テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
6,254
36
#ご本人様には関係ありません
CREA
63
side j
楽屋前の廊下を歩いていると
ふわりと香るよく知っている匂い
少しだけ歩幅が大きくなる
早く会いたい
笑っている顔が見たい
俺を見て名前を呼んで欲しい
ドアを開けると読んでいたドラマの台本から顔を上げて
「おつかれ、仁人」
と、勇斗が言う
他のメンバーがいない楽屋の中は
廊下より匂いが強い
「おつかれ」
勇斗の正面の椅子に座る
持ってきていた水を一口飲んで
台本を読む隼斗を見る
いい匂い
好きな匂い
「・・・なんかめっちゃ見てくるじゃん」
小さく笑って視線が交差した
一瞬跳ねた鼓動を悟られまいと
少し視線を外して
「いや・・・相変わらず香水のセンスいいなって」
「この香水、最近お気に入りなんだよね
落ち着くっていうか、ほら、俺、テンパると空回りばっかしちゃうし・・・
知ってる?香りって記憶と結びつくってやつ
だからこの香水つけてセリフ覚えたりしてんの」
「そっか、セリフ覚えるのも大変だもんな」
「そうなんだよ・・・
あ、じゃあさ仁人、セリフ合わせ手伝ってくんない?」
「え、俺?」
「いーじゃん、ほら、一人でやるより掛け合いがあったほうが覚えやすいかもしれないだろ?」
「まぁ、いいけ「じゃ決まり!今日このあと俺の家でやろ!」
あれよあれよと勇斗の家に行くことが決まってしまった
驚きと不安と期待が絡み合って
俺の心中は全く穏やかじゃない
side h
この香水を最近ずっとつけている理由
もし俺がいないところでこの香りがした時
仁人が俺のことを想ってくれるように
たとえ、同じ香りがする人が目の前にいても
心の中では俺のことを考えていて欲しい
知ってる?
香りは記憶だけじゃなく感情にも作用がある
この香りに乗せて俺の恋情を受け取って欲しい
だって、仁人も俺のこと好きでしょ?
俺、覚悟決めてんだよね
だからセリフ練習にかこつけて家に呼んだ
続くかな?
コメント
1件
うわ、これめっちゃ良い……! 香りを介した二人の距離感が絶妙でした。仁人が隼斗の香りに「好きな匂い」と内心で返すところと、隼斗が「俺のことを想ってくれますように」と策略を仕込んでるところの対比が刺さります。セリフ練習という名の口実で家に呼ぶ流れも自然だし、続きが待ちきれないです!