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うさぎになっちゃったマッシュくん1
うさぎになってしまった。
というのは、ある時の授業で『動物に変身できる薬』を調合していたのだが、
席を立った生徒が誤って薬品をこぼしてしまったのが始まりだった。
その薬品は見事に僕にかかり、うさぎに変身してしまったという訳だ。
「マッシュくん!?」
と、隣にいたフィン君が驚いていた。
僕の今の姿は小さく、黒い毛玉のようだった。
先生によれば一日で効果が切れるのだそう。
うさぎの体は実に不便なものであった。
小さな体なので体力は余計に使うし、周りがとても大きく見えるから怖く見えたり……
なので僕はフィン君に運んでもらうことにした。
フィン君の肩に乗り移動して、フィン君の手のひらに乗りご飯を食べた。
昼食が食べ終わり、廊下を移動していた時だった。
「あ、兄さま」
廊下の向こう側から来たのがレインくんだった。
「おう、フィンか…ん?」
レインくんは視線を僕の方へ移した。
「うさぎ……?」
「ああ!そうだ!実はマッシュくんが授業中に……」
言葉が話せない僕の代わりにフィン君が説明してくれた。
「そうだったのか」
そう言ったレインくんはなんだかウズウズしていた。
「もしかして兄さま……触りたい?」
フィン君がそう聞くとレインくんは無言で頷いた。
「……だって、マッシュ君いい?」
ここで断るのは申し訳ないと思い僕は頷いた。
フィン君はレイン君に僕を手渡した。
少し怖かったけど、レインくんは優しく撫でてくれた。
普段、うさぎを扱うのに慣れているからか撫で方が上手い。
つい、ウトウトしてしまった。
レインくんの手から伝わる熱が心地よくて、マッサージのようだった。
「兄さま嬉しそうだね」
「そうか?普通だぞ」
その割にはずっと撫でている。
でもまぁ、心地いいので何もしないが。
「いつ頃戻るんだ?」
「先生が言うには明日には戻るって」
「そうか……」
その表情が寂しく見えたのかフィン君はとんでもないことを言い出した。
「……兄さま、良かったらマッシュくん連れてっていいよ?」
僕はその言葉に驚き、パッとフィン君の方をみた。
「いいのか……?」
「うん、何だか兄さま寂しそうだったから。今のうちにうさぎ姿のマッシュくんを堪能してよ」
フィン君はそう、意味のわからないことをにこやかに言った。
「お前は嫌じゃないか?」
レインくんは僕に同意を求めた。
ふるふると首を横に振る。
僕自身もレインくんが普段どんな生活をしているのか、興味があった。
「決まりだな」
そう言ってレイン君は微笑んだ。
珍しい。
そう思った。決して悪口では無いが、普段は仏頂面だったので驚いた。
うさぎの前ではこんな笑顔を見せるんだなと、僕は少し妬いてしまった。
「どの道、この姿のままでは授業を受けていても仕方が無いからな、今日は早めに帰るか」
「マッシュ君をよろしくね」
「ああ」
そう、返事をし、僕を優しく抱いたまま転移魔法を使った。