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M.S
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#オリジナル
芽花林檎
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八月六日。
夏の海は、今年も変わらず青かった。
寄せては返す波の音。
頬をなでる潮風。
どこまでも続く水平線。
この景色だけは、あの日から何一つ変わっていない。
変わってしまったのは、僕だけだ。
砂浜をゆっくり歩きながら、
肩に掛けたカメラバッグへ手を伸ばす。
使い込まれた一眼レフ。
高校二年の春から、ずっと僕の隣にある相棒だ。
バッグの内ポケットから、一枚の写真を取り出す。
少しだけ色あせた写真には、
制服姿の少女が夕焼けを背に笑っていた。
風に揺れる長い髪。
太陽みたいな笑顔。
その笑顔は、何年経った今でも、
僕の記憶の中では昨日のことのように鮮明だった。
写真を裏返す。
そこには、見慣れた丸い字で一言だけ書かれている。
『また来年も、ここで写真を撮ろうね。』
僕は小さく笑って、空を見上げた。
「……今年も来たよ。」
波の音だけが静かに答える。
カメラを構え、水平線へ向ける。
シャッターを切る。
カシャッ。
その音を合図に、
止まっていた時間がゆっくりと動き始める。
思い出すのは、高校二年の春。
桜が舞う教室。
窓から吹き込む柔らかな風。
そして、一人の少女が僕に向かって笑った、あの日。
「その写真、すごく好き。」
たった一言で、僕の世界は少しだけ優しくなった。
あの日の僕は、まだ知らなかった。
その一枚の写真が、
この先の人生でいちばん大切な宝物になることを。
これは、一人の少年と一人の少女が出会い、笑い、
迷い、恋をして、大人になるまでの物語。
そして――
僕が、君を忘れられなかった物語。
コメント
4件

ほんとですか!なら嬉しいです! はい!もう今の所第一章は書き終わったんですけど、 第一章にも伏線たくさん散りばめてあります! 全部読み終わったあと、また読み返して見たら、また違う視点で観れるかもです! はい!これからどんどん更新していきますねー! あ、早速1話あげちゃおうかなー!
読了しました🌙 「変わらない海」と「変わってしまった自分」の対比が、すごく静かで切なかったです。 一枚の写真に込められた時間の重みが、画面越しにじんわり伝わってきました。 “また来年も、ここで写真を撮ろうね”——その言葉が、今はもう叶わない約束なのかと思うと… M.Sさんの文体、とても丁寧で優しくて、心に染みます。 続きも大事に読ませてください。