テラーノベル
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「 …… 悪 い 。 待 っ た か 」
冬休み初日。駅前の大きなクリスマスツリーの前で、轟くんは少し息を切らして現れた。
私服の彼は、いつもより少し幼く見える。厚手のダッフルコートに、首元にはお姉さんの冬美さんが選んだらしい、落ち着いた青色のマフラー。
「 全 然 ! 私 も 今 着 た と こ ろ だ よ 」
「 そ う か 。 … … お 前 、 そ の 、 寒 く な い か 。 顔 が 赤 い ぞ 」
「 そ れ は 、 外 が 寒 い か ら だ よ 」
……本当は、彼と「 ク リ ス マ ス に 二 人 き り で お 出 か け 」という状況に、心臓がずっとうるさいせいなんだけど。
私たちが今日ここに来た理由は、お互いの課題で使う参考書を買うため、ということになっている。でも、世間はクリスマス一色。周りを見渡せば、どう見ても「 デ ー ト 」をしているカップルばかりだ。
「 …… 行 く か 。 ま ず は 本 屋 だ っ た な 」
彼はそう言って歩き出した。でも、いつもの訓練の時よりずっと歩幅が狭いのは、私に合わせてくれているからなんだろうな、と思うと、胸がキュンとする。
大型書店の専門書コーナーは、ひっそりと静まり返っていた。
二人並んで棚を眺める。
「 こ れ 、 相 澤 先 生 が 言 っ て た や つ か な 」
「 あ あ 。 …… だ が 、 こ っ ち の 方 が 応 用 が 効 き そ う だ 」
彼が手を伸ばしたのと、私が同じ本に触れようとしたのは同時だった。
本の上で、私の指先が彼の右手に触れる。
「 あ …… ご め ん ! 」
「 …… い や 。 俺 も 、 悪 か っ た 」
轟くんはパッと手を引いたけれど、その瞬間、彼の右側からひんやりとした冷気がわずかに漏れたのがわかった。驚くと「 個 性 」が漏れてしまう、彼の癖だ。
「 轟 く ん 、 も し か し て …… 緊 張 し て る ? 」
「 …… し て な い 。 …… い や 、 少 し 、 し て い る か も し れ な い 」
彼は本棚をじっと見つめたまま、正直に認めた。
「 お 前 と い る と 、 そ の 、 ど う い う 顔 を す れ ば い い の か 分 か ら な く な る 時 が あ る 。 …… 嫌 じ ゃ な い ん だ が 、 不 思 議 な 感 覚 だ 」
そんなこと、無自覚に言わないでほしい。
期待してしまいそうになる気持ちを抑えて、私は「 私 も だ よ 」と小さく返した。
本を買い終えて外に出ると、街はすっかり暗くなり、イルミネーションが点灯していた。
街路樹を彩るシャンパンゴールドの光が、焦凍くんのオッドアイに反射してキラキラと輝いている。
「 綺 麗 だ …… 」
彼がぽつりと呟く。
「 …… な あ 。 せ っ か く だ し 、 あ っ ち の 方 も 歩 い て み る か 。 ま だ 、 寮 の 門 限 ま で は 時 間 が あ る 」
「 い い の ? 轟 く ん 、 人 混 み 苦 手 じ ゃ な い ? 」
「 お 前 と 一 緒 な ら 、 あ ま り 気 に な ら な い 」
その言葉に、また体温が上がる。
歩道はさっきよりも混雑していて、すれ違う人に肩をぶつけそうになったその時、焦凍くんの手が私の腕をそっと引いた。
「 …… は ぐ れ る な よ 」
そのまま、彼は私の手首を優しく掴んだ。手袋越しだけど、彼の手のひらの大きさと、そこから伝わってくる確かな温度が、心臓に直撃する。
手首から、ゆっくりと、指先へ。
彼の手が迷うように動いて、最後には、私の手を包み込むように握った。
「 轟 く ん …… ? 」
「 …… こ っ ち の 方 が 、 確 実 だ 。 …… 嫌 か ? 」
彼は前を向いたまま、耳まで真っ赤にして言った。
繋いだ手は、彼の左側。熱を出す方の手。
じわじわと伝わってくる心地いい熱が、冬の冷たい空気を溶かしていく。
公園のベンチで、自動販売機で買ったココアを二人で飲む。
まだ「付き合おう」なんて言葉は交わしていない。名前のない、あやふやな関係。
でも、繋いだ手の温もりだけが、今の私たちにとっての唯一の答えみたいに感じられた。
「 あ 、 雪 …… 」
空から、小さな白い粒が落ちてきた。
街灯に照らされて、ゆっくりと落ちてくる初雪。
「 轟 く ん 、 初 雪 だ よ ! 」
「 あ あ 。 …… 綺 麗 だ な 」
「 最 高 の ホ ワ イ ト ク リ ス マ ス だ ね 」
彼は雪を見ている私を、とても優しい目で見つめていた。
その瞳に映る自分が、あまりにも幸せそうな顔をしていて、私は急に恥ずかしくなる。
「 …… ね え 、 轟 く ん 。 今 日 、 誘 っ て く れ て あ り が と う 」
「 俺 の 方 こ そ 、 来 て く れ て 嬉 し か っ た 」
彼は少しだけ、私の手に力を込めた。
「 …… 来 年 も 、 ま た 。 こ う し て 雪 を 見 れ た ら い い な 」
それは、不器用な彼なりの、精一杯の約束だったんだと思う。
「 来 年 」という言葉に込められた意味を考えて、私は彼の肩に、ほんの少しだけ頭を預けた。
雪はまだ降り始めたばかり。
私たちの関係も、まだ始まったばかり。
でも、この雪が地面に積もるよりもずっと早く、私の心には「 恋 」という名前の想いが、ふかふかと降り積もっていた。
「 …… う ん 、 来 年 も 、 絶 対 だ よ 」
白く染まっていく世界の中で、私たちの手の熱だけが、いつまでも消えずに残っていた。
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これは〝るなコン〟で感動部門🥇,🥉を取った、〝んりたサン〟が依頼してくれたものです 😉
クリスマスをモチーフと言われていたからクリスマスに投稿したい ❕ けど書いてねぇ ❕ 状態での投稿です
余裕を持って執筆&投稿を心がけます… 😿
期待に応えられてない部分やここ直してほしい等あったら教えてください爆速で治します 💪🏻🪄
それではよいクリスマスを☃️
🎄.𝑀𝑒𝑟𝑟𝑦 𝐶ℎ𝑟𝑖𝑠𝑡𝑚𝑎𝑠𓂃 𓈒𓏸
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コメント
2件
やあああああああああもう完璧ですよ!!???🥹🥹想像してたのと超超超超超超同じ!!!🙈💖るなちゃんまじで言葉選び最高すぎね🫵🏻💫雰囲気とかクリスマスにピッタリすぎてやばい🎄🎄もうほんとに尊敬します💝 轟くんの不器用さが全人類を沼らせるよね😭🩷直すところなんか1個も無いよ‼️素敵な作品をほんとにありがとう🥲∗*゚