テラーノベル
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この世のどこか
大きなふねで海をわたっても
ひこうせんでそらをはばたいても
辿りつけそうにないことろ。
でも、ふっとおててのばせば
ぎゅっとにぎることができそうなばしょ。
そこにはふしぎな国があります。
その国ではむらさきいろの瞳をした民が
まほうで食べものをつくって
くらしています。
そして国のまんなかには
それはそれは美しいおしろがたっていて、
それはそれは美しい翡翠の瞳をもつ
おひめさまくらしているのです。
そのおひめさまにはいつもいっしょにいる
ふかい藍色の瞳の騎士さまがいて、
ふたりはとってもなかよし。
このまちではたまにおおきな嵐が きたり、
けんかがおこったりするけれど
おひめさまはいつもにこにこしています。
おひめさまになにがあっても
とってもつよい
騎士さまがまもってくれるからです。
太陽が隠れ、
お月様が辺りを優しく 照らしはじめたころ、
「おしまい」
看護師さんの優しい声が部屋に響き渡り、
物語の終わりを 告げました。
「えー、もうおわり?もういっかい! 」
病室のベッドに寝転がり、お話を聞いていた
3歳ほどの小さな男の子が残念そうに頬を膨らませ、「もう1回」とおねだりしていました。
「えー、もう一回?もう3回も読んでるよ 」
「それにおやすみの時間だよ、 もっくん」
看護師さんは
納得いかない表情を浮かべる男の子
___元貴を優しく諭します。
「ううん、まだおねんねの時間じゃないよ」
「だってぼく、
ぜんぜんねむたくないもん…」
しかし、
元貴はまだ納得していないようです。
もう一回読んでほしい、
と駄々をこね続けていました。
そんな元貴に看護師さんはこう続けます。
「ほら、お外を見てごらん
もうおひさまがおやすみして
お月様がでてるよ。
だからもっくんもおやすみしよ?」
「むう……」
看護師さんはそれでも不満気な元貴の
耳元でこう囁きました。
「明日、
ひろとくんが来てくれるんでしょう?」
「もっくんがげんきもりもりだったら
ひろとくん、すごく嬉しいんじゃない
かな」
「ひろと」という名前を聞いた瞬間、
それまでくもっていた元貴の表情が
パッと輝きました。
看護師さんはその変化を見逃しません。
さらに耳元で囁き続けます。
「きっと
はやくおねんねすれば、明日のもっくんは
元気いっぱいだよ!」
その言葉に元貴はゆっくりと顔を上げ、
「ほんと……?
ほんとにひろとよろこぶかなあ?」
と、希望の眼差しを向けます。
「もちろん!だってひろとくん
もっくんのこと大好きっていってたよ。
大好きな人が元気いっぱいだったら、
すごくうれしいよ」
“だいすき”その言葉に心惹かれたのか、
元貴は満足気に笑って
「ぼくもひろとのことだいすきだよ!
ひろとがうれしいなら、 ぼくおねんねする!
おやすみなさい、りょうか先生」
と、
夢の中へと深い眠りに落ちていきました。
「おやすみ、元貴」
涼架はそう呟くと、
ゆっくりと病室を後にしました。
84
り う .
103
はるん
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コメント
1件
あおいです🌷 読ませていただきました。まず、冒頭のおとぎ話のような世界観にぐっと引き込まれました。紫の瞳の民、翡翠の瞳のお姫さま、藍色の瞳の騎士——色彩の美しさが童話のページをめくるみたいで、すごく好きです。 そして後半、現実の病室に切り替わる瞬間の「おしまい」という看護師さんの声。あの緩やかな転調が、まるで読者であるこちらも絵本を読んでもらっていたかのような気持ちにさせてくれました。 3歳の元貴くんが「ひろと」の名前を聞いてパッと表情を輝かせる場面、本当に愛おしかったです。大好きな人のために「おねんねする」って言えるの、尊すぎます。涼架先生の優しい語りかけも、子どもへのまなざしが温かくて、読んでいてじんわりしました。 第1話、とても優しい世界に浸れました。続きが気になりますね。