『酒にまかせて』のつづき
R18表現ありません
sm視点
『ね、スマイル今日暇?うち来ない?』
『いいよ。』
きんときと付き合おうってなったあの日から、特に2人っきりで話すこともなく、数日がたっていた。“俺らなりに付き合おう”って言ったのは俺からなんだが、正直自分がきんときに何を求めているのか分からなくなっていた。きっと今日は、互いにどういうことを求めるのかについて話すんだろうし、何も考えずに行くのはマズイ。だが、うだうだ考えている暇もなく、向こうの要望を聞いてから答えを見つけるか…と俺は外出する準備を始めた。
ピンポーン
ガチャ
「いらっしゃい〜、どうぞどうぞ。」
「おう。…うおっ、やっぱ綺麗にしてるな。」
思ってた通り清潔感のある無機質な部屋で思わず感嘆の声が漏れる。
「まぁ人並みにはね。なに、お前ん家はやっぱ汚いの?」
「うるせぇ。」
「ふっ笑。あ、そのソファにでも座ってて。お茶でも入れてくるよ。」
テレビの前にある大きなソファ、言われたようにそこにぼふっと座る。ん?いい匂い…。あ、あれだ、いつも近づけばほのかに香る、きんときの匂いがする。結構この空間好きかもしれない。
コトッ
「はいどーぞ。」
「ありがとう。…ところで今日はなんの用で?」
「はぁ…、馬鹿ですかあなたは。付き合ってて会うのに理由がいるんですか?」
彼は俺の隣に座りながらため息をついた。
間違った伝わり方をしたと俺は焦って、
「 え、あ、違う!今日のこれは、付き合うときに互いになにを求めるのかについて話すためなのかと思って…その、本題に早く入ろうとしたんだよ!悪い!会うのに理由は、その、いらねぇよ。」
「ああ、そういうことね。ごめん…。俺、今日まで、少しくらいスマイルの方からアクションあるかなって思ってたから、ちょっとイライラしちゃってた。お前から提案されて付き合うってなったのに、あれから連絡なかったからさ。」
それは薄々俺も思ってたんだ。誘うなら俺からだろうなって。ただ…。
「…それは、すまん。その、さ、恥ずかしかったんだよ…。」
「…はぁーーー。ずるいよ君は。」
「は?なに?」
「もういいよこの話終わろう。じゃあ本題入ろうか。」
「え?うん。」
「で、スマイルさんは一体何が望みなんですか?」
「…すまん、俺まだ自分の中で固まってなくてさ。だからきんときから言って貰えないか?」
きんときは少し考える素振りを見せて、お茶をグビっとひとのみした。
「…分かった。んーー俺はね、触らせて欲しい、だけかな。」
じっーと真正面から目を見つめられる。どうも俺はこれに弱い。少しむず痒い気持ちになる。
「前みたいにほっぺ触ったりだとかってこと?」
「そう。」
「…分かった。俺も…触りたい、から、触らせてもらう。」
きんときがちょっとニヤニヤしてきてなんだか悔しい気持ちになる。
「オッケ〜、スマイル他は?俺はそれだけなんだけど。」
「…うーん、見つかったらその時に言うスタイルで良い?今はやっぱり分からなくて。」
「いいよ。…んね、じゃあ早速だけど触ってもいい?」
俺はビックリして思わず目を見開く。
「え?!」
「そんな驚かなくてもいいじゃん笑。ねぇ、いい?」
「…お前、寝てる俺に触ってたのバレた時、あんな焦ってたのに、調子乗りやがって。なんなんだよ…。はぁ、いいよ…。」
俺の了承を聞いたきんときはニカッと笑って、両手を近づけてくる。彼の手が俺の両頬に触れてぼわっと熱が広がる。真正面から俺の顔をじっと見てくる青い瞳に耐えきれず、目を一生懸命逸らす。こんなことをして何が楽しいのかと疑問に思うが、そんなことを考えている頭とは裏腹に、自分の心臓はバクバク鳴り響いているのが感じられる。数秒経つと、ただ触れていただけの手が、急に頬を揉み始めた。
「ばっ!なに!」
逸らしていた目を元に戻して睨む。
「ごめん笑、つい。」
本当に心から幸せそうに笑う彼の表情を見ると、どうしても顔が赤く染まってしまいそうで、また目を逸らした。されるがままもみもみされ続け、そして手が離れてしまった。
「ありがとう、満足できた。あ、スマイルも俺の頬触る?はい、どうぞ。」
そういってきんときは自分の顔を俺に差し出した。
「…今日はいいよ。また、やりたくなったときに言う。」
触れられない…。今触れたら心臓が壊れてしまいそうだ。
「…そっか。じゃあ、もう1個やっていい?」
「もう1個?え、なに?」
首を傾げていると、きんときが腕を広げて体から近づいてくる。
「え、な、待っ…。」
柔らかく包み込むように抱きしめられる。体が密着し、触れている面積がでかすぎる。熱い、全身が。足先、指先、頭のてっぺんまで、どこもかしこも俺の心臓の音が響いている。そんな中、俺は、行く先を失った両腕をどうしたらいいのか分からずうろたえる。きっと、きんときの背中に手を回し、俺も抱きしめるのが正解なのだろう。だがしかし…。俺にはできない、恥ずかしすぎる。
なにもできずに固まっていると、スっときんときが離れていった。
「…ごめん、嫌だった?…あれ、顔赤…。」
「うるせぇ!今日はもう帰る!」
俺は思わずそばに置いてあったクッションをきんときに投げる。
「ちょっ、待って…」
「今日はお開き、また今度会おう!じゃあ!」
バタンッ
大きく音を立ててドアを閉める。逃げ出すかのように帰る。恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。でろでろに溶けてしまいそうだ。ああいうこともすんのかよ…。
帰宅してからも、きんときの熱がしばらく全身を覆っていた。
コメント
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スマイルさんもきんときさんも可愛すぎますね、