テラーノベル
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それから数日。千歌と凪は、自然と顔を合わせるようになっていた。
「先輩、今日のお昼は何食べたんですか?」
「え……普通のお弁当だけど」
「普通って何ですか!もっと具体的に!」
「……卵焼きと、ウインナー」
「おお〜!絶対美味しいやつ!」
子供みたいに目を輝かせる凪に、千歌は思わず笑ってしまった。
「ほんと、落ち着きがないね」
「え、褒めてます?」
「褒めてない」
放課後には、また校舎裏。
「先輩、今日は歌ってくれますか?」
「毎日は無理って言ったでしょ」
「じゃあ、ほんのちょっとだけ!」
「……仕方ないなぁ」
そう言いながら、千歌は数小節だけ口ずさんでしまう。
凪が嬉しそうに耳を傾けるたびに、胸の奥がじんわりと熱くなった。
——こんなふうに、誰かと笑い合う日が来るなんて。
戸惑いながらも、千歌はその時間を大切に思い始めていた。
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