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こばすけ‼️
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ずっと憧れていた。
ずっと貴方の背中に焦がれていた。
あの星空の下で約束を交わした後もずっと。貴方と対等になれる日を望み続けていた。
貴方の背中を眺めながらその横顔に夢見ていた。
貴方の言う相棒の肩書きに相応しい国になれるようにと努めてきた。
でも、隣に立てたと思える夜はなかった。
貴方はいつだって振り返って私を見てくれていた。
これからも、今も、ずっとそれだけを心待ちにしていた。
1923年12月13日。
アメリカ・ワシントン州で行われたワシントン会議の場においてアメリカさんの発言が事の始めだった。
「お前!!自分が何言ってんのか分かってんのか?」
「日英同盟を解消なんて!そもそもお前の勝手な都合だろ?なんで俺らがそれに巻き込まれなきゃいけねぇんだよ」
ガタン大きな音を立てて後ろに倒れた椅子とは対照的に彼は前のめりで今にもアメリカさんに殴りかかるような勢いだった。
「さっき君も四カ国条約に賛成してくれたじゃないか」
「それとこれとは話が違うだろ!あれは俺と髭とお前と日本で条約を結ぶ話であって、日英同盟を解消するなんて話じゃなかっただろ?」
「別に日本と君の関係がなくなるわけじゃないだろ?」
「それに、さっきから反対してるのは君だけだ。日本は反対してないんじゃないか?」
蚊帳の外だった話題に急に引き込まれた。この状況では私の意見を言わないわけにはいかないだろう。
この提案に思うところがないと言ったら嘘になる。けれど、利点の方が多いのも事実だろう。
「私は、アメリカさんと同じ意見です」
「は?」
私はその時裏切られたような顔をしているイギリスさんに気づくことができなかった。
「ほら!彼もそう言っていることだしいいだろう?」
「さぁ二人ともここに署名をしてくれ」
私の賛成によって過半数の賛成となったこともありそのまま日英同盟の解消及び四カ国条約の署名はスムーズに進んだ。
私は密かに喜んでいた。
同盟の失効が決まって喜ぶほど不謹慎ではない、だから胸の内で静かに。ただこれで彼と対等な立場に少しでも近づけるのならと。
正式な失効は8月17日と決まり、それまで同盟関係を維持することになった。
私たち国にとって半年は矢のように過ぎた。
失効を惜しんだ彼の提案で最後に二人でお茶を飲むことになった。
それでも私は何一つ変わらないと思っていた。二人きりの同盟が四人のものになるだけ。
私たち二人の間の絆は変わらない。
私と彼の関係が変わることなど何一つないと、そう信じて疑わなかった。
「なぁ、日本。なんであの時あんなこと言ったんだ?」
「お前なら反対してくれると思って」
「私は強国のお二人と繋がりを持ててよかったと思っていますよ。これで私の国際的地位も上がりますから」
その言葉で彼は目を見開いた。少し潤んだその瞳には絶望の色が広がっていた。
「俺はお前のことを相棒だと思ってたよ」
「でもお前は違ったんだな。所詮俺のことは踏み台としか思ってなかったのか」
「強国なら誰でもよかったんだろ?」
なんの話をなさっているんですか?そう聞く間もなかった。
頬に痛みが走った。彼が私を叩いたのだとすぐに理解することなんてできなかった。
何が起こったのかもよく分からず呆然とする私の唇を彼は乱暴に奪うと去っていってしまった。
それが、私たちの蜜月の終わりを告げる最後の愛の誓いだった。
涙の味のするキスを最後に私たちが以前のように相棒と呼び合うことは無くなった。
1945年8月17日。
ため息が溢れた。また焼け野原になったあいつの話を人から聞く。
本当は自分で今すぐあいつの元に駆けていきたいのに。くだらない意地を張り続けていた。
自分でそこを見に行くことは絶対にしなかった。なぜこんなに意固地になるのか、自分でもよく分からなかった。
「アメリカお前、また日本のところに行って来たのか?」
「戦後復興について話し合いがあったからね」
「そうか。どうだった?あいつの様子は」
「気になるのなら自分で見にいけばいいじゃないか」
「今はあいつはお前と仲良くしたいんだろ?」
「なら無理に俺が関わりに行く必要はない」
「別に俺たちの関係が変わったわけじゃない」
「俺はあいつの意思を尊重したいんだよ」
嘘だ。自分でそう思う。あの関係に終止符を打ったのは確かに俺の方だったじゃないか。
今更傲慢が口に出る。
あいつの意思を尊重したいなら、あの時あんなことをするべきじゃなかった。
強がってるのは間違いなく俺だ。
「何を言ってるんだい?君たちはあのころとは大きく変わってるじゃないか」
「もう二人の蜜月は終わったんだ。もう戻れないんだよ。本当は君も気づいてるんだろ?」
ああ、それくらいお前に言われなくても分かってるよ。
でも、あいつは今も俺の中に。俺の中心に居続けるのだから。
今もまだ、裏切られた苦い味だけが胸の中に燻り続けている。
「ああ、そうだな」
何も言う気にならない。それは反論のしようもない事実なのだから。
あいつを必要としているのは俺の方で、あいつは俺なんて居なくてもきっとやっていける。
俺たちの蜜月は確かにあの日で終わったんだ。今、あいつの隣に俺が立つ義務は何一つない。
またあの星空の下であの日のようにあいつと笑い合いたいと思うのは、我儘でしかないのだろう。
2026年8月17日。
あの日を彷彿とさせる今日はイギリスさんの家で会議が行われる。
イギリスに来ること自体はさほど久しぶりではない、でも、この日だけは毎年絶対に避けていた。
あの日を思い出すのが辛かったから。
私たちの蜜月の終わりを告げた口付けの味がまだ口の中に残り続けているから。
全てはとっくに紅椿の思い出と消えてしまったのに。
「よし。これから世界会議を始めるぞ!」
「世界中の問題を皆で解決していこうじゃないか!」
「難しい問題も俺たちが力を合わせればきっといい方向に行く!」
「君達の率直な意見をぜひここで聞かせてくれ!」
「じゃあ、まず俺から行くぞ!今話題の地球温暖化だけどでっかいヒーローを皆で作って、地球をガードして貰えばOKだと思うんだよ!」
「ちなみに反対意見は認めないぞ!」
「私はアメリカさんと同じでいいです」
「またか日本!自分の意見を言え!」
「俺は反対だ!そんな現実味のない案賛成できるか!」
「じゃあ、お兄さんはアメリカとイギリスに反対ってことで」
世界会議はいつだって会議という名前がついてるだけの雑談の場に過ぎなかった。
ぐだぐだと会議は終わりへと向かっていった。
私の視界には彼のブロンドの髪がいつだってあった。忘れることのない、あの感触を今も思い出させる。
会議は長引いた。終わった時既に外には星空が広がっていた。あの日のような星空。
嗚呼、星が鬱陶しい。
あの時の彼も、同じような気持ちだったんだろうか。
2026年8月17日。
もうあれから100年以上も経った。それでもまだ、初恋を引きずっている。
また、俺たちの蜜月が戻って来て欲しいと、自分から突き放したのに今でも思っている。
「イギリス、お前まだ拗ねてんの?」
「なんのことだよクソ髭」
「日本のことだよ」
「ちょうど今日でしょ?お前が日本のことビンタしたの」
「一言余計なんだよ」
「行って来なよ」
「日本はお前のこと迎えに来てくれたんだろ?」
こいつの趣味は大方俺をいじることなんだろう。
相手にする価値はないけれど、それでも、俺を駆り立てるのには十分だった。
小さく舌打ちをすると立ち上がった。
あの日あいつが俺を見つけてくれたように。今度は俺があいつを見つけて、迎えに行きたい。
「日本」昔のように私にそう呼びかける彼の声が聞こえる。
どうやら、彼のことを考えていたせいで幻聴まで聞こえるようになってしまったらしい。
彼が今更私の名前を呼んでくれるはずなどないと分かっているのに。
「日本!」
「なぁ!」
あり得ないと分かっているのに振り向いてしまった。彼がいるなんて思えない。それでも、もしかしてと期待してしまった。
そこには翠色の瞳をした彼が私のことを見ていた。
「イギリスさん?」
「やっと見つけた!」
「どうなさったんですか?こんなところに」
「いや、話したいことがあって」
これ以外の機会は多分ない。聞くつもりなんて本当はなかった。聞いたところで困らせるだけだとしか思えなかったから。
でも、ずっと気になっていた。なんであの時怒ったのか。
「私も聞きたいことがあったんです」
「私はなぜ貴方を怒らせてしまったんですか?何が気に障ったんですか?」
「は?あの時って俺がお前のことビンタした?」
「はい。私は嬉しかったんです。やっと貴方と対等になることができるんじゃないかって」
「やっと貴方の背中を追うんじゃなくて、貴方の横を歩くことができるんだって」
「そう思ってたんです」
「だから、なんで貴方がそんなことを言うのか分からなかった」
「は?嘘だろ?」
「だってお前はあの時『強国と繋がりを持ててよかった』『これで国際的地位が上がる』なんて言うから」
「俺は、お前が俺のことを踏み台としか見てないのかと思った」
「強い国なら誰でもよくて、自分が強くなれるなら所詮誰であっても変わらないのかと思った」
「そんなわけないじゃないですか!」
「憧れたのも、隣に並びたいと思ったのも。貴方だけなんですよ!」
言えるわけがないと思っていた。こんなこと今更言ったところで言い訳にしかならない。
また、彼と話せるのなら。あの頃のような蜜月をもう一度過ごそうとは言えない。
でも、あの頃のようでなくても、もう二度と相棒になれなくても。
今度こそ笑って彼の隣を歩きたい。
「え?イギリスさん?どうしたんですか?」
「俺、お前に見捨てられたと思ってて」
「でもそうじゃなかったんだって思ったら安心して」
彼の翠の瞳からは涙が溢れていた。
それほどまでに、かつて私の言葉は彼の心を刺していたんだろう。
その事実が私の心も刺した。
あの頃の彼がしてくれたように、私は彼の頬に手を添えて優しく口付けをした。あの蜜月の日々のように。
一度顔を離すと、彼は少し驚いたように目を見開いてまだ涙の溜まった目で少し微笑んで私の唇に自らの唇を重ねた。
そのキスはあの日と同じ涙の味がした。
赤い椿の英語の花言葉「You’re a flame in my heart」。
意味は「あなたは私の胸の中で炎のように輝く」です。
コメント
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YURIさん、初めまして!はる。です。第1話読了しました…っ! もう、冒頭から心臓ぎゅってなった…。1923年と1945年と2026年、三つの時間軸を交錯させる構成がめちゃくちゃ効いてる。イギリスの「俺はお前のこと相棒だと思ってた」からのビンタ→キスの流れ、あれ裏切りの痛みと引き裂かれた恋情が一気に爆発してて涙出た。最後の星空の下での再会、やっと誤解が解けてキスを交わすシーン、同じ涙の味がするって描写がもう…100年越しの初恋、叶ってよかったねって心から思えた。赤い椿の花言葉も完璧に刺さった。続きが気になるけど、この1話だけで十分に胸がいっぱいです。素敵な作品をありがとうございます!