僕の人生の中で初めて会うような人は、にこやかに笑ってこう言った。
「 」
「原田ー。今日遊びに行こうぜ!」
「あー、ごめん。今日バイトだ。」
僕の名前は原田日秋。ただのしがない大学生だ。
広島から上京して、一人暮らしをしながら大学へと通っている。
一人暮らしをするとなると、圧倒的にお金が必要になる。実家からの仕送りはあるが、家賃などを払えばすぐに無くなってしまう。
そこで始めたのが、アルバイトだ。
街のはずれの方の居酒屋で、家から近いのとまかないが出るのに惹かれて決めた。
こじんまりとしているのだが、客は多く、隠れた名店というやつだろう。
その店で、初めて出会うような人が来たのは、数ヶ月前の話だ。
その日は、いつもに比べて来る人が少なかった気がする。
僕も、暇していた。
「ここってやってるん?」
扉を開けて入ってきた人は、明らかに一般人とは思えなかった。
黒いスーツで体を包み、手首には高そうな腕時計。髪はオールバックで、使われているであろうワックスが香ってきた。
呆然としていた僕を見て、男のツボに入ったのか、何かに刺さったのか分からないが、にこやかに笑ってこう言った。
「君、名前は?」
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