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『 s t p l 様 短 編 集 』
くに OD
「楽しい」って、なんだろう。
「幸せ」って、どこにあるんだろう。
気づけば、朝が来るのがつらくなって、
誰かの笑顔を見るたびに、自分が壊れていく気がした。
「大丈夫なふり」だけが、どんどん上手くなっていった。
本当は苦しくて、寂しくて、助けてって叫びたくて仕方なかったのに。
でも、そんなこと言ったら、 嫌われるかもしれない。
「めんどくさい奴」って、そう思われるかもしれない。
だから、言えなかった。
誰にも、何も。
そして気づけば、 薬だけが俺を楽にしてくれるようになっていた。
橙「んッ…」
橙「ぷはっ…… 飲むのきつ…」
橙「でも、やめらんない…ッ 」
手元の薬の数を数えながら、ふわふわとした気持ちに浸る。
橙「今は30くらいか……」
橙「あと20のも…」
くらくらする頭、吐きそうな胃。
それでも、どこか楽しい。
橙「しんどいことも、消えるし……」
翠「くにお~っ!」
翠「あそぼっ?」
橙「ゆさッ…!?」
翠「?……どした?」
翠「入るよ~?」
橙「ぇあッ、だめっ、!」
翠「……だめって、なんで?」
翠「入るよ?」
ガチャッと、 部屋のドアがゆっくりと開いて、
あたたかな光が射し込む。
その光の中、ふらふらと立ち上がろうとする。
橙「ま、まだ…来ないで……ッ」
俺は手を伸ばすのも精一杯だった。
床には、散らばった薬の袋と空のペットボトル。
翠「く、くにぉ……?」
ゆさんの声が揺れる。
目の前の光景を、信じられないように見つめる。
翠「……これ、なに?」
翠「なにしてるの……?」
橙「……たのしくて、しあわせで、ちょっと苦しくて」
橙「これしてると、なにも考えんでいいの」
橙「しんどいのも、全部消える……」
翠「……でも、それ……命にかかわるよ?」
橙「それが、いーの」
橙「このまま、消えてもいいって思えるでしょ…?」
橙「そしたら、しんどいことも、全部終わるから」
翠「……っ、だめだよ……!」
ゆさんが駆け寄って、俺の手を握る。
冷たくなりかけたその指に、力を込めて。
翠「くにおが、いなくなったら、……ゆさん、やだよ」
翠「すたぽらは……どうするのっ」
翠「リスナーさんは、どうするのっ…!」
翠「みんな、くにおがいなくなったら、かなしいよ……!」
橙「……ゆさん……」
涙がこぼれ、薬のせいではない痛みが流れ出した。
でも、その手の温かさが、俺を少し止めた。
俺は、たぶん笑ってた。
その笑顔は、どこか壊れかけていて。
助けを求める声は、誰にも届かないように、小さくて。
だれにも気づかれないまま、
消えてしまいたいって、そう思ってた。
でも、 「生きてていい」って……そんなふうに思ってくれる人が、
一人でもいてくれるなら、
まだ、止まれるのかな、俺……。
壊れる前に、誰かに、助けを求められるかもしれない。
ゆさんが、薬の袋をギュッと握りつぶして
翠「……いまはしんどくてもいい」
翠「でも、生きてて。お願い、くにぉ…」
橙「…………」
涙と一緒に、飲み込んだ薬がこみあげそうだった。
でも、それでも…。
橙「……ゆさん、俺、どうしたらいいのかわかんない」
橙「……でも、そばにいてくれる?」
翠「いるよ、ずっと」
翠「だから…まだ、ここにいてッ」
まだ心は揺れている。
でも、今は…
生きててもいい、そんな気がした。
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. ♡ 100 or 💬&ふぉろ 10 2話目 公開 。 .