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『プライベートな客人』
「お二人共、お久しぶりですね」
石榴はドレスの裾をふわりと持ち上げながら客間の椅子に腰掛け、優雅に微笑みながら言う。
そんな石榴の目線の前には2人の人物が座っている
「別にアンタに会いたくて来たんじゃないのよ、勘違いしないで頂戴」
濃い紫色のウェーブがかった長い髪と髪につけている赤色のリボンが特徴的な
10代半ば程度の容姿をしているがまだ幼さが残る少女が顔を背け、
唇を少し尖らせながら子供のような口調で告げる。
「おや、左様でございますか」
軽い様子で石榴はくすりと笑うと、
少女はまたムスッとした様子になるが石榴はどこか興味なさげなままである。
もう一人の客人の方に目をやると、その客人は椅子から立ち上がり石榴に近寄る
「石榴様、お久しゅう御座います」
紳士的な装いと口調をしていて左側がやや長いアシンメトリーとなった黒髪と、
吸い込まれそうになる黒い瞳を覆う片眼鏡が特徴的な男が赤い唇がよく目立つ様に、にこりと優雅に笑い、石榴の手を取る。
「オニキスさん、貴方ほんの2日前にいらっしゃったばかりでは御座いませんか」
「いいえ、石榴様の居ない2日間なんて私にとっては数百年に等しいのです…」
「おや、ご冗談がご上手で」
くすりと笑いながら石榴は口元に指を当てる。
すると少女は少しバツが悪そうな表情をしながらポーチから手鏡を取り出す。
「おや、いつものですか?」椅子に座っている少女の後ろから石榴がひょこりと鏡を覗き込む。
「えぇ、そうよ。あぁ…やっぱり私は今日も世界一可愛いっ!」
頬を赤らめ自分の世界に入ってしまったような少女を見て石榴は少し呆れたように息鏡を見ながら吐く
「アメジストさんは本日も手鏡がお好きなのですね」
そう言った後、椅子に座りティーカップを手に取る
暫し会話を交えた後、部屋の扉が3回ノックされる。
「えぇ、どうぞ」
扉が開き、ひょこりとペリドットが顔を出す
「あら、ペリドット。久しぶりね」
「こんにちは、ペリドットくん」
「あっ、お久しぶりです。オニキスさんはどうも…一昨日ぶりですね」
2人に少し会釈をした後ペリドットがテコテコと石榴の隣に歩いていく
「お母さん、頼まれていたの持ってきたよ」
「えぇ、ありがとうね」
ペリドットの頭を撫で、
豪華に飾られ両手の掌で持てば少しはみ出てしまう程の大きさの箱を受け取る。
「ペリドットも私の隣にお座り」と、優しい声色で石榴が言い、
それに応じてペリドットが石榴の隣に座る。
石榴は受け取った箱を少し眺めたあと、懐から鍵を取り出す。
鍵穴に鍵を差し込み回すと、カチャリと音が鳴る
「何それ」
アメジストが少し身を乗り出して石榴の持つ箱を覗き込む
「宝石箱ですよ」
「宝石箱?これはまた…何故?」
オニキスの質問に対して石榴は宝石箱の蓋を開けながら答える
「久方ぶりに有識者の方々と共に見たくなったのですよ、お客様と話しても迷惑になりますし、クオーツやペリドットはこの様な宝石類の知識があっても原石や鉱石を構成している物質などの突飛な思考を深めることは苦手な様ですし」
ペリドットが少し不服そうな表情で石榴を見つめているのも尻目に、
石榴本人は宝石箱から宝石を取り出していく
「それに此処は人形店だけで無く時折宝石店もどきもしていますのでね」
「あ、これは…珍しい鉱石ですね、北の交易品でしょうか?」
オニキスが白い手拭を使用し鉱物を持ち上げマジマジと眺めながら言うと石榴は少し身を乗り出してほんの少しだけ興奮気味に話す。
「えぇ、そうです。先日運良く安値で購入できたのですが見てください。この光沢、透き通り、内側まで見えてしまう程の美しさ、波紋のような形、どこをどう取っても…」
ふとハッとした様な表情を浮かべると石榴は咳払いをし、
「失礼致しました」と姿勢を直す。
「あら、綺麗な青色……これって」
暫し宝石類を見ていたアメジストがふと、
宝石箱の中に一際特別に保管されている青い宝石に目を落とす。
そしてその宝石を見たオニキスが少し眉間に皺を寄せ、
ペリドットは「あっ…」と小さな声を漏らす。
石榴は一瞬ほんの少し口を噤んだ後、普段通りに説明を始める
「藍玉…別名を海の宝石、または人魚石と呼ばれます。海の様に清々しく淡い色合いが特徴で、尚且つモース硬度が十分に硬く、普段使用出来ると言った優れものでその2つの要因から、非常に人気の高い宝石で御座います」
「…藍玉……ね」
アメジストはぼんやりとした様な目で青く澄み切ったその宝石を見つめる。
暫しの間、少し重く冷たい空気が流れると、
オニキスがソファから立ち上がり「紅茶を煎れて来ますね。石榴様、暫しお待ち下さいませ」とにこりと笑って退出する。
「逃げたわね、アイツ」
アメジストがオニキスが出て行った扉の方を眺めながら
誰に言うわけでもない様に言い、ペリドットがそれに頷く
「全く…勝てないって解ってる癖に一体……」
何かを言おうとするがそれを飲み込み、
アメジストは少し俯いて自身のピアスに触れ、
藍玉を宝石箱に仕舞うと、石榴の方を数秒眺めた後、舌打ちをする
「…アンタなんて嫌いよ」
「えぇ、存じております」
アメジストの事を瞳に映す石榴は今日も優雅に笑い、宝石箱の鍵穴を閉める
コメント
7件
ビャッッッッ(アメジストがストレートイン)
おっわぁ…続きだァ… アメジストちゃん…推しになりそう()
オニキスとアメジストの設定はまた後で投稿します