テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
______月曜日。
ただでさえ週初めというだけで憂鬱なのに、連日続く雨と湿気がさらに気持ちを沈ませる。
制服の襟はじっとりと肌に張りつき、靴下も朝から乾ききっていない。
足止めを食らった形で、国見は仕方なく教室に残り、窓の外を無感情に眺めていた。
今日は部活がオフで、早く帰れる日。
____なのに、よりによって超のつく大雨。
校舎の窓を打ちつける雨粒は、弱まる気配どころかますます勢いを増しているように見えた。
校門を行き交う生徒たちも、みんな顔をしかめていて、傘を差すのを諦めて濡れる覚悟を決めている者もちらほら。
「……めんど。」
帰るのを少しだけ延ばそう。
そう思って、国見英はひとり教室に残り、窓の外をぼんやりと眺めていた。
雨粒が流れ落ちるガラスは曇り、外の景色を滲ませる。
信号機の赤や、濡れたアスファルトの鈍い光がぼやけて広がるのを、ただ目で追う。
特に意味もなく、ただ暇つぶしに。
(こういうとき、無駄に動いたってろくなことないし。雨弱まるまで待ったほうがいいでしょ)
そんな風に、どこかで自分に言い訳するようにして、国見は机に肘を突いた。
湿気で少し重くなった髪が額にかかるのを、気にも留めない。
教室は放課後特有の静けさに包まれていて、カーテンの隙間から流れ込む湿った風が、生ぬるく頬を撫でていく。
「……暑っつ」
ぼそっと独り言を落とした瞬間、教室の扉がガラッと開いた。
「はぁ〜〜〜まぢさいあく〜〜!!!」
大きな声とともに入ってきたのは、隣の席の🌸だった。
濡れた髪をタオルで雑に拭きながら、わざとらしいくらい大きなため息をついている。
国見は眉をひそめ、わずかに目線だけ動かした。
「……。」
🌸はいつだって賑やかで、空気を読むというよりはかき回すような存在。
国見にとっては少し苦手なタイプで、静かにしていたい時間に限って隣で騒いでくる。
けれど、不思議と完全に無視できないのも事実だった。
「あれ、国見じゃん〜〜なにしてんの〜?」
屈託のない笑顔でこちらに歩いてきた🌸は、当然のように隣の席に腰を下ろす。
机に肘をついて、まるで休み時間の延長みたいな調子で話しかけてきた。
「帰らないの?雨やばいから?」
国見は視線を窓の外に戻したまま、面倒くさそうに口を開く。
「今帰ったら傘さしても濡れるし」
それ以上、話を広げる気はない。
その声は、低く、眠たげで、それでいてちゃんとこちらを向いている。
言葉の量は少ないけれど、その端々に含まれるものを読み取るのがなんだか少し楽しい。
🌸は机をトントン叩きながら続けた。
「だよね〜〜!あたしも外出た瞬間ビショビショになって『あ、無理だこれ~』っておもって戻ってきた!靴もぐちゃぐちゃだし〜。ほんと梅雨とか誰得なんだろね!」
「……植物にはいいんじゃない?」
国見はぼそっと返す。
そっけない態度なのに、🌸は「え〜〜なにそれ冷た〜」と笑って、まったく堪える気配がなかった。
国見の無気力そうに見えるその横顔は、よく観察するとどこか滑稽なほど細やかな動きをしている。
「帰りどーすんの?」
🌸の無邪気な質問に、国見は目の端で🌸をちら、と見てからまた窓の方へ視線を戻した。
窓の雨粒が小さく崩れて、遠くの自動車のライトがぼやけている。
「待つ。」
その一語は短く、どこか無表情に聞こえる。
でも国見の言う「待つ」は、ただ天気が弱くなるのを待つという意味だけじゃない気がした。
無理に動かないことを選んでいる、という意味の静かな決意に似ている。
🌸はそんな国見の返事に意外そうな顔をした。
彼女はくすくす笑って、国見の肩を軽くはたく。
「じゃー、あたしも待とっと!」
🌸の提案はいつだって明るくて、強引だ。
国見は少しだけ視線を下げ、手元の教科書の角を指でつまんでいる。
雨粒がガラスを叩く音が一段と強まる。
国見は溜め息をつきながらも、隣で飽きもせずしゃべり続ける🌸を横目で見た。
湿気で少しうねった髪をかき上げながら笑い飛ばすその表情は、じめじめした空気とは正反対に明るい。
(……うるさいけど。まあ、退屈はしないか)
国見は心の中で中学校時代の🌸と今の🌸の姿を重ねながら、また視線を窓の外にうつした。
はじめまして、作者のかさです。
テラーノベルはじめてなんで使い方わかりません。あってるんかこれ。
夢主の設定どうやってやるんや。