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後3人のメイドが現れ、私の髪を整えている
「いたっ…」
猫っ毛で細く長い髪が絡み合い、電気が走るような痛みに襲われた。
「申し訳ございませんお嬢様!どうかお許しを…」
メイドたちはぷるぷると身体を震わせる。
「大丈夫よ。私ってこんなに髪が長いみたいだし、絡まることなんてよくあることよ。」
ゆっくり優しい声のトーンで暖かい言葉をかけた。彼女たちを安心させるために。
震えは止まったが、
「お嬢様…何か良い事でもありましたか??」
と、きょとんとした顔で聞かれる。
「あはは…」
返す言葉が見つからず、曖昧に答えた。
私が私になる前…過去の私はメイドたちの私への対応で何となくわかってしまう。きっと怒りん坊で冷たくいわゆる「悪女」だったのであろうと。
髪を結くのを終え、サファイア色のドレスを着飾り、身なりが整う。
今日の最大の行事、母と父の記念式に向かう準備をしていたらしい。
「お嬢様、ここが会場になります。いってらっしゃいませ。」
メイドに見送られ、会場に足を運ぶ。
入るなり、物凄い勢いで
「リリアン!リリアン!」
と金色の肩までのびる髪をなびかせながら私に話しかけてくる。
私の名前ってリリアンだったのね…
「やっと来たのね。私の子でもあり国の子でもあるのだからもう少し自覚を持って。みんなあなたが来るのを待っていたはず」
私の子…?国の子…?
この美しい女性が私を産んだ母。そして私はかなりの「お嬢様」で身分が高いのであろうと認識した。
「ごめんなさいお母さ…お母様。」
そう言うと、母の表情は和らぎ
「あなたも大人になったのね…」
と、言いながら私の頭を優しくなでた。
後、母は父のところに戻った。そんな中
「あんな悪女待ってるわけないじゃない…」
「しーっ…聞こえたらどうするんだ」
という会話が耳に入る。
全部聞こえてるっつーの。
きっと悪女とは私の事なのだろう。少し落ち込んだ気持ちでいると、この世界で初めて見る漆黒の艶やかな髪に赤い瞳、はっと息を飲むような美しい顔立ちをした男性がこちらに向かってくる。
「あなたがリリアンですか??」
とても暖かいとは言えない冷たい声でそう聞かれる。
「はい…」
小さな声で返事をすると手を引っ張られ2人で会場を出る…。