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「なかなかないね、ランタン。」
「桃瀬くん主催だから、そんな簡単にはいかないとは思っていたけど……まさかここまでとはね。」
宝探しのゲームのはずが、結局皆で屋敷の中を周ることに。このゲームの趣旨としては間違ってはいないけど、なんだか変な感じもする。
「…1個目、見つけたぞ。」
「じゃあ、開けてみなくちゃね。」
『残念!これはトリック箱だよ。この箱を見つけちゃった人は、今日1日語尾にぴょんってつけてね!』
「トリック…つまり悪戯が仕込まれているということですか……。」
「悪戯というより、悪ノリね。奏クン、愉しんでるわね。」
「……ぴょん…。」
「なんか、聖さんが言うと可愛いね。」
「…が、頑張る…ぴょん……。」
「ねえ、藤林先輩、泰揮クン。」
「何かしら、楓チャン。」
「あの2人と離れすぎじゃない…?いくら何でも勘づくって……」
「あら、それは2人の本心に楓チャンは気づいているってことかしら…?」
「気づかない方が不思議だよ。どんだけ鈍いの、あの2人。」
「まあ、気が付いていないのは本人たちだけでしょう。」
「それなら、教えてあげたほうがいいんじゃないの?」
「聖クンには教えてあげようかとも思ったんだけど、自分で気づいて想いを伝えられる方が幸せかなって。」
「随分と乙女チックで夢見た発想だね。」
「楓チャンは見ててイライラする?」
「今はもう…しないよ。どんなに私が好きでいても無駄だってこと、分かったから。」
「聖も花月さんも器用ではないようなので、遠回りになるかとは思いますが、自信をつけさせるにはこのほうが良いでしょう。私たちができることは、せいぜい2人が離れないようにサポートすることです。」
「本当にアタシ達って損な立場よね。親としての役割をこなして、見守るだなんて。」
「未練があるのは私より、皆さんってことですか。」
「まあ、完全に諦めたわけじゃないわよ。ただ…最初から、あの2人はお似合いだと思ったし、結果が見えてはいたわ。聖クンが花月チャンを襲うとは思わなかったけど。」
「聖が花月を襲った!?」
「声が大きいわよ、楓チャン。」
「楓ちゃん、どうかしたの?襲ったって…?」
「う、ううん、ほら、聖が海賊で花月が天使の衣装だから、襲われないか心配だなっておもっただけ!」
「…あんなこと…もうしない…絶対に…約束する。」
「うん…えっと…ありがとう……?」
「なんで私がひやひやしなきゃいけないのよ。」
「今はもう大丈夫みたいだけど、あの時は大変だったのよ。花月チャン、アタシたちと話すのも辛かったみたいで、琉生クンに手を借りて…。」
「琉生くん…?」
「以前お会いした下層吸血鬼上がりの少年です。」
「下層吸血鬼って、純血種の吸血鬼に血だけ吸われた不幸な種族のこと?」
「語り継がれているのはそうね。実際は、自我がきちんとあって、人間としての感情も持ち合わせている素晴らしい子たちよ。」
「私も……下層吸血鬼にでもなれたら…よかったのに…。」
「そういえば、楓チャンのご両親は混血種だけど吸血鬼…なのよね…?」
「2人とも立派な吸血鬼です。でも…生まれてきた私は吸血鬼としては不完全。牙もないし、ただの人間みたい……。おかしいよね、吸血鬼のDNAがないだなんて……。」
「そんなことないと思うわよ。アタシたちが知っている子でね、後天的にDNAが作用した子がいるの。その子は人間の父親と下層吸血鬼の母親の間に生まれた子でね、母親のDNAが受け継がれたはずだったの。でも、生まれてきたその子は吸血鬼にはならなかった…。あることをするまでは。」
「あること……?」
「その子はね、他の吸血鬼のDNAが体内に入ったときに、DNAのぶつかりあいを起こして、吸血鬼の本能を目覚めさせたの。」
「その人は…今はどこにいるの?」
「完全な吸血鬼になるために旅に出ているわ。」
「私たちの見解としては、貴女のDNAがいつか何かのきっかけで作用するのではないかということです。今は不完全でもいつか完全な吸血鬼になれます。貴女は吸血鬼の両親の間に生まれてきたのですから。」
「そう…なれたらいいな。そうしたら…きっと認めてもらえる……。」
「さ、難しいお話はお終いにしてランタン探しを楽しみましょう。いつまでも聖クンたち2人の世界に浸らせていると、危ないわ。」