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翌日、僕はロンドン郊外の古い下宿屋へと足を運んだ。
本来ならば閉鎖されているはずの宿屋は、なぜか営業を続けていた。
「本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
従業員は丁寧に応じ、僕を問題の部屋へと案内した。
そこには古びているにもかかわらず、不自然なほど整えられていた。
「本当にここで死人が出るのか……」
寒さに耐えかね、僕は暖炉に火を入れた。
その瞬間、焦げたような匂いが鼻を突いたが、深く考えず、そのままにした。
やがて事情聴取のため、従業員が部屋に入ってきた。
僕は質問を重ねる。
「最初に人が死んだのはいつですか?」
「二カ月前です」
「オーナーに報告しましたか?」
「いいえ」
「なぜ話さないのですか?」
普通ならば当然報告するはずだ。
だが従業員は言葉を濁し、やがて小さく呟いた。
「……オーナーが半年前に姿を消してしまって」
理解が追いつかない。
オーナーの不在の宿屋で、連続怪死事件。
謎はさらに深まった。
その時だった。
従業員が突然、床に崩れ落ちた。
「おい!しっかりしてください!」
呼びかけても応答はない。
脈は弱々しく、今にも途切れそれだった。
つい先ほどまで普通に会話していた人間が、目の前で命を落としそうにしている。
僕は慌てて部屋を見渡した。
暖炉の炎、焦げた匂い、密閉された空気ー。
「……まさか」
すぐに窓を開け、救急車を呼んだ。
呪いではない。
これは現代でも頻繁に発生する現象だ。
やがて騒然とする現場に、オーナーも駆けつけてきた。
「いったい何があったんだ!」
「落ち着いてください。まずあなたに話したいことがあります」
僕は真相を語った。
「呪いなんかじゃありません。原因はこれです」
暖炉を指さすと、誰もが驚いた。
「暖炉から発生する一酸化炭素が原因だと考えています。一酸化炭素は最初、頭痛や吐き気を引き起こし、やがて意識を失わせます。これを一酸化炭素中毒といいます。人々はその中毒で亡くなったのです。」
皆、唖然としていた。
「この暖炉は古く、不安全燃焼を起こしていました。本来なら交換すべきなのに、なぜ放置したのですか?オーナーさん」
問い詰めると、オーナーは焦り、従業員たちは彼をじっと見つめた。
「あなたは下宿屋を見放し、営業を続けていました。これは業務上過失致死傷罪の疑いがあります」
さらに僕は調べた事実を突きつけた。
「収益の九割をギャンブルに使っていたそうですね」
従業員たちは驚愕し、オーナーは放心状態となった。
「今すぐ出頭するか、この下宿屋を閉めください。あなたの行動は人を殺しているのと同罪です」
そう告げて僕は早々に立ち去った。
(強めに言ったけど……あのオーナー、本当に責任感ないな。まあ解決したし)
翌日、会社で僕は人気者になっていた。
「サインください!」
「握手してください!」
人々は騒ぎ、新聞には大きな見出しが載った。
《謎の男が呪われた事件を解決!》
その時、イギリスが紅茶を片手に現れた。
「さすがだな、ドイツ君。君は弟子にふさわしい」
笑顔でそう言う彼に、僕は答えた。
「いえ、科学的に解決しただけですよ」
「なぜこの事件の真相がわかった?」
「子供の頃、僕も一酸化炭素中毒になりかけて意識不明になったことがあるんです。だからいつも鼻が利くんですよ」
イギリスはふっと笑った。
「なかなかいい弟子じゃないか」
こうして僕は正式に、イギリス探偵事務所の弟子となった。