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宿題で書いたやつを、折角なので共有します
どうせ見てもらえるとは思ってないけど(フォロワー数0)
「……疲れた」
建物の中は眩しく、女性のつける香水がキツくてクラクラした。
少し落ち着こう、と思ってお庭に出てきたぼく。
ここら辺は灯りが少ないから、落ち着くのにはうってつけの場所だ。
お花は綺麗だし、尚更だ。
何処か、座れるベンチでもないものか。建物の中は机しかなくて、足はプルプルしている。
「綺麗なのに、ゆっくり見るところはないのか」
とグチグチ呟いていると、こじんまりとした、何処にでもあるベンチをようやく見つけた。
これで一旦ゆっくりできる! 風景とかどうでもいいから休みたい!
「ふへぇ……」
大人の交流会に、子供がいるのはきつい。
友達がいればまだマシだっただろうけど。生憎ぼくに話せる友達はいないのだ。
女性は、よくあんな疲れるところで高いヒールを履いて平然といられるよな。と、ふと思った。
ぼくなんてただの革靴だぞ? それで疲れがどっと出て外に休みに来るのは、やはり経験の差か。
カサッ
左前の方から音がした。親だろうか? ……いや、その可能性は低いな。あの人達の事だ、ぼくの事は気にしないし。
じゃあ他の大人? それとも数少ない子供? わからないけど、ぼくに近づくのはやめて欲しいところだ。
「……あれ、人いたんだ」
あ、気づいてなかったらしい。でも、近づいてるんだよなあ。
ああ、でも大人じゃないだけよしとしようかな。大体ぼくと同じくらいの年齢かな。じゃあまだ話しやすい。
「ねえ、隣座ってもいい?」
「え、あ、うん。いいよ」
ニコッと、紳士的な笑い方をしてぼくの隣に座る男の子。
よく見なくても、手には花束を抱えている。誰かにもらったのかな?
「お名前聞いていい?」
「……ぼくは緋山來久。君は?」
「僕の名前は だよ。よろしくね」
特によろしくはしたくないんだけども。まあ気にしない。直ぐに会わなくなる。
何故彼が花束を抱えてこんなところに一人で来ているんだろうか。聞いてもいいのかな?
………ええい、聞いちゃえ!
「えっと……なんでここに来たの?」
ただ単純に気になっただけ。そう、気になっただけだ。特に何の意味もない。
「ん? 大人達の話が窮屈で。あと、香水の匂いがキツい」
「あ、ぼくもそれで来た」
意外なところで意気投合(?)した。思ったよりも彼は、こういうところは苦手らしい。
紳士的な笑みをぼくに向けて、こういうところ手慣れてそうだったのに。少し意外だなあ。
そして、彼について最も聞きたい事と言えば、やはりこれである。
「………その花束は何?」
『あ、これ?』と目線を花束に寄せながらくすりと笑う。
「よくもらうんだよ。いろんな女性からね」
さっきたまたまもらって。と言っていた。この人は女性に人気なのか。羨ましいようなそうじゃないような。
それにしても、一人にこんな量の花とか、女性には失礼だけど煩わしい……。というか、うざったい……?
言い方が見つからないが、まあこんな感じだ。
もらっている本人もあはは、と困った顔をしているし、今の言葉は大まかあっているはずだ。
「バラをたくさんもらった時は一番困ったかも」
バラはその本数で意味を成す。それをきちんとわかった上で渡しているのだろう。
それが女性だけまだマシか。男性なら流石に引くぞ。
こんな、家柄が関係あるようなぼくらで、簡単に会えるはずがなく。
それにぼくの親なんかは、『人と関わるな』なんて言う人だから、特に会えるかどうかがわからない。
彼の家はどうなんだろう。彼が優しいから、彼の家族も優しいのだろうか。それとも、酷い性格だから、彼が反面教師にしているのだろうか。
兎に角。連絡手段はない。家がどこかわからないし。
それに、ぼく達は子供だし、簡単にこういうパーティにも行けないから。
まあ、『会えたらいいな』。という願望だけでも持つのは許されるだろう。
父親が亡くなって、ぼくは当主になった。正直うちのところは崩壊寸前で、立て直すのは難しい。
この家に思い入れもないし、捨ててもいい。けど、捨ててどこに行こうか。そうなるから未だに捨てられない。
今日も今日とて緋山家当主として、ある国のパーティに参加する。
もっと大きくしなくちゃ、なんて考えもなく。上辺を飾った言葉を交わすだけだ。
昔は苦手だったパーティも、今では少しは好きだ。うるさいのはやっぱり変わりないけど、ご飯は美味しいし。情勢も知れるのはいいかな。
少しは好きになったけど、疲れるのは疲れる。体力の問題だけじゃない気がする。
絶対に一度は外に行って息抜きをするようになった。
あの時から。
『また会えるといいね』なんて言葉を交わして別れたが、あの日以来、一度も会った事はない。
「ふう………」
そういえば、何人かの女性、花束を持っていたよな。まさか、あの子がいる……とか。
初めて会った時に花束を抱えてたもんなあ。有り得そうだ。
「緋山さま。高梨さまがお待ちです」
「うん、今行くね」
高梨……? あいにくだがぼくとの面識はないはずなんだけど……。
まあ、パーティというものはこういうものだよな。
ぼくはこうして会った人と仲良くなった経験はないけど。
「あ、緋山來久くん…だっけ。久しぶりだねえ」
「え」
あの時の、男の子。
今、ここで出会うんだ。あの時と同じシチュエーションで出会ったな。
やっぱり彼は花束を抱えている。女性がくれるから、という理由だけではなさそうだ。
「久しぶり……と言っても、話はしてないけど会ってるんだけどね」
パーティには来てた……って事か。ぼくもここ最近はよくパーティに参加してたし、会っててもおかしくなかったのか。
お互い何故話に行かなかったのだろうか。彼はぼくがいる事を知ってたんだろ? ぼくは知らなかったけど。
「それと、僕の名前変わったんだ」
衝撃発言―――!?
この世界って、そんなに簡単に名前変えられるっけ。
と思ったのがわかったのか、彼はふふっと笑って答えてくれた。
まあ、勝手に自分が名乗ったと。
彼のご家族がどこかへ行ったから、名前を変えて心機一転。新しい自分としていろいろ変わったらしい。
従者もほとんどを変えたから彼を知る者はほぼいない。だから、勝手に名前を変えても特に何も起きなかったと。
彼を知る者は、少々慣れるのに時間がかかったというが。それも愛嬌だろう。
「僕の名前は輝だよ」
これまでの紳士な笑い方ではなく、まだ子供のあどけなさが残るニッコリした笑顔がそこにあった。
「よろしく、ヒカリ。……と、ぼく用事があるんだけど」
高梨さんに呼ばれてるんだよね、ぼく。ヒカリと久しぶりに出会って正直高梨さんの存在を忘れかけてたんだけど。
「うん、知ってるよ。高梨どの、君の事が気になるって話してたんだよね。その前に、いい?」
「うん、なに?」
話に答えられるなら答えてあげよう。彼とも久しぶりに会ったし、ぼくも彼と話したい。
高梨さんに呼ばれてなかったら、今頃ベンチにでも座って話に花を咲かせてるだろうに。
話した事もない高梨さん、ちょっと恨めしい。彼は何も知らないし、こんな事を言う筋合いはないけれど。
「來久くんよ、僕と一緒に来ないかい?」
そう言ってヒカリはぼくに手を差し伸べる。
行く? どこに?
「君は今の生活に飽きているというか……嫌気がさしているような気がするんだ。だから、来ないかい?」
『急ではあるけど、ずっと思ってた事だよ』と、彼は付け足した。
ずっと思ってた? そうか、ぼくが知らないだけで、彼はぼくの事を知ってたっけ。
彼の言う通り、ぼくはこの生活に飽きているし、嫌気がさしている。
嫌気がさしているのは、ぼくがそこまで好きでもなく守りたくもない緋山家を、大切にしている事だ。
何故ぼくがこの家の当主をしているんだ?
父親が死んだからといって、必ずしもぼくが受け継ぐ必要はあったのか?
たしかにぼくは兄弟もいない一人っ子だけど。ぼく以外に受け継ぐ人なんていないけど。
そこまで好きでもないなら、そんなの気にする必要なんてなかったのだ。
「君には、今と違った仕事をあげたいんだ」
仕事。仕事、ねえ……。
ぼくの学び得た事を活用できる仕事って、なんだろう。
ああ、そうだ。
当主という座に疲れたし、従者として彼に付くのも全然アリかもしれない。
剣術は学んでる。浅はかかもしれないが、外交のやり方も学んだつもりだ。
彼ならお粗末な扱いをするわけでもなさそうだ。
「あなたの元で働いてみたい」
そう、思ったんだ。
そう言うと、ヒカリはぱああと目を大きくして輝かせる。
………
……
…
「さあ、早速話を進めるために帰ろうではないか!!」
体調不良、と言えばなんとでもなる。
ぼくも彼の意見には賛成だ。ぼくだって、早くこの座から離れたいし。
「さあ、行こう」
⚫
――お客さまだ、迎えに行こう柊。
――承知しました、総統様。
早く終わらせるためにと、結構テキトーです()