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『触れ合う』つづき
R18表現ありません
kn視点
あれからというもの、LINEを送っても、
『今夜会わない?』
『用事あるからごめん。』
『今日はどう?』
『体調悪いから無理。』
というように、ずっと避けられていた。
前会った時、めちゃくちゃ恥ずかしそうだったもんなー、そりゃ会うの嫌だろうなー、なんて思いながら、いっぱいニヤニヤしちゃう。
あれからずっとめげずに誘い続けていたが断られ続け、やっとグループでワイテハウスに集まる日になり必然的に会えることになった。さすがのスマイルも、俺を避けて欠席するとかはしなくて、ちゃんと来るみたいだ。
ゆっくり準備していたら、気づくと出発予定時刻を過ぎていて、焦って駅に向かう。結局ワイテハウスには予定より少し遅れての到着だったが、他のメンバーはまだ揃っておらず、安心してソファに座った。
ふと、「あ、こないだスマイルが置き忘れてった財布返さなきゃ」と思い出し、まだ到着していないスマイルを待つ。
ガチャ
「わるい、遅れた。」
スマイルがドアから入ってくる。
俺は自分の目の前を通ったスマイルの腕を掴む。
「これ、お前の…。」
ふと顔を見上げると、彼の顔はたちまち真っ赤に染まっていった。
「え?」
「…や、これは違…。わるいちょっとトイレ。」
彼は、真っ赤な顔を腕で必死に隠しながらトイレに走る。
「え、どしたんあいつ。」
きりやんが首を傾げながら言った。
「…熱でもあるんじゃない?」
「そうなのかな。…え、なんでお前ニヤついてんの?」
俺はハッとする。表情筋が緩んでいた。
「どこが?ニヤついてなんかないけど。」
「まぁそうか…。」
危ない。どうも可愛すぎて我慢ができなかった。どうしよう、早く2人きりになりたくて仕方がない。メンバーには何も言ってないから、ここで何かする訳にもいかない。早く、2人きりに…。
外が暗くなってきた頃、今日やるべきことが全て終わり、俺らは帰る準備を始めた。
スマイルが1人先に早くドアに向かう。
そんなスマイルを見て、なかむが声をかける。
「ちょ、スマイル?今日6人でご飯行く予定だったよね?」
「…あぁ、わりぃ、ちょっと体調悪いからもう帰るわ。」
「まじか、分かった。お大事に。」
そそくさとスマイルが足早にドアから出ていく。
俺は、そんな話を盗み聞きし、焦ってなかむに話しかけにいく。
「なかむ、ごめん!俺も明日早いからもう帰るね。」
「えーーまじかよ…。分かった、気をつけてね!」
「じゃあ、また。」
もう帰ってしまったスマイルを追うように急いで外に出る。このあいだは、スマイルの帰るスピードが早すぎてすぐ居なくなってしまったが、今日はそんなことはなく、少し小走りをしたらすぐに彼の姿が見えた。
「スマイル!ちょっと待って…。」
俺は息を整えながら話しかける。
「…どうした?」
彼は振り向いて止まってくれる。
「これ、財布…!結局さっき渡せなかったから。」
「あ、ありがとう。」
彼はスっと手をこちらに差し出して、財布を受け取った。
俺は元に戻ろうとする彼の手を追うように腕をのばし、手首を掴む。
「なっなんだよ!」
彼の顔が一気に赤く染る。
「ふはっ、いや、その、ね?」
「は?!なんだよ!」
明らかに挙動不審になるので面白くてたまらない。
そんなスマイルに、俺はゆっくり顔を近づける。
近づけながら彼の肩を持ち、目を見てにっこり微笑むと、次の瞬間、むぎゅっとスマイルの手のひらに俺の口を塞がれた。
「お前、な、なにしようとしてるんだよ!」
「…んんー、んーんんー。」
塞がれていて何も喋れない。
「一旦俺から離れろ!離れたら離してやるから。」
残念、と落ち込む素振りを見せて、彼から離れていく。
離れたら、すぐに手を俺の口の上からどけてくれた。
「…ふぅー。えー、やっぱり駄目?」
「駄目とかじゃねぇけど、いや、駄目だけど、なんで何も言わずにやろうとするんだよ!」
彼は真っ赤になって大声を張り上げる。
「じゃあ、今からします。やっていい?」
「そういうことじゃねぇんだよ!いや、その…。」
そこには沈黙が広がる。
「ああもう、わかったよ。いいよ、諦めるよ。早く駅に向かおう。」
「…うん。」
彼は安心したような声を出す。
その後は普通のたわいもない世間話をしながら駅に向かった。
ただ、俺はこのようなことで諦めるような人間では無い。もう駅に着いてお別れというころ、スマイルは落ち着いて、さっきの出来事はもう忘れているような様子だった。俺は、先程のような時間をかけず、すぐに彼に顔を近づける。
ちゅっ
唇と唇が触れ合う。一瞬。
「…っ。」
彼の目はまん丸になって、唇に自分の手の甲を押さえつけた。
「ごめん、我慢できなかった。」
「…。」
「じゃあ、今日はバイバイ、またね?」
「…。」
放心状態な彼を置いて、駅の改札を通り、プラットホームに降りていく。彼とは家が反対方向なのでホームが違う。さすがにやり過ぎてしまったか、と反省しながら、あのときの彼の顔を思い出してにやけてくる。はぁー、もっと触れたいなぁ。