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すべての始まりは、数年前だった。
―――
「小塚先輩、ちょっといいですか?」
「どうした?川瀬なんか顔色悪いぞ?」
「これ……見て貰えますか」
スマホを見せられた。
「この前、たまたま部長のデスクで見てしまって……写真撮っておいたんですよ」
スマホにはPDFの画面が写っていた。
そこにはこう書かれていた。
―――
【機密資料】
新商品:ベビーモニター『AngelEye』
安全試験結果
結果:電磁波基準値を大幅に超過
乳幼児への長期使用で神経伝達への影響の可能性あり
※販売継続のためデータ修正予定
※本資料は役員共有
―――
川瀬は震えた声で言った。
「先輩、これ……本当なんですか?」
俺は何も言えなかった。
そこに写っていたのは
紛れもなく、うちの会社の内部資料だった。
「これ、うちが力を入れて販促して……
既に市場に出回っている、赤ちゃん向けの商品ですよね……」
―――
川瀬には姉がいた。
その姉に子供が生まれた時、
彼はこの商品をプレゼントしていた。
だから、彼は会社の不正が許せなかった。
彼は内部告発をした。
だが会社は、彼の声を握りつぶした。
――機密保持違反
――社内規定違反
そんな言いがかりのような罪を押し付けられ
地方への左遷が内示された。
真っ直ぐで、誰よりも思いやりがあった。
誰よりも仕事に誇りを持っていた後輩だった。
その川瀬が――
自分が姉の子供に危険なものを送ってしまったことも含め
精神的に追い詰められた。
そして彼は、
あまりにも愚かな選択をしてしまった。
葬儀の帰りだった。
守れなかった後輩を思いながら、
俺は酒を飲んだ。
そしてその夜、
今まで一度も足を踏み入れたことがない風俗に入った。
あの日、翔音と出会った。
俺は、自分の人生をかけて会社に復讐をしたいと思っていた。
そして、翔音もまた
壊された人生の復讐に囚われていた。
同時に
俺は、翔音の優しさと、瞳の奥の暗さに魅了された。
彼女の狂わされた人生
俺の消せない怒り
俺たちは、出逢いそのものが運命だと信じた。
そして、計画は始まった。