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追放殿下は隣国で、セカンドライフをおくります! 〜良い人過ぎてセルフ追放。だけど良い人だったので、ケ
第8話 - 第7話 一方その頃母国では(1)~苛々シンと二人の師~
42
1,928文字
2026年03月14日
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ちょうどアルドが魔獣と対峙している頃。
王城の一角、とある廊下にはイライラしながら歩いているシンが居た。
原因は、手に持った沢山の分厚いファイルだ。
書類が閉じられたそのファイルは、重さが最早平気で筋トレレベル。
それを離れた資料室まで運ぶこの仕事は、体力仕事が大の苦手な彼にとって最悪の相性だ。
「そもそも、だ。資料室と執務室の間が遠いんだよ、この城は」
本当に、文官に優しくない造りになってる。
文官に対する嫌がらせか、さもなくば俺達の体力の無さを甘く見ているか。
もうそうとしか思えない状態だ。
もう本当に、思わず出るため息を垂れ流しにせざるを得ない。
なんて事を思いつつ、廊下を歩いていた時だった。
「おぅ、シンじゃないか?」
後ろから、そんな声が掛けられる。
振り返ると、そこには立派な白い顎鬚を蓄えた騎士服姿の男が居た。
一目で分かる鍛え抜かれた体躯に加え、只者じゃない存在感。
それに加えて堂々とした立ち居振る舞いともなれば、おそらく萎縮しない者は居ない。
が、何事にも例外はある。
「レングラムさん。珍しいですね、貴方がこんな所に居るなんて」
「なに、たまには私も書類仕事もせねばならん」
全く恐れる事も無くシンは彼にそう言えば、彼はワハハと笑いながらそんな風に言葉を返した。
しかし今の言はおかしい。
彼は書類仕事をしなければと言っているが、ここはもちろん執務室じゃない。
そう、つまり。
「レングラムさん、さてはまた書類が机に積みあがり過ぎて副官に怒られたんですね? しかも、すぐに飽きて現在は休憩と称して逃亡中」
そういう事でしょ。
疑問ではなく最早確認じみた風に言うと、彼は口を尖らせて「どうしてお前はそういつも、バッチリと当ててしまうんだ……」と言ってくる。
「今の俺にはお説教をしたばかりなのに、もうこうして逃げた隊長を探さなければならない副官の苦労さえ良く分かりますよ。それと全然可愛くないですから、年甲斐もなく口を尖らせるの止めてください」
「ワハハハハハッ、冷たい所まで相変わらずだなぁー!」
豪快過ぎる笑い声な、周りの人達の視線を集めた。
しかし声の主に気が付くと、みんなすぐにまるで何事もなかったように仕事に戻る。
「で、シンは資料運びの途中なのか?」
「そうですよ。ですからレングラムさんが手を貸してくれるというなら、私としても吝かでは――」
「お前は元々基礎体力が圧倒的に足りておらんしな。鍛える為には、むしろ足らんくらいだろう」
その声に、シンは「はぁ」と思わずため息を吐いた。
レングラムの理想は人のそれよりかなり高いからちょっとばかし迷惑だ。
「一介の文官を騎士のソレと比べないでくださいよ」
「そんなもんには当てはめとらん。私から言わせれば、アルドももっと鍛えた方が良いくらいだ」
「それじゃぁ騎士基準以上でしょうが。もっと悪いわ」
この国の王族にしては、アルドはきちんと鍛えてた方でしょう。
シンがそう続ければ、レングラムは「まぁそれはそうだがな……」とちょっと不服そうにする。
「アイツには剣の才能があったのだ。なのに『王太子』だというだけで、必要最低限の鍛錬時間以上のものは取れなんだ。これほど勿体ない事は無い」
「まぁアルドは神から『剣士』の祝福を受けていますから、そりゃぁ素質はあったでしょうが」
「鍛錬に耐えうる精神もあった。お前なんぞ鍛錬がキツイとすぐに逃げて……」
「ゲブンゲブン」
このまま行けば「今からでもいい、お前のその精神性を鍛え直してやろう」とか言い出しそうだ。
そう思って懸命に、咳払いで聞こえていないふりをする。
運動神経が皆無に近いシンにとって、鍛錬は本当に苦行でしかないのだから仕方がない。
と、ここでレングラムがおもむろに「おぉそうだった!」と言って手をポンッと叩く。
「アルドと言えば、あやつ謁見後すぐに出ていったそうではないか。しかも馬車を辞去した上で。どこまでも不器用というか、愚直なヤツよ」
「あぁまぁ確かに徒歩で出ていきましたが、あれってアルドが断ったんですか?」
「噂ではそうらしいな。たしか『平民が王城の馬車に乗る資格など無いから』と……って、何? まさかシン、アルドの事を見送ったのか?!」
「本人は何も言わずに出ていこうとしていましたけどね」
薄情な奴ですよ。
そう言いつつ遠回しに肯定すれば、レングラムも「はぁ」と深いため息を吐く。
「変な所で気を使うからな、あやつは」
「同感です」
「しかしそれにしても……それならば何故私を呼びに来なかった?! 挨拶したかったのに!!」
「だから口尖らせないでくださいってば、気持ち悪い」
そのいかつい日焼け顔で可愛いアピール、ホントに辞めてほしい。
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