テラーノベル
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研究所――
深夜
実験室の明かりだけが残っていた。
涼架はベッドに腰掛けていた。
拘束は解かれている。
逃げられないと判断されたからだ。
壁は特殊合金。
扉は二重ロック。
監視カメラ。
多数の特殊武装した警備員。
完全な監獄だった。
「……モトキ」
小さく名前を呼ぶ。
返事はない。
当然だ。
でも呼びたくなった。
今までずっと一緒だったから。
少し離れただけなのに。
妙に静かだった。
その時。
カチャリ。
扉が開く。
涼架は顔を上げる。
入ってきたのは、あの女性研究員だった。
山でモトキ達に地図を渡した人物。
「……綾香さん…」
「名前、覚えてたんですね」
女性は辺りを確認してから小声で言う。
「時間がありません」
涼架が立ち上がる。
「モトキ達は」
「来ています」
その言葉に少しだけ安心する。
だが次の言葉で表情が変わった。
「でも間に合わないかもしれません」
女性は唇を噛んだ。
「次の段階が始まります」
涼架は目を伏せる。
やっぱり。
もう時間がない。
女性は震える声で続けた。
「榊はあなたを兵器にするつもりです」
「知ってるよ」
「洗脳も」
その言葉で空気が変わる。
涼架の目が鋭くなる。
「……どんなやつ」
女性が静かに答える。
「記憶を書き換える計画です」
涼架は何も言わなかった。
言えなかった。
それだけは嫌だった。
獣人になることより。
苦しむことより。
モトキ達を忘れることの方が。
ずっと怖かった。
女性はポケットから小さな端末を取り出す。
「これを」
「?」
「隠してください」
涼架が受け取る。
古いデータチップだった。
「何これ」
女性は答えた。
「あなたの研究データです」
涼架の瞳が見開く。
「消したはずじゃ」
「全部じゃありません」
女性は苦しそうに笑う。
「あなたが消した後、私が少しだけ残しました」
「なんで」
「いつか誰かを救えるかもしれないと思ったから」
静かな声。
「でも今は違います」
女性は真っ直ぐ見た。
「あなたを救うために使ってください」
足音が聞こえる。
警備だ。
女性は慌てて扉へ向かった。
最後に振り返る。
「絶対に諦めないで」
そして消えた。
部屋には再び静寂だけが残る。
涼架は手の中のチップを見る。
小さい。
でも重い。
そして。
ふと笑った。
「……オレらしいなぁ」
こんな状況でも。
誰かが希望を残していた。
⸻
同じ頃。
研究所近くの森。
モトキ達はついに研究所を視認していた。
巨大な壁。
監視塔。
そこから伸びるサーチライト。
ヒロトが呟く。
「でかい」
モトキの表情は険しい。
レイはじっと施設を見ていた。
すると突然。
胸を押さえる。
『……っ』
「レイ?」
ヒロトが振り返る。
レイは苦しそうな顔をした。
『りょうか』
モトキの耳が動く。
「どうした」
レイは施設を見つめたまま言う。
『こわい』
その一言に。
二人は固まる。
レイが怖がるのは珍しい。
『へんな感じ』
赤い目が揺れる。
『りょうかが……』
言葉に詰まる。
『きえていく』
空気が凍った。
モトキの心臓が嫌な音を立てる。
洗脳。
記憶改変。
その可能性が頭をよぎる。
「……待ってろ」
拳を握る。
狼耳が立つ。
「絶対助けるから」
その時だった。
研究所の最上階。
大きなモニターの前で。
榊が静かに笑った。
モニターには涼架が映っている。
そして。
新しい実験計画書。
《フェーズ2 人格再構築》
榊は満足そうに呟いた。
「もう少しだ」
窓の外では、 月が雲に隠れようとしている。
戦いの始まりは、 もうすぐそこまで来ていた。
ひかまりん
9
🍏💕
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#ほんにんさまかんけいない
コメント
1件
うわぁぁぁぁ第16話読みました…!!😭💦💦 涼架が「モトキを忘れる方がずっと怖い」って思うところ、胸がギュッてなったよ…もうずっと一緒にいたからこその恐怖なんだね。レイが『きえていく』って震えるのもヤバすぎて、読んでてこっちまで息止まっちゃった。 そんな中で綾香さんがこっそりデータチップ残しててくれてるの、マジで神キャラすぎるし涼架が『オレらしいなぁ』って笑うシーンにもうダメだよ…強がってるけどちゃんと希望掴んでるのが泣ける。 榊の計画もヤバいし、絶対負けないでほしい!!次回が待ち遠しいよー!!🔥🌸