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こうもり@スランプ
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稀灯 夏成🩵🍸
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春が終わり東京と長野を往復する生活にもすっかり慣れて、夏にはまたフェスもあるし忙しくなる前にたくさん会っておきたくて夕方遅くなったけどりょうちゃんの部屋にやってきた。
「来たよ···っと···あれ?」
白い壁がオレンジ色に染まる部屋にりょうちゃんの姿はない。
怖いくらいの静けさ、綺麗に整えられたベッド、珍しく開けたままのカーテン、誰もいなかったように生活感のない部屋。
「りょうちゃん···?どこ?どこにいったの?!」
トイレにもいない、どこにもいない。
この前のことがフラッシュバックする。
その日はりょうちゃんの体調が風邪と発熱で悪化して俺が部屋に着いたと同時に運ばれていって俺は無力で何も出来なくて待つだけで···それでも落ち着くまでは部屋に帰れないからって会わないまま帰った。
かくん、と力が抜けて床にへたり込んむ。りょうちゃんのことを誰かに聞かなきゃと思いながらも身体が動かない。
「元貴···?」
ドアが開いた音がして振り返るとそこには車椅子に乗ったりょうちゃんが座っていた。
「りょうちゃん···!大丈夫?!また調子悪いとか···!」
「ごめん、心配かけて···ちょっとね、頭とか痛くて先生に診てもらってたの···もう平気」
後ろに看護師さんがいたような気がするけど、俺はそんなの気にしないでりょうちゃんを抱きしめた。
「良かった···よかった···また、前みたいに会えないままになったらどうしようって」
「ごめんね···ごめん···」
やっと離した時にはもう看護師さんはいなくてゆっくりと車椅子をベッドのそばまでつけてりょうちゃんをお姫様抱っこしてあげる。
「···あのね、俺、ちょっと休みをとろうかなって。もちろん若井も!あ、休止とかじゃなくてちょっと早い夏休み!」
「夏休み、いいね···夏がくるもんね、元貴のちょっと苦手な、ね」
「りょうちゃんは好きだよね」
「うん···夏かぁ···暑いけどカラッとしてて空の青さとかお祭りとか花火とか···好き」
「いいね···仕事めちゃくちゃ片付けてさ、ちょっと涼しいこっちでゆっくりしよっかな。外出許可貰ってさ、2人でデートして、夜は花火しよ」
にこっと笑って喜んでくれる。
それだけで俺は幸せだった。
いつしか夕日は沈み、夜の気配がする部屋は薄暗くなっていた。
「今日はこのあとどうするの?来るなんて思ってなかった」
「あ、ごめんね、いきなりで···渡したいものがあって。実は帰らなくちゃいけないんだけど、1日でも早くと思って」
部屋にいなくてびっくりして顔見てほっとして、すっかり忘れていた。
小さい箱を鞄から取り出すとりょうちゃんの前で開ける。
「···指輪···?なんで···?」
「サイズ、合わなくなってたから···結婚指輪、ってことでどう?」
付き合ってた頃に買った指輪は細くなった指からすぐに抜けてしまい、無くしたら困るからと大切に仕舞われていたのを知っていた。
りょうちゃんの現状を表すような、寂しすぎる現実を見た俺はすぐに新しいものを贈ろうと決めていた。
その薬指にはいつだって俺を忘れないための約束が欲しかった。
りょうちゃんが涙ぐむのがわかった。
こくん、と深く頷く。
床に跪いて手を取って、真っすぐに見つめる。
「涼架さん、俺と結婚してください。一生幸せにするから」
「···はい、よろしくお願いします」
残りの一生がどのくらいの長さかなんて誰もわからない。
だからこそ、今を大切にしたい。
嬉しそうで、でも少し寂しそうなりょうちゃんにまた連絡する、と伝えて面会終了時間ギリギリに外に出と空は高くて星が綺麗でキラキラ光って見えた。
タクシーにすぐに乗る気になれなくて早く帰らなくちゃいけないとわかっているのに誰にも見られたくなくて少し歩くことにした。
···誰にも泣いてるところなんて見られたくなくて。
本当は休みなんて予定してなかった。けど、もう休みを取ることを決めた。
抱き上げたりょうちゃんはびっくりするほど軽くて。
新しい指輪がぴったりの指は、か細くて。
俺が思ってる以上に残されている時間が短いんじゃないかと嫌ってほど感じてしまったから。
辛いとか苦しいとか嫌だとかりょうちゃんは俺の前でそんなこと言わない。
だから俺も最期まで笑っていよう。
···笑って、いなきゃ。
「あ、若井?ごめん、今から帰るんだけど遅くに悪い、出てこれる?少し早い夏休みを取ろうとと思って···仕事のこととか、打ち合わせしたい」
努めて明るく言ったつもりだったのに、声が震えて、携帯を持つ手が汗で濡れてる気がした。
『いいよ、行く···もしかしてりょうちゃんに何かあった?』
若井はそういうところ、本当に察しがよくて俺のことなんて全部わかってるみたいだった。
「···若井···りょうちゃんの為に俺になにが出来る?何にも出来ないよ···」
『元貴?』
「···りょうちゃんに夏···来るかなぁ···?大好きな、真夏のキラキラしてて青い空、一緒に見えるかなぁ···」
若井は何も言わなかった。
ただ、気をつけて帰ってきて、あとで会おうって言っただけだった。
明るい月と星空を見上げる。
俺の上でなんか光らなくていい。
だからりょうちゃんだけを照らしてください。
コメント
6件
😭😭😭 まだ連れていかないでー😭 泣きすぎてガビガビよおお😢
涙が止まんないです... 続き楽しみにしてます...😭