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鷹槻れん/鷹槻うなの

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鷹槻れん/鷹槻うなの

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臣桜
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#恋愛
水無月 京
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「乾杯」
早速届いたビールで乾杯する。
豆さんは今日は飲むんだろうか、と意向を確認しようとすれば、伊藤さんがすかさず「生4つで」と注文されてしまったので、自動的に飲むことになったらしい。
「いやー労働の後の酒は格別ですな」
「それは間違いないですね」
「大豆生田さんはお酒好きでしたっけ」
「そうですね、こだわりはないので飲めればなんでも、ですけど」
そういえば、この間のディナーは豆さんは一切お酒を飲んでいないので、彼がどんなお酒を飲むのか、とか、お酒に強いのか、なんてことは全く知らない。強そうだけど…。
「またそんなこと言って。大豆生田さんは会食でいいお酒飲んでるでしょう」
「それを言ったら伊藤さんの方が余程会食の頻度は高いのでは」
最近もウチとA社、B社、C大学の提携が発表されてましたけど、あれ伊藤さんの功績でしょう?
「ああ、あのアライアンスね。小さいモノだしプレスも小規模だったんですけど、よく気づきましたね」
「そりゃ自社の情報ですからねぇ」
のらりくらりとした会話の、一見した平穏さがかえって怖い。やっぱり肌にまとわりつく何か得体のしれないものの気配があって、その幻覚を取り払いたくてついビールをあおる。
「おお、秘書さんはいい飲みっぷりですね。お酒は好きですか」
「そんなに好きというほどでも…強くはあるんですが」
「それは頼もしい」
くしゃりと相好を崩す伊藤さんは、一見人当たりの良い陽気なおじさんのように見えるけれど、腹の中に何かを抱えていることはなんとなく感じる。
「弓家さん、飲み過ぎちゃダメだよ」
豆さんが、相変わらずの外行きの笑顔でこちらを見る。どうやら、この場では業務用の笑顔を崩さないと決めたらしい。
「…すいません」
「なんのなんの。今日は楽しく飲みましょうよ」
身内でしょうよと言いながら、「秘書さんのおかわり頼んでおきましょう」と、まだジョッキに半分ほど残っているのに先回りしてビールを頼まれる。
もしかして、この人飲ませたがりタイプのおじさんなのか…。
「大豆生田さん、セクター長選の調子はどうですか」
ゆるりとジョッキを傾けながら、穏やかな声が本題に突入したことを告げる。お腹の奥底から緊張感が湧き上がってきて、思わず膝に置いていた手に力が入り、ぎゅっとワンピースに皺が寄る。
「さあどうですかねぇ」
豆さんは、何一つ動揺することなく豪快に笑う。
「色々議論はするんだけどね、誰が何を腹に隠し持ってるかわかんないですねぇ」
「まあ、パートナーは老獪が多いからなぁ」
私からしたら老獪の筆頭は伊藤さんなのだけど、とは到底言えないけれど。
伊藤さんもうっすらと微笑みながら酒を煽る。
「社長選の方がまだ最後まで揉めそうな中で、あんまりコッチは議論しても仕方ない雰囲気はありますよね」
そっちの結果次第で、ガラガラポンですからね。
「まあそう言いつつ、大豆生田さんが優勢なんでしょう」
「どうだか」
伊藤さんもご存知の通りですよ。
不適に微笑む豆さんは牽制を笑顔で薙ぎ払う。
「いやいや、私は別セクターだからね、あんまり事情を知らないのよ」
大袈裟なまでの手振りを繰り出す彼は、一体何を考えているのだろう。
「でも、社長選なら伊藤さんは色々暗躍していると聞いてますよ」
「暗躍?」
結構社長選の裏陣営の議論の取りまとめの矢面に立ってくれているとか。
私も知り得なかった情報を、軽々と取り出して伊藤さんに放り投げる豆さん。伊藤さんの顔がやや引き攣る中、「追加で何飲みます?」とひどくマイペースにメニューを開き始めるから、違う意味で再びヒヤヒヤする。
「なんの噂だか」
「ほんと、噂でしかないですよそんなの」
気にするだけ無駄でしょう、と言い出しっぺのくせに深追いすることもなく言い退ける。
「ま、私は酒の席に賑やかしとして呼ばれることが多いので、そういうのに尾鰭がついたのかもしれません」
あからさまな嘘かもしれないし、真実かもしれないし。伊藤さんの落ち着いた態度からは、私ごときじゃ何も読み取れない。
「そっすね」
豆さんも追加でやってきたお酒と、運ばれてきたメインディッシュにあからさまに興味を持っていかれたようで。
もう、お子様じゃないんだからやめて、と喉まで出かかってきた言葉を無理やり飲み込む。
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