタとコブシの家の中にて。
デュランタ「君は象徴選抜が終わったらすぐに次の目的地に出発するつもりだったろうが、傷を癒すまではここに留まった方がいい。」
ルディア「確かに、今のままじゃちょっと厳しいかもね…うん、そうするよ。ちょっと迷惑かけちゃうね。」
コブシ「良いって良いって!数日でも数週間でも、人一人が泊まるくらいなら全然変わんないよ。」
デュランタ「…」
「切り出すタイミングを失っていたが、今正直に話そう。」
「昨日に教えた『特性』の授かり方は…別に嘘はついていないが、ほとんどの説明をしていなかった。」
ルディア「どう言うこと?」
デュランタ「最初は君のことをあまり信用できていなかったんだ。まぁ、今は違うがね。」
「昨日説明したのは、人間の象徴の陣を描き、その中心に髪などの自身のDNAに関連した物を置いて、少し詠唱すれば特性を授かると言うこと。」
「しかし、特性を授かる方法はもう一つある。」
ルディア「もう一つ?」
デュランタ「人間の原点であるもの…そう、『覚悟』。何かしらに対して異常なほどの覚悟を持つと、特性を授かることがある。」
ルディア「覚悟…本当にそんなので超能力みたいな特性を授かれるの?」
デュランタ「それは知らんが、『出来てしまっている』としか言いようがない。特性を授かれるようになった1年前、人間の根本的なルールを変えたんだろう。」
「しかし、いくら象徴と言えども世界全体の理を容易く変えれるほどの権能はない…例えば『炎の象徴』は近くの炎を操れるが、他の地方ほど遠い場所の炎は操れない。象徴全体がそういうものなのだが、なぜ人間の象徴がそれを成し遂げてしまっているのかは…よくわからない。陣は象徴の力を引き出すキーだからまだ分かるが、覚悟で授かる方は本当に説明がつかないな…」
「話を戻そう。特性を授かる際、デメリットがあるんだ。」
ルディア「デメリット?」
デュランタ「精神が崩壊しそうになるほどの、一時的な精神攻撃を受ける。これは覚悟による習得では起こらない者もいるが…陣で授かると、確定で起こる。」
ルディア「精神が崩壊しそうになる…?」
デュランタ「何と言うかな…はぁ、本当に説明が難しいんだ。当時はよく覚えていないが、脳にビクンと衝撃が走って、意識が何かしらの流れに持っていかれそうなのを必死に足掻いたような記憶がある…わかりやすい説明はできない。」
ルディア「デュランタも…それを味わったんだ?」
デュランタ「ああ、僕は覚悟による方で授かったが、それでも食らったよ。」
「僕は特性を授かることを推奨していなく、これがその一因だ。」
「あと僕が懸念している点が…まだ解明されていない、これ以上のデメリットがあるんじゃないかって事だ。人間という弱々しい器の中にポケモンのような能力を簡単に埋め込むなんて…出来ると思えない。
それが出来るとしたら、特性使用者が知らず知らずのうちに何かしらの代価を支払ってるってのが良いラインかな。」
コブシ「やめてよ、お兄ちゃん!怖くなっちゃうじゃん。」
デュランタ「可能性の話さ。僕は今この説を推して研究中なんだ…最も、不思議すぎてしばらくは結果が出る気がしないがな。」
「まあそんなわけで、特性を授かるのはあまり推奨しない。そして、隠して悪かったな。」
ルディア「別にいいよ!そっかぁ…まあ、特性を授かるとしても今は様子見にしておこうかな。」
家のドアがコンコンとノックされる…
「ルディアさあーん…」
老人の声…長老、ウェングだ。
ルディア「あっ!は〜い!」
賊の鎮圧と象徴選抜、不測の事態の解決に協力してくれた報酬です。妖の象徴はテキオリョクにとって本当に大切な存在なので、本当にありがとう…という旨の発言で最大限の感謝を表し、妖のプレート…せいれいプレートを手渡し、帰ってゆく。
ルディア「わ〜っ、これがプレート…!ついに手に入れたよ〜!」
コブシ「ほ、本当にあの『プレート』がルディアちゃんの手に!長老様もすごいことするなぁ…」
デュランタ「これで目的達成という感じか。なんと言うか、感無量だな。」
ルディア(ただの板だけど、意外と綺麗だな〜…)
(これが本当にゼルの回復に役立つの?)
デュランタ「そう言えば、君はプレートを入手して何に使うつもりなんだ?」
ルディア「えっ?え〜と…」
(これを聞かれたら言えってゼルに教えられた言葉…なんだっけ?ええと…あっ!)
「コレクションだよ!」
デュランタ「ほう、そんな趣味があるんだな。」
ルディア「ほら、プレートって結構綺麗だし。18タイプの象徴が1体1つしか持ってなかったものなんでしょ?集める価値はあるよね!」
コブシ「へえ〜…?」
デュランタ「何か嘘をついていないか?」
ルディア「えっ!?」
デュランタ「ま、用途が何であれ気にしないさ。君は悪用なんてしないだろうしね。」
「オークションにでも出せば数百億から二千億程度までの値はつくが…」
ルディア「にせんおっ!?」
コブシ「そんなするんだ…!?」
デュランタ「その希少さを考えれば妥当だろう。」
ルディア「…待って?オークションに出されたらってことは、オークションに出されたことが実際にあるの?」
デュランタ「ああ、僕の知る限りは一回だけな。ディアンシーのように死んだ象徴もいる、そのプレートが市場へ流れ出るってこともある。」
「まあ、複数集めるなら…相当頑張らないといけないな。」
ルディア(18個全てってなると、めちゃくちゃ難しそうだよね…)
(ものすごく難しい目標を突きつけられたことを実感するなぁ…でも、これも恩返しのため。頑張らなくちゃ!)
プレートをミニバッグに収める。
…入らない。
バッグは前より大きいものを買った。プレートはかなり大きいが、これで安心だ。
将来的に18枚全てを入れるとなると難しいが、まあ金庫やらどこかに保管して置いておけば良いだろう。
デュランタの作る美味しいごはんを食べ、少し本を読ませてもらう。
あっという間に夜は更け、眠りにつく………
…
…翌日の昼。
コブシ「ルディアちゃん、包帯変えた?」
ルディア「今朝に変えたよ。」
コブシ「良かった良かった!治ってるか確認したいし、ちょっと傷見せて?」
ルディア「良いよ?」
頭の包帯を少し上げると……
……なんと!傷が完治している…!?
コブシ「!?」
デュランタ「……ん…!?」
ルディア「どうしたの?」
まさか!?と言わんばかりに、すぐに包帯を全て取る。
傷が一つも見当たらない。かさぶたのようなものもなく、至って健康的なおでこだ…おととい見た時は、肌が破れて血が出ていたと言うのに。
コブシ「ぜ…全部!全部治ってるよ!?二日しか経ってないのに!」
デュランタ「ありえない…いくら治りが早くとも五日ほどはかかるし、しかもそれから1・2週間ほど跡の残るような傷だったぞ?」
ルディア「そう言うことね!私って昔っから傷の治りが早くて、ちょっとした怪我ならすぐ治るんだ…」
デュランタ「そ、そうか。驚異的だな……」
コブシ「あは、羨ましいや…」
他の箇所も確認したが、やはり完治だ。
目を疑うが…本当に治っているのだから、信じる他ないだろう…
デュランタ「治ってると言うなら、別に今日にでも旅に出られそうだな。どうする?」
ルディア「じゃあ行くよ!善は急げ、だよ。」
コブシ「次に旅する場所ってどこなの?セルシティ?」
デュランタ「迷っているなら、北のタナバタ地方なら案内できるぞ。たまに行くんだ、比較的安全な地方だしな。旅先にはおすすめするよ。」
ルディア「ありがとう…でも、シッコウ地方に行こうと思う。」
コブシ「シッコウ!?」
デュランタ「あまり深く調べていないなら軽率に決めるのはやめた方がいい…」
「いいか、今のシッコウ地方は『無法地帯』だ。」
「ギャングが蔓延り、人の住める場所はほとんどない。他地方からの援助もなく、『見捨てられた地方』と言ってもいいだろう…」
「これを聞いて本当にシッコウ地方に行きたいと思うか?」
ルディア「そこまで酷いところなのは知らなかったけど…やっぱり、シッコウに行くよ。」
デュランタ「……何故だ?」
ルディア「いくら危ないところだったとしても、私はそんなの気にしないし…」
「何より、もしかしたら…いるかも知れないんだもん……」
デュランタ「何がだ!」
ルディア「お別れの言葉も言えず、行方不明になっちゃった…大切な友達が…!」
デュランタ「…」
コブシは、少し驚いたような表情でルディアを見つめる。
デュランタ「まあいい、止めやしないさ。どれだけ止めても、君はなんとか行くような気がするしね。」
「そう言うことなら…気をつけてくれよ。」
ルディア「うん…」
荷物をまとめ、外へ出る。
集落の最南…
ルディアが旅立つ時だ。
デュランタ「象徴選抜に協力してくれて、本当にありがとう。」
コブシ「ありがとう!」
ルディア「うん、一緒に戦ってくれてありがとう。」
コブシ「シッコウ行きの船は少ないからね!船が来るまであんまり長いようだったら、戻ってくるんだよ?」
ルディア「分かったよ!」
デュランタ「もし、次にクラシ地方へ帰る時…ここを第二の故郷だと思って、帰ってきてくれると嬉しい。」
ルディア「うん…!」
コブシ「バイバイ、ルディアちゃん!」
大きく手を振って、ルディアはテキオリョクに別れを告げ、森の中に消えてゆく…
雨林の奥にて。
ルディア「草の象徴さーーん!!」
叫び声が響き渡り、静寂が帰ってくる。
ルディア「……」
「…本当にいるの?」
ゼル《えぇ、間違いはありません。》
《クラシ地方南部、テキオリョク部族集落を囲む熱帯雨林…そこに草の象徴は隠居しています。》
シッコウ地方へ赴く前に、草のプレートを入手しに来ていた…
ルディア「その割には何も反応がないよ?」
ゼル《草の象徴は頑固です。今まで草の象徴を呼びかけた者の殆どには反応すら示しませんでした。》
《特に効果的なのは、草についての愛と誠意を見せる事でしょう。》
ルディア「詳しいね?」
ゼル《少しばかりは。》
すると、どこからともなく…声が響いてくる。
『そなた…只の人間ではないな?』
ルディア「うわっ!?誰!?」
『余はバドレックス!草の象徴である。』
『この雨林へ何しに来た?』
ルディア「出てきてくれたか…!草のプレート、ちょうだいよ!」
『プレート…ふむ。確かに余にとってこの石板はとうに要らぬ物…』
『ただし条件があるぞよ!』
ルディア「条件?」
『まず…樹木を器とし!豊穣の礎を以て!対の亡き陽を追う花を植え!献上したまへ!』
ルディア「………」
「………えっと…どう言うこと?」
ゼル《恐らく…「木製の植木鉢に土を入れて、ヒマワリを植えたものを持ってこい」と言うことでしょうか。》
ルディア「分からないよ!!」
ゼル《彼はこう言うものです。複雑な言い回しを好み、それを理解できるほどに知恵のある者を好みますから。》
《しかし、手間がかかりますね。もしかしたら、その工程を飛ばせるかもしれませんが。》
ルディア「?」
テレパシーの対象は今までルディアのみだったが、一時的にその対象を姿の見えない『草の象徴』にも及ばせる…
ゼル《草の象徴よ。》
『ム?お主は一体…?ここにはこれ以上、誰も…待つのだ、聞き覚えがあるやもしれぬような…』
ゼル《あなたなら理解できるでしょう。何も言わず、プレートを渡しなさい。》
『ハァっ!?!?な、なんと!!つい今しがた気がつきましたぞ!そなたは、そなたは…!』
ゼル《無駄な言葉は不要です。プレートを渡しなさい。》
『ハハーッッッ!!!!』
ルディア「おわっ!?」
木の上からプレートが降ってくる。間一発でキャッチする。
草の象徴の声が聞こえなくなる…
ルディア「簡単に手に入っちゃった…」
ゼル《上手くいきました。ひとまず、今のところはクラシ地方に用はなくなりましたね。地面の象徴のプレートは北のセルシティにありますが、前回よりも長い距離の砂漠を超えてゆくのも不合理です。シッコウ地方に行くと言うのなら、地面のプレートは後からでも遅くはないでしょう。》
ルディア「……」
「…ゼルって…一体何者なの?」
ゼル《大した立場ではありません。》
ルディア「そんなこと言われてもさ!なんか…まるで『草の象徴』が、ゼルを見て怖がってたみたいだったよ?」
ゼル《ただのセイザタウンの「守護神」…そう言うことにしておきましょう。》
ルディア「…まあ、良いか。ゼルが言いたくないなら、私は別にいいよ。」
獣道を歩いてゆく…だんだん奥から光が差してくるのが見える。
ゼル《この雨林を抜ければ港でしょう。今のシッコウ地方は「無法地帯」と化していると言う話です…今まで以上に気を付けなさい。》
ルディア「もちろん!」
そう…一年前。ある時突然、ポケモンが暴走するエリアが発生する「ダーティ災害」と呼ばれる災害が発生し始め、ポケモンは完全に信用を失った。
そして、最初のダーティ災害に見舞われ故郷を失った少女は使者となり…テキオリョクに爪痕を残して、クラシ地方から去ってゆく。
『救世の少女』の伝説は、始まったばかりだ。
世界に存在する4つの地方は、どのような運命を歩むのか──
──南西に位置する、クラシ地方。「平和」を掲げる地方の名だ。
終末の霧はここから始まり、少女から全てを奪った。
だが運命と星の意思は消えず、始まりは訪れた。
救世の意思のもとに、平和を取り返すのだ───
──南東に位置する、シッコウ地方。「正義」を掲げる地方の名だ。
古来は最も栄えた地だったシッコウも、今では見捨てられた無法地帯となった。
だが法なきものを罰し執行するため、残された者は正義を掲げた───
──北西に位置する、タナバタ地方。「願い」を掲げる地方の名だ。
防ぎようのないダーティ災害によりポケモンは完全に信用を失ったが、タナバタの民達は自らの「象徴」に不信を抱かなかった。
千年がかりの御伽話が叶うことを、心から願っているのだ───
──北東に位置する、イロドリ地方。「不滅」を掲げる地方の名だ。
終滅は無慈悲にも牙を剥き、三色の王は今や一体になってしまった。
悲しみに明け暮れた王は終わりの神に叛逆し、不滅を誓った───
世界は「終わり」へ歩を進めようとしている。
立つのだ。
「悪」の混沌を切り払え。愚者を執行せよ。この世界を「始まり」の加護で包め。
成功と平和を強く願え。正義の名の下に終わりに抗え。不滅の精神を貫け。
世界はお前を待っている──