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藤澤の唇が、再び若井のものに重なる。
温度を持ったそのやわらかな感触に、若井は抗うことなく目を閉じた。
舌先が触れた。
探るように、確かめるように――そして、甘えるように絡み合う。
キスの合間に漏れる吐息は、微かな濡れた音となって室内に響いた。
若井は背中を支えられるまま、藤澤にゆっくりとピアノ椅子へと座らされる。
その膝の上に、静かに跨ってくる藤澤。
「……嫌じゃ、ないんだね」
藤澤の声は掠れていた。
そしてその瞳は、どこかで何かを諦めたような、けれど切実に何かを求めるような色を帯びている。
若井は答えられなかった。
ただ喉の奥で息を呑み、俯く。
その様子を見て、藤澤は優しく微笑んだ。
「……こないだの、続き…するね。」
唇が喉元に落ちてきた。
シャツのボタンを外され、肌に唇が吸い付くたびに、若井の体がビクッと小さく震える。
「くっ……」
胸の辺りを弄られると、息が漏れる。
「……感じてる。可愛い」
藤澤の手がゆっくりと、若井のベルトへと伸びてくる。
カチャ、と金具が外れ、ズボンが膝まで落とされた。
羞恥と快感の狭間で、若井は唇を噛み締める。
「藤…澤、先生…やめ……」
「……やめてほしい?」
言葉だけは問いかけてくる。
けれど、その手は止まらない。
その手のひらで、若井の熱を包み込んだ。
「……っは、」
一気に熱が身体を駆け上がる。
指先がなぞるたび、ゾクリとした感覚が背中を走り抜けた。
「…んっ、はぁ……っ」
「どうして、こんなに反応してるの?」
藤澤はふと、視線を逸らす。
そして、ぽつりとつぶやいた。
「……俺が、寂しいって言ったら。抱いてくれる?」
その一言で、若井の肩がピクリと震える。
顔をあげると、藤澤の目には涙が滲んでいた。
「…お願い……癒して……」
その手が、若井の頬にそっと添えられる。
若井は、何も言わなかった。
けれど――逃げもしなかった。
それが返答だった。
藤澤は、またゆっくりと若井の唇を奪い、 そのまま仮眠用のソファの上へと横たえさせる。
教室の外では吹奏楽部の音がかすかに聞こえる。
けれど、この部屋だけは、時が止まっているようだった。
そして藤澤は、自身の欲望に素直に従うように、若井の中へ――
「……っは、やっ……藤、澤…待って……!」
「我慢しないで…全部…俺の全部、感じて…」
音楽準備室に響く微かな軋み。
汗ばんだ肌が擦れ合い、唇が離れるたびに小さく啼く若井。
ふたりの間に言葉は少ない。けれど、熱だけは、確かに重なっていた。
何度も波が押し寄せ、ふたりの体が激しく重なっていく中で――
限界が近づくのが、お互いに分かっていた。
藤澤が、若井の耳元で囁く。
「……ねぇ、滉斗…。“涼ちゃん”、って…呼んでぇ…っ」
「……っ、そんな……」
「ダメ。言って、早く…っ…イキそう…!」
若井の瞳が揺れる。
けれど、もうその瞬間を止められなかった。
「…あぁっ…イくっ……涼ちゃんっ……!」
「っ、……滉斗……!」
ふたりの絶頂が重なる。
熱が重なった瞬間、互いの名前が漏れるように、震える声で重なった。
2人の関係は、この日から変わった。
密室の音楽準備室で――
誰にも言えない秘密が、少しずつ蓄積されていく。