テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#アメソ
すみっこの文字
20
𝕆𝕜𝕠𝕞𝕖🍙
276
冷たい風が窓を鳴らしていた。
会議室には二人だけ。
机を挟み、互いに椅子へ深く腰掛ける。
「また会ったな。」
アメリカが肩をすくめる。
「会いたくて来たわけじゃない。」
ソ連は書類から目も上げない。
いつものやり取りだった。
皮肉を言い、睨み合い、交渉は平行線。
世界中が「また始まった」と呆れるほど、それが二人の日常だった。
だが、不思議と二人は相手のことを誰より知っていた。
ソ連が眠れていない日は、アメリカには分かる。
アメリカが無理をして笑っている日は、ソ連には分かる。
だからこそ、余計なことは聞かなかった。
敵だから。
それ以上でも、それ以下でもない。
⸻
ある冬の日。
「……顔色悪いぞ。」
アメリカが珍しく真面目な声を出した。
「気のせいだ。」
「嘘つけ。」
「放っておけ。」
短い返事。
それだけで会話は終わる。
だが、帰り際。
アメリカは自販機の前で缶コーヒーを一本買い、ソ連の机に無言で置いた。
「……いらん。」
「じゃあ捨てろ。」
そう言って去っていく。
ソ連はしばらく缶を見つめたあと、小さくため息をつき、まだ温かい缶を手に取った。
「……馬鹿が。」
その声は誰にも届かなかった。
⸻
年月が流れる。
世界は少しずつ変わり始める。
ソ連は疲れていた。
外からではない。
内側から、静かに崩れていく。
それでも彼は背筋を伸ばして歩いた。
誰にも弱音を吐かない。
ましてや、アメリカになど。
⸻
「最近、来る回数減ったな。」
ある日、アメリカがぽつりと言う。
「忙しい。」
「そういう顔じゃねぇ。」
「……。」
沈黙。
アメリカは机に肘をついた。
「何があった。」
「聞くな。」
「聞く。」
「敵に話すことじゃない。」
その一言で終わった。
アメリカは何も返せなかった。
コメント
1件
うわあ、これいいですね。冷戦期のアメリカとソ連を人間関係として描くアプローチ、すごく惹かれました。あの缶コーヒーのやり取り――「じゃあ捨てろ」って言いながら無言で置くのがもう、敵同士だからこそ出せる距離感と気遣いの絶妙さ。最後の「何も返せなかった」で終わる余白も効いてます。二人が「敵だから」と自覚しながらも、互いを誰より知っている皮肉な構造が、この短い場面でしっかり立ってる。次、どう転ぶか気になる。