処女なのに妊娠しました 第2話 -ふくらむお腹-
2話
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2022年01月01日
新しい家に引っ越した中2の優香は、ひどい腹痛に悩まされていた。もしかして妊娠している?でもあり得ない。なぜなら優香は処女だったからだ。しかし得体の知れない『何か』が、お腹の中でどんどん大きくなっていく──。
妊娠2ヶ月。
ちょうど、新しい家に越した日に妊娠した?
あり得ない。
あり得るはずがない。
私は処女だし、まだ健人とキスしかしたことがないのに!
これはなにかの間違いだ。
そう、ただの間違いなんだ…。
*****
しかし、つわりの症状はおさまらない。
白米の匂いを嗅ぐと、必ず吐き気がした。
眠れない日が多く、食欲もなく、体重が減っていく。
かといって健人や両親に相談するわけにもいかず…。
「ここ、いいよね」
そう言って、桐子が学校の屋上に現れた。
ちょうど相談したいと思っていたんだ。
仲の良い女子も居るけど、やっぱりこんなデリケートな話はできない。
でも不思議と、桐子には打ち明けることができる。
「そう、妊娠2ヶ月…」
「でも絶対にそんなのおかしいの。妊娠なんてするはずないから」
「もしかしたら、想像妊娠とか?」
「想像妊娠?」
「彼氏のことが好きすぎて、彼氏の子どもが欲しいって心が願ってるのかも」
「そんなこと…」
確かに、私は健人のことが好きだ。
好きだけど、だからって妊娠の症状が出るのだろうか?
「実は私も…分かるんだ」
「えっ?」
「私も、妊娠したことがあるから」
桐子が力なく微笑み、顔を伏せた。
「本当に?」と問いかけてみたけど、桐子は妊娠についてよく知っている。
「うん、だから優香の気持ちが凄く分かるの」
「桐子…」
「不安だよね?私もずっと不安で、誰にも相談できなくて辛かった」
「それで、どうしたの?その…」
そこまで言うと、桐子が首を振った。
それだけで、私はすべてを悟ったんだ。
「私は優香の力になりたい。きっと勘違いだよ」
「ありがとう、桐子」
「セカンドオピニオンてあるじゃない?違う病院に行ってみたら?」
「そうだね、そうしてみる」
なんだか力が湧いてきた。
少ししたら笑い話になるだろう。
この時の私は、そう思っていたんだ──。
*****
「生理が遅れてて…」
この間と同じ理由で、検査をしてもらうことにした。
『妊娠はしていませんよ』と告げられるはずだ。
妊娠2ヶ月なんて、ヤブ医者だったに違いない。
桐子も言ってたじゃないか。
想像妊娠の可能性があるって。
それくらい、私は健人のことが好きだという──。
「妊娠5ヶ月ね」
担当の女医の言葉に、我にかえる。
えっ、今なんて…?
「22週を越えてるわ」
「22週?」
馬鹿みたいに聞き返す。
この人は一体、なにを言っているのだろう?
「もう中絶はできない」
「うそっ…」
「22週以降は母体にかかる負担が大きくて──」
女医の言葉が通り抜けていく。
そんなこと、あり得ない。
私は処女だ。
それに…ついこないだは『妊娠2ヶ月』と言っていた。
それなのに、数日で『妊娠5ヶ月』なんて…。
一体なにが起きてるの?
「すぐに保護者の方に連絡を──」
「や、やめて!」
私は診察室から飛び出した。
あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!
全速力で駆ける私は、込み上げてくる衝撃に立ち止まる。
「お、お腹がっ…」
激しく震える手で、お腹に触れると──。
トンっ。
『何か』が、お腹を蹴ったんだ。
内側から…。
「ひぃっ!」
腰を抜かしてその場に崩れ落ちる。
感じる。
得体の知れない『もの』がそこに──私のお腹に宿っているのを感じる。
恐る恐る、セーターをめくりシャツをたくし上げた。
「そんなっ…」
お腹が膨らんでいるのは、見間違いか?
いや、明らかに大きくなってる!
まるで、妊娠しているようにポッコリと膨らんでいる!
その時、また聞こえたんだ。
トンっ。
その音は、体の奥から聞こえてきた。
そして音がすると同時に、私のお腹が揺れたのはどうして?
このお腹には一体、何が?
何がいるの!?