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もう10年以上前のこと
私とあいつは中学からの同級生だった。
いつも遊ぶ6人グループの一人同士だった。
私はその6人で過ごす休日や、登下校の時間が生き甲斐だった。
「今日はあいつら遅いんだね。」
私が言う。
「いつもの事じゃない?また部活終わりにわたゃわちゃしてるんでしょ。」
グループのひとりである友紀(ゆうき)が呆れながら言う。
「まさか、女じゃない!女!」
と、言うのはまたグループの1人である千紗(ちさ)だ。この子は私の幼稚園からの幼なじみで、私の半身に近い子だ。どうも昔から人の貞操に探りを入れがちだが、屈託のない性格は私をいつも勇気づける。
数分後いつもの集合場所に3人がやってきた
メガネで秀才、だが、天然で、はっちゃけた部分もある英司(えいじ)。少し太っていて、包容力がある和(かず)。そしてあいつ。慎二(しんじ)の3人だ。その日もいつも通り集合して、いつも通りの道をいつも通りの立ち位置で帰った。
特に何も無い。何も変わらない日だった。
そのはずだった。
夜だった。
その当時私はまだ携帯電話が許されていなかった。
「千代(ちよ)、慎二くんから電話ー。」
「はーぁい。」
私は自分の部屋から出て、電話の前まで行き、母から受話器を受け取る。
(慎二から電話なんて初めてじゃないかな。)
女子同士はよく電話をしていたが、男子からはほとんど来ないので、少し緊張した。
「か、かわりました。どうしたの?明日遊ぶとか?」
少しの沈黙…
「え?なに?聞こえてる?慎二ー」
「千紗が、事故にあったって。ガソスタの前で車に轢かれて緊急搬送されたって。」
「は…?」
親友が死んだ。突然すぎた。あまりにも突然で、けど、理解はすぐにできてしまった。
私は半身を失った気持ちになった。いや、実際に失った。全身打撲だらけで、千紗なのか、違う人間ですと言われても違和感のないような無惨な遺体。数日の間にあの屈託のない、私の太陽だった笑みは、灰になって土に還った。
私の半身を犠牲にして、私たちのグループは5人になった。