テラーノベル
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らだおくんとの番に失敗したから、人間の番方を参考にするために人の暮らす場所に降りてきたはいいものの……
「ハエェ…ヒェェ……」
山の下にはもっとたくさんの人間が住んでいるとは聞いていたけど、まさかこんなに多いとは…目が回りそう。
大通りを歩く人間は皆らだおくんのように和装をしてるから、たった一人和装じゃない俺はひどく目立ってしまったから、ついさっき慌てて裏通りに逃げ込んだ。
「…あぁん!」
人間の声に肩を竦めて物陰に身を潜めると、声がだんだんと大きくなって、気持ちの悪い吐息が混ざり始めた。
「…?」
そろりと物陰から顔を覗かせる。
ほんのちょっとした興味というか、好奇心。
変な声の人間がいたから、何をしてるのかって思っただけ。
「……ヴェッ!?!?」
魔竜と同じように腹をピッタリとくっつけている人間のオスとメス。
魔竜との違いといえば、激しく動いていることと、女が真っ赤なだらしのない顔で笑っていることくらいだった。
「…ェ、ア……」
もしらだおくんと番になるなら、メスに変身出来ないらだおくんのために、俺がメスにならないといけない。
つまり?
俺は人間のメスの立場になるって事……?
ふわんっ、と脳内に立場が置き換わった瞬間に火に顔を近づけた時のように熱くなった。
「ヘ、ェ…ゥ…ア、エ……」
俺は慌ててその場から飛び出した。
人目なんて気にしていられないけど、ザワザワとあたりが賑やかになるとさすがに気まずかった。
何度も頭の中にあの人間の番の顔が浮かんでは消えていく。
あんなヘンな顔をしてしまうものだっけ?
魔竜の番達はどんな顔をしてたっけ?
「あ、みどりおかえりー」
「…」
乱れた呼吸を整えて、らだおくんの声に視線をあげる。「タダイマ、ラダオクン」そう言う予定だったのに、何故か顔が見れない。
「みどり?顔赤いけど…変な風邪でも貰ってきたのかな……」
「ダイ、ジョウ…ブ」
「えー?あんま良くないよー、体温計がこっちに……あれ…んー、無いわ」
らだおくんがブツブツ言っている間にも、あの光景が離れてくれない。
何と言うか、何と言うのか……衝撃的?
「ちょっと失礼」
「!?!?」
らだおくんの手が頬にぺたりと当てられる。いつもは暖かいと思う手が、今ばっかりは冷たく感じた。
「えぇ、全然あついじゃん…」
困った声にヒョイと抱えられて、らだおくんからしたら俺がまだ子供で、守る対象にあるのだという事を感じた。
……番、は…もう少し後でもいいや。
その…俺が、らだおくんよりもっと大きくかっこいい成体になるまで。
ー ー ー ー ー
next?→200♡
コメント
2件
え、きゃわ