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「え…」
急に話しかけられて、戸惑いが隠せず、言葉を失っていた。
そんな姿が、男にもっと刺さったのだろう。笑う口元を抑えながら、また聞いた。
「お兄さん、お名前は?」
「は、原田日秋です。日にちの日に秋でひあき。」
「原田日秋くんね。日秋くん、ここ最近働き出したばっかやろ 」
男が言うには、自分はここの常連らしく、店員の大体と顔見知りで、新人はすぐに分かるらしい。
自信ありげにそう言う男は、明るく陽気に見えるが、目の奥が笑って いるところは見えなかった。
「…お兄さんのお名前は?」
「お兄さん?お兄さんなんて言われる歳やないよ。俺はな、染木桜や。えっと、これ。渡しとくわ」
そう言って渡されたのはヤクザの名刺。
『夜火組 若頭 染木桜』 としっかり書かれている。
「桜って書いておうって読む。変な名前よな。しかも、全部に木の文字が入ってるねんで。覚えやすいやろ。」
「染木、桜さん。案外可愛い名前なんですね…。覚えときます。常連さんらしいので」
「覚えといてくれると嬉しいわ 」
そう言うと、染木桜はにこやかに笑った。
だがやはり、目の奥は笑ってはいなかった。