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「私は一日中薬草取りでもいいのよ!?」

午前中を鍛錬・修練に費やした二人は、昼から森の中で魔物を探して歩いていた。

魔物どころか動物ですら殺した事がない箱入り娘のミルキィは、最後まで無駄な抵抗をしていた。

「薬草も過剰に入荷すれば値段が下がるって依頼書にも書いてあったでしょ?それにお金のことだけじゃなくて、比較的安全な場所で始めたいんだ」

「…わかったわよ」

冒険録を見て冒険者に興味を持ち、レベルアップを体感した事で興味は夢へと変わったレビンだったが、冒険録は現実向けのものであった為、レベルが上がればいきなり戦えるとは考えていない。

まずはいきなりではなく、心の準備をさせる。

森で狙い通りのゴブリンを3体見つけたレビンは、検証する為に2体を初撃で殺し、1体は生捕りにした。

「やっぱり2体倒してもレベルは上がらなかったかぁ…」

レビンの予想では、ゴブリン1体をレベル0時に倒しても1しか上がらなかった為、次のレベル2には相当数のゴブリンを倒さなければならないと予想していた。

(逆に言えばレベル0からならゴブリン1体で必ずレベルが上がるって事だな。やっぱり効率で考えたら常に0にするべき)

「わ、私は別の機会にするわ!?レビンの検証を急ぎましょ!?」

「ダメだよ、ミルキィ。その剣で僕を守ってくれるんでしょ?」

ミルキィはレビンにその事は伝えていない。だが、幼馴染である為、ミルキィにどの様な言葉で伝えれば行動するのかを、レビンは知っていたのだ。

「も、もちろんよ!ふぅふぅ」

「落ち着いて。まな板の上の魚だと思って」

ミルキィが料理上手な為、そうアドバイスをしたのだが……

「魚をシメたこともないのよ…ママにそこまではしてもらってたの…」

(うん。知らない。じゃあなんて言おう…)

「このゴブリン、さっきからミルキィのことをエッチな目で見てるよ!?」

シュンッ

レビンがミルキィに発破をかけた瞬間、レビンの動体視力でさえ捉えきれない程の速さで、ナニカがゴブリンの首へと吸い込まれていった。

ポトッ

(えっ!?一太刀でゴブリンの首が落ちたんだけど……これからは発言に気をつけよう。うん)

レビンが一頻りガクブルした後、ミルキィに声を掛ける。

「やったね。ところでレベルは上がった?」

「ふぅ。やったわ!残念ながら上がった感じはしなかったわ」

(まぁレベル1の僕でも上がらないのに上がるわけないよね)

レビンがゴブリンの解体(魔石)と剥ぎ取り(耳)をミルキィに頼んだところ、レビンより手際良く行った。

「凄い!無駄がないよ!」

「レビンがするところを見ていたおかげよ」

ミルキィは謙遜するが、そのレビンより手際良く、かと言って雑ではなく綺麗にそれを行った。

(料理の技術が活かされてるのかな?まぁ元々ミルキィはやれば出来る子だったけど)

「次を探すわよ!」

「えっ!?わ、わかったよ」

剣も解体も褒められた為、俄然やる気を出したミルキィに引っ張られて、次の魔物を探す事になった。


順調にゴブリンの死体を量産した二人は時間を忘れるように過ごし、夕刻になったところで街への帰路に着いていた。

街に着くとまずはギルドに納品に向かい、そして宿へと帰る。もはや冒険者のルーティンが染み付いた二人であった。


翌朝、今日は考察の為に早く目覚めたレビンに急かされて二人は件の森の中へ。

『レベル15』

タグにはそう記されていた。

「改めて見てもミルキィのレベルは凄いね…」

「レビンは相変わらずね」

『レベル1』

レビンのタグには慣れ親しんだ数字が。

先日からミルキィのレベルは8上がり、レベル15となっていた。

もちろんレビンも強さは同じ様に上がっている。

「じゃあ、始めようか!」

レビンの開催宣言と共に、二人は能力測定を始めた。

能力測定が終わると、レビンは深い思考の海へとダイブする。

(僕達はそれぞれレベル8増えた事になる。つまり1レベル換算にするには8で割ればいい。そして今のレベルの合計分それを掛けて結果から引けばレベルが上がる前の数値になるよね…)

九九を学んだわけではない為、一つずつ丁寧に計算していく。

そして長い沈黙の後、結論が出た。

「僕の垂直跳びは元々は60センチだったみたい。それで現在のレベルアップ回数は16で156センチだったから1レベルにつき、元の身体能力から1割上がってるみたいだね。

他の能力値についても凡そそれくらいだから合ってると思うよ」

「じゃあ10レベルで倍になるって事ね!凄いわね…通りで昨日から身体が軽すぎると思っていたわ」

「そうだね。僕は他から見ればレベル1だから良いけど、ミルキィのタグをアイラさんにでも見られたら大騒ぎになりそうだね…」

レビンは順調さを喜ぶと共に、ミルキィの事が明るみに出る事を危惧した。

この方法にはミルキィが必要不可欠であるが、それが無くともレビンにとっては大切な人である。

この美しくも儚い少女を守る為に、出来るだけの予防をしようとレビンは心に誓う。

「ミルキィの測定結果は少し違ったよ。僕は1割の伸びだったけど、ミルキィはどうやら僕の半分だったね。これが個性なのか種族的なものなのかはわからないけど、知る必要もないかな」

「そう。それでも凄いわ。レビンはこの倍成長しているのに、よくバランスを崩さないと思うわ」

人は少しバランスが崩れるだけで走れなくなる。もちろんレベルの恩恵は身体能力全てにかかる為、あまり影響がなさそうに思えるが、少し向こうに跳ぼうとしても倍跳んでしまえば怪我をするし、歩くにしても身体を軽く感じればうまく歩く事は困難になる。

「急に倍になるわけじゃないからね。最初は1割の伸び率だけど、その次には既に1割を切っているから」

レベル10からだと、1レベルアップで5分の成長率だ。

さらに上がっていけば、いつか微々たるものになるだろう。

「でも普通の人よりは確実に早いよね。ゴブリン換算になるけど1から2に上げるのに4倍必要だったもんね」

特に考察する必要性を感じなかった為、レビンのレベルが2に上がり次第ミルキィにレベルドレインしてもらっていた。

「そうね。私のレベルドレインも、一回の吸血で1しかレベルが吸えない事がわかったのも収穫ね」

ミルキィが言っているのは、レベル2を吸う為に2回の吸血行為が必要だったことについてだ。

一度吸血が終わったところでレビンはタグに血を垂らした。そこで出た結果がレベル1だった為、レビンはレベルが下げられなくなったかもと焦ったが、その後の吸血で問題なくレベル0まで下げられた事に安堵した。

「そうだね」

「今は足手纏いにはならないけど、レビンの半分の成長しかないのなら、いつかお荷物になりそうね…」

ミルキィは成長率を危惧した。

自身がレベルを上げる為にはレビンからの吸血しかない。他の人から吸うなど論外であるし、魔物からもごめんである。

その為、いくら自分のレベルが上がろうともレビンより身体能力的なレベルが上になる事はないのだ。

「何言ってるのさ?悪いけど、元々ミルキィの強さなんて当てにしてなかったのに、ありがたいくらいだよ。

それにまだわかんないけど、ミルキィが僕以外からもレベルドレインが出来るなら、捨てられるのは僕の方だよ。特別なのはミルキィなんだよ」

「レビンを捨てるなんて有り得ないわっ!」

「僕も一緒だよ?これでわかったよね?」

レビンの言葉を聞き、ミルキィは顔を赤くしながらもしっかりと頷いて返した。

(ありがとうレビン)

ミルキィの心の中での感謝と共に、今回の考察は終了を迎えたのであった。




「えっ!?今日もゴブリンを沢山討伐したの!?」

能力測定と考察を終えた二人は、ゴブリン討伐に精を出していた。

普段より長く討伐に時間を割いた為、昨日よりも多い15体も倒したのであった。

多く倒せた理由は時間だけではない。より強くなり安全を確保できて、さらにはミルキィの体力と速さが大幅にあがったので気にせず森を進む事ができ、レビンの攻撃が弓よりも予備動作の少ない投石と短剣主体となった事も要因だった。

「はい!大分慣れたのでそのお陰ですね!」

「でも…レビンくん、レベルが低いままよ?」

二人が調子に乗り過ぎたせいで、危惧していた疑惑を投げかけられるのであった。



レベル

レビン:1→2→1→0→1→0→1→0→1→0→1→0→1→0→1(16)→0→1を15回→1(31)

ミルキィ7→15→30

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