今日は8月12日 カレンダーアプリを開くとそこには太文字で小林さんと遊ぶとだけ書いてあった
〜第6章〜
この間まで楽しみにしていた小林さんと共に過ごす時間が遥斗の一言で一気に気まづくなった
恋愛とは無縁の人生だよなって笑って言い合ってきた仲だったから尚更心にくるものがある…もうかれこれ2時間ぐらい考え込んでいる
もし小林さんといるところを遥斗に見られたらそれこそ絶縁されるかもしれない いや、そこまでじゃないか…
ピロン
スマホの通知音が落ち込んだ部屋に響き渡る 見てみると【今日はちょっとだけ遠いところに行くよ!】とつむぎと書かれた名前から送られてきた
それに僕はわかったとだけ送ってスマホを閉じる
時計の針は9時を指していた 集合までまだ3時間程あるな…せっかくだし小説でも読むか
そう思って妹の部屋から小説を取り出す といっても恋愛系しかないから読んでいてもあまり感情移入しない
「あいつ新しい小説また買ってきたのか…まぁいい暇つぶしになるからいっか」
そんなことを考えながらペラペラとページをめくっていく 慣れない手の感覚に最初は抵抗してたけど今は少しだけ小説に興味を持つぐらいには好きになった 恋愛系は苦手だけど…
「あれ…この小説…」
たまたま手に取った小説の内容が好きな人を取り合う…僕の状況と少し似てる内容だった
「好きな子の取り合い…結果は結局主人公が付き合うのが当たり前だよな…」
なんて思いながら違う物語も読んでみる そうしていると3時なんてあっという間だった
「やばいやばい準備してない…」
急いで家から飛び出て集合場所の駅前に着いた 夏だから滝のような汗はかくし、息切れしやすいから咳は止まらないしで最悪だった
「おまたせー夜野くんってどうしたの?」
「ごめんちょっと急いできたから…」
「あれ?夜野くんってそんな貧弱だったっけ?」
「誰が貧弱だっt ゲホゲホ」
「ありゃりゃ ちょっと休む?」
「うん」
久しぶりに会ったからできるだけかっこよく待っててあげようと思ってたんだけど…なにもかもが上手くいかないな…かっこわる…
ゲホゲホ え…血?
……たまたまか
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう平気」
「それは良かった あーあ久しぶりに会うから少しオシャレしていたのに気づいてくれないし、なんかやばそうにしてるしでサイアクー」
「ごめんってば…」
「それで今日の服どう?可愛くない?」
この前のバーベキューの時の気だるげな服も良かったけど今日は胸だけを隠すようなへそ出しの服?と肌が透けて見えるぐらい薄い白いカーディガンを羽織っている足の方に目をやると半ズボンのジーパンでほとんど足が見えている プールの時と同じくらいの露出の多さ…
「前もそうだったけど小林さんやけに露出するような服ばっかだね…いつも制服はカーディガン着て時々タイツ履いて肌見せないようにしてるのに」
「そこだよ!」
「?」
「制服と私服のギャップ見せつけてやりたいなーって思ってさー あとはいつも冬みたいな格好してるから夏服をよく友達から貰うってのもあるけどね」
「なるほど…」
ギャップね…だからモテるんだよと言ってやりたいがその気持ちをグッと押えて小林さんの宝石のように光る目に視線をやる
「ささ!電車に乗るよー!」
「え?」
「いいからいいから!はい切符!」
「え?え?」
その後のことはあまり覚えていない…流されるように電車に乗ってただ到着するのを待っていた
「つーいーたー!」
「ここ、僕達が住んでる所とはだいぶ違うね」
都会の方に住んでいたから田舎の方に来たのは初めてだった
見渡すとほとんど田んぼと山だったけど自然の空気がとてもおいしい…緑を見る機会がなかったから目にも優しいし…田舎好きになっちゃいそう…
「やっぱ空気おいしいねー!」
「で、結局どこに行くの?」
「私の育った地区で夏祭りがあるからそのに行くんだよ!最後には花火もあるらしいし…まさに恋愛アニメのシチュエーション!」
なるほど小林さんの地元がここって訳か…えぇ!?ここなの!?
「小林さんの地元ってここなんだ」
「あれ?知らなかったっけ?」
「うん、初めて知った そうなんだね…」
軽く雑談をしながら歩く 大自然に包まれて心が落ち着いている…僕もこんな所に住めたらなーなんて考えてしまうけど都会も都会なりの良さがあるためどっちでも良くなる
しばらく歩くと屋台がズラっと並んでいる祭りっぽさ全開の場所に着いた
「それじゃあ私はおばあちゃんち行ってくるから!」
「え?僕は」
「すぐ戻るから!ちょーっとだけ待っててね!」
小林さんの後を目で追うと割とすぐ近くに小林さんの祖父母の家?があった 家の中に入って行く…え?僕は?
「…ひとまずちょっとだけ楽しもうかな」
お金を沢山持ってきといて良かった…カステラ買って…あ、焼きそばも買っとこうかな…
「すみません、カステラください」
「まいど!ん?見ない顔だね?他所からきたのかい?」
「はい、都市の方から…」
「へぇー…来るもんは来るんだね〜誰と一緒に来たんだい?」
「ええっと小林さんときました…」
「おー!つむぎちゃんかー!まさかあんた、彼氏さんかい?」
「え!?あぁいえいえ!全然そんな!」
「まぁとにかく頑張ってね!サービスでカステラ多くしといたから、はいカステラ」
「ありがとうございます?」
なんか多く貰っちゃった…てか小林って沢山いる苗字なのによく知ってるな あのおばさ…お姉さん…
とりあえず買えるものは買ったし、小林さん待つか…
「おたませしましたー!」
「遅かったじゃないk」
「どう…?かな?浴衣とかあんまり着ないから 似合ってなかったらごめんね!」
振り向くとそこには青色の少し派手な浴衣…後ろの髪をお団子にしてくくっていて…なんというかとても可愛らしい小林さんの姿があった
「似合ってるよ…その…可愛い…」
「え?なんてなんてー?」
「もう言わないからな」
「ひゃー怖い怖い、あ りんご飴だー!すみませーん!りんご飴2つくださーい!」
ちゃっかり僕のも頼んでるし…忙しい人だな…
「僕カステラ買っちゃったんだけど…それにりんご飴食べたことなくて…」
「えぇ!もったいないよ!ここのりんご飴格別に美味しいから!ほら、食べて食べて!はい、あーん」
「あー…?」
え?今あーんってした?え嘘じゃん、周りからの視線が…カステラのお姉さんめっちゃこっちみてニヤニヤしてるし…あー顔が赤くなってく…
「どう?美味しくない?」
「あ…美味しい」
口の中に広がるりんご味のシロップが混ぜてある水飴が甘く、少しかじるとみずみずしいりんごが出てくる…これはリピートしてしまうな…
「でしょー?ここのりんご飴は作る人上手くてね!」
「モグモク ゴクン」
「あ…ねぇねぇ夜野くん、舌をべーってしてみて」
「?はい」
「ふふふっ…面白い…」
「え?なにが?」
「鏡貸してあげる、はい」
そこには舌がリンゴ色…赤色になっている自分が映った
「………小林さん?」
「ふふっあははっ!おもしろー」
「……もうヨーヨー釣りとか射的とか金魚すくいしてくる…」
「こらー!そんなので拗ねないの!小4じゃないんだから!」
できるだけ早歩きをして射的の方に向かう、すると後ろから猛スピードで走る小林さんの気配を微かに感じ取れた
「ちょっとーもう拗ねないでよ!」
「射的やらせてください!この人もやるらしいので」
「えぇ!?私もやるの?」
「勝負だ小林さん」
「わ、わかった!頑張る…」
〜〜〜〜〜〜〜〜
「ま、負けた…大人気ないよー!」
「射的は昔から得意、ゲームでもよくシューティングゲームとかするし」
「うぅ…ずるいよー!あのクマのぬいぐるみ欲しかったのにー!!」
「あれ?」
そういえばあのクマのぬいぐるみ、可愛くて撃てなかったんだよな…なんかやけにあそこら辺狙ってるなと思ったら…そう言うことか
「うん、あのクマのぬいぐるみがほs」
「すみません、もう1回射的やらせてください」
「え?」
パン
ナイスショット…さすがゲームで鍛えただけある…ありがとうゲーム友達…まさかここで今までの努力が報われるとは…
「はい、あげる」
「でもそれ夜野くんのじゃ…」
「僕これいらないから、貰って」
「な、なんだそれー!ちょっとかっこいいじゃん!」
「あははっ」
「! 夜野くんが笑った!」
「え?今まで笑ったこと無かったっけ?」
「うんうん!今までクスッとしか笑ってなかったから!はーうれしー…あ!次はヨーヨー釣りしようー!すみませーん!」
「あっちょっと!」
会う時にはかっこつけられなかったけど射的の時にはかっこつけれたからよかった…てかまたプールの時みたいに僕のこと連れ回してるし…
〜〜〜〜〜〜〜〜
「沢山取っちゃったね…こんなに水槽あったかなー…?」
「わかんないけど、僕の家には水槽あるからそこで飼う?」
「そーだね…」
それからというもの、僕達はそこの地区の子供達よりはしゃいでしまって、金魚すくいの金魚を大量に取ってしまった…まぁ大半僕がとったんだけど…
「でもさー」
「?」
「楽しかったよね!」
万遍の笑みを浮かべて金魚やぬいぐるみを持っている小林さんは本当のモデルみたいで美しく、可愛げがあって子供みたいだった
「そうだね…」
「あ!打ち上げ花火もうすぐじゃない?」
「え?あ」
外にある大きめなスピーカー?みたいなものから打ち上げ花火の時間を知らせていた
《えー打ち上げ花火は午後7時半からです。繰り返します…》
午後7時半…スマホを開くと6時45分と書かれていた
「まだ軽く時間あるし…線香花火でも買ってい…」
「大丈夫!ここに沢山あるよ!」
いつの間にか小林さんの手には線香花火の袋が2つあった
「なんで持ってるのさ」
「射的の景品が線香花火でねぬいぐるみも欲しかったんだけど、ちょうどいいところに!って思ってさー」
「小林さんはといると無駄な時間が減る気がする…もしかして効率重視で生きてる?」
「そんなそんな!夜野くんにとってただの出来事だったり無駄な時間だったしてもわたしにとってはいい思い出だよ!」
「じゃあなんで線香花火を狙ったの?」
「……細かいことは置いといて!さ!あっち行くよ! 」
「あ、はぐらかした てかどこに行くの?」
「決まってるじゃん♪」
「?」
「恋愛アニメの定番中の定番!おばあちゃんから教えてもらったちょっと遠くにある神社だよ!」
「え?」
小林さんが指していたのはちょっとというどころかだいぶ遠く、高い神社だった そこには明かりもなくて…薄暗く不気味な雰囲気の所だった
「あそこに…行くの?」
「うん!30分もあれば行けるでしょ!」
「いやいやいや…薄暗くて高くて危ないよ…祭りの会場からも遠く離れてるし」
「チッチッチーわかってないねー夜野くんは」
「わかって言ってるつもりだったんだけど…」
「祭りの会場の奥 あそこにも神社があるじゃん?」
「ほんとだ じゃああそこで…」
「でもあそこはデートスポットとゆーかさー…人が多いんだよね」
「あー…」
さっきからズラズラと人が奥の方に行っているのはそうゆう事だったのか
「だからちょっと遠くで2人きりの方がなんかロマンチックじゃん?しかもおばあちゃんが言うにはあっちで見たの方が花火が近くて綺麗って言ってたの!」
「……」
「ね?いいでしょ?お願い!」
「…わかったけど僕が小林さんの言う恋愛アニメのワンシーンの相手になってもいいの?」
正直不安だ これを遥斗に知られたら僕のゲーム仲間が減ってしまうし、遥斗の背中を押せていないのではないかとか…本当に僕なんかがこんな事をしてていいのかとか…気になってしまう
「…夜野くん」
「なに?」
「今は私といるこの時間を楽しもう?夜野くんは私と楽しく遊ぶためにここに来たんでしょ?」
「………」
「そんな考え込んだって他の人は誰もいないんだからさ」
「そうだね…」
今を楽しむ…か…そうだよな、こんな機会滅多にないのに楽しめなかったら後々後悔すると思う…他の人のことは今は考えないでおこう
「うんうん!よし!行くぞー!」
「おー!」「おー…」
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なんかもう遅れることが当たり前みたいになってきている…投稿頻度とは