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「行こうか。」
俺たちは出口を求め、また歩き出した。
ここは最初に目が覚めた室内の遊び場とよく似ていた。
でも雰囲気と感覚だけはまるで違う。
最初の遊び場より暗く重い空気が体にまとわりついてくる。
1歩を踏み出す度に魂が吸い取られるような感覚があった。
だんだん物にピントが合わなくなってくる
身体はふらついて言うことを聞かない。
「はぁ、はぁ、はぁ…、」
次第に息が切れていった。
もう正直立っているのも辛かった。
「あ、あの、大丈夫ですか…?」
「…ん?あぁ大丈夫」
大丈夫なわけがない。
気分が悪い。
頭痛も吐き気もする。
「う゛ッッ…、」
俺は耐えられなくってその場に倒れてしまった。
「…!?!?」
PーPが怖がってる。
早く立って大丈夫って言わなきゃ。
「ゔッ、クッッ…、はぁ、ッ 」
あれ、呼吸ってどうやってやるんだっけ
「…!!」
早く、早く大丈夫、平気って言わなきゃ。
「…ッッ」
そう思えば思うほど呼吸の仕方が分からなくなってくる。
「P…、P、、ッッ」
絞り出した声でPーPの名前を呼んだ。
あとは“大丈夫”って言うだけ。
“先に行け”って言うだけだ。
「だ、大丈夫ですかッ…、!!」
「…ッ」
声が出ない。息ができない。
途端にテレビ頭の言ったことを思い出した。
“ここにいると精神が狂う”
俺も、今精神が狂い始めてるのか。
精神が狂ったらPーPのことを忘れるのか?
そしたらどうやってここから出るんだ。
PーPはどうなるんだ。
息が出来ない
「ッ、はぁ、…はぁっ、はっ、…」
上手く吸えない。吐けない。
そのせいか酸素が全身に回らなくて手足が痺れ始めた。
視界もぼやけ始めている。
「……ッ、はぁっ、ッ…」
分からない。
「苦しそうだね」
ぼやけた視界の先にあいつが現れた。
あのテレビ頭には見覚えがある。
「ッッお前…ッ…」
聞こえるか聞こえないかの声量でしか声が出せなかった。
「ねえ、君」
テレビ頭はPーPの方を向き、声をかけていた。
どんどん聞こえなくなっていく耳でPーPとテレビ頭の会話を聞いた。
「僕…?」
「うん、そう君。」
「一緒に僕といこうよ。」
は?
あいつはなにを言っている。
「え、、?」
「この隣の子、誰かわからないんでしょう?」
テレビ頭は続けた。
「ッ…ま、…て、…ッ」
「…ッいく、な…ッ、!!」
俺は今すぐ立ち上がってテレビ頭をぶん殴りたかった。
「怖いでしょう、可哀想に」
「…でも、」
ぼやける視界の中でPーPがこちらを見た。
それだけははっきり分かった。
「ッ、P…P、」
声を絞り出して名前を呼んだ。
「ほら、いこう。」
お構い無しにテレビ頭はPーPとの会話を続け、手を差し伸べていた。
「…僕は、」
「僕は、あなたと一緒に行かないです。」
「行きたくないです。」
はっきりとは聞こえないが、たしかに俺の耳は声を受け取った。
テレビ頭の誘いを断ったPーPの声を。
「…なぜ?」
「この人は、大切な誰かなんです。」
「大切な人なはずです。」
PーPの言葉に色んな感情が溢れ出しそうになる。
「…そっか」
「残念。」
そう言い残したテレビ頭は、瞬きをした瞬間に俺の視界から消えた。
「…すぅー、はぁー、」
いつの間にか呼吸の仕方を思い出していた。
「…PーP…?」
俺は恐る恐るPーPの名前を呼んだ。
“大切な誰か”
その言葉を信じて。
PーPは少し間を開けて口を開いた。
「思い出したよ」
「キヨくん。」
その言葉に今まで抑えていた感情が一気に溢れ出し、自然と目から涙がこぼれる。
「ごめんね」
PーPは少し俯いて俺に言った
「……お前、泣」
次は涙で視界がぼやけた。
「見捨てないでくれてありがとう」
「当たり前だろ、、泣」
俺は溢れ出す涙を止めることができなかった。
いつもならPーPは絶対に泣いてる俺をいじってくるだろう。
でも今のPーPは優しい笑顔で俺を見守ってくれていた。
「行こうか。」
次にこのセリフを言ったのは、PーPだった。