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次の日、私たちはいつもの音楽室に集まると思い切り机をたたいた。
「今回のステージ、絶対成功させるよ!」
「……どうしたの急に。」
急に私がやる気を見せたものだから二葉と真希が目を白黒させていた。
「昨日のヒロト先生の話に感化されたんだよ、こいつ。」
「ちょっと!桜だって昨日の夜めちゃくちゃ泣いていたじゃん!」
「ちょ、馬鹿!なんでそれ言っちゃうかな!?」
奏は私と桜の言い争いを微笑みながら見つめていた。
「よくわからないけれど、要はこのステージ全力でやって成功させるってことでしょ。」
「それだけじゃない。私たちでこれからも音楽続けていきたいって思っているの。」
私はみんなの前に立ち自分の考えを話した。
「私、進路結構迷っていたんだ。というのもやりたいことが見つからなくて。でも、二葉に音楽やろうって誘われて、なんだかんだとここまで仲間も集まって、私すごく楽しかった。だから、私はみんなと音楽をやりたい!」
私はそう言うとみんなはにこりと笑った。
「なーんでそんな当然のこと言うかな。」
桜は照れくさそうに。
「私は家業を継いでも音楽をやる時間はちゃんと作るつもりだよ。」
真希は満面の笑みを浮かべて。
「私も、みんなとなら一緒にいたいと思う。」
奏はマフラーの下で笑いながら。
「星歌ちゃんがそんなこと考えてくれていたなんて……!」
二葉は泣きながら私に抱き着いて。
みんなの絆がここで再確認できた。
「じゃあこれからも音楽やっていくならユニット名決めないとね。」
「なにがいいかなー?」
五人で考え込んでいると担任の先生が入ってきた。
「お前達ー。そろそろリハーサルやるって生徒会が言っているんだが……そんなに考え込んでどうした?」
「先生!」
私は先生にことの顛末を話した。
「なるほどな。じゃあお前らに一つ聞くが……お前たちはこの音楽活動を通して何を成す?」
「何を成すか……」
「難しいことは考えなくていい。」
みんなでしばらく考え込む。すると二葉が切り出した。
「先生、私は、この世界に住まう人たちに音楽を通して訴えたいことがあるんです!」
「ほう?」
「私、桜ちゃんの一件と弘田先生の言葉で気づかされました。私たちが患っているこの病気には人にとっては価値があって、人にとっては自分と違うから気味悪く見えてしまうってことを。でも、私たちのこの病気はただの生まれながらの「個性」で私たちを構成する一つのピースだから、だから……!」
そうだ、桜の事件も、弘田先生のあの言葉も、母親が私を「気持ち悪い」と言って突き放したことも、それは奇病を患っている私たちからしてみればただの「差別」だ。私たちはそのせいでずっと苦しんできた。他にもそれに苦しむ人はたくさんいる。こんな世界で私たちが生きやすくなる方法はただ一つ。
「玲子さんのように音楽を通して奇病を患う人たちを生きやすくする。それがきっとわたしたちに与えられた役目なんだと思います。」
「……なるほど。そんなことを考えていたんだね。だそうですよ、校長先生!」
先生の後ろへ目をやると校長先生が号泣していた。
「こ、校長先生、さすがに泣きすぎでは?」
「いや……私が見てきたヒロト君たちや玲子の姉貴にそっくりだなぁと……っ」
「え、玲子さんのこと知っているんですか?」
桜がそう問うと校長先生は涙を拭いて顔を上げた。
「私はね、これでも昔は荒れていたんだ。春川組に入って極道をしていたんだよ。と言っても下っ端だったけれどね。でも、玲子の姉貴が死んでこのままじゃだめだと思って雨宮の親父さんに話をしたんだ。そしたらお前に任せたいことがあるからまずは勉強しろって言われてね。勉強しまくって……それで、ここの学校の校長を任されたんだよ。」
「そうだったんですか!?」
校長の言葉に一同驚いた。そして校長の携帯に入っている写真を見せてくれた。髪をピンクに染めていかにもヤンキーのそれにしか見えない出で立ちをしている。しかし今は髪色は茶色くなっていて顔も優しさあふれる顔になっている。写真とは本当に別人だ。
「どうだい高木先生。いいユニット名は思いつきそうか?」
「えぇ、そうですね。「Brave Meroies」というのはどうでしょうか。音楽を通じてヒーローになる……桜さんを助けたあの時のような勇敢さをもつ彼女たちにピッタリです。」
私たちはその名前に文句をつけることなどできなかった。これ以上ない、いい名前だと思う。
「決まりかな。」
「うん、いいと思う!」
「文句なし。」
本番は明日。練習の成果を見せるときがきたのだ。
そして次の日。私たちはステージ裏で待機していた。そこに観客席の様子を見ていた二葉が戻ってくる。
「ひーっ、病院のときの倍以上いるよーっ!」
当たり前だ。この学校の生徒だけでもあの病院に入院している人の倍以上いるのに、今回は保護者や先生、学校関係者が集まっているのだ。
「なに不安がっているのよ、自身ないの?」
「そういうわけじゃないけどさぁ!」
桜が不安がる二葉をなだめつつ楽譜に再度目を通す。
「つぎお願いね。」
生徒会のメンバーが私たちに声をかけその場を去る。
「さぁ、行くよ!」
「おう!!!!」
私たちはステージにあがり各々の配置についた。私たちが舞台に上がった瞬間、会場がざわつく。しかし、観客のことなど今はどうでもいい。今はこの瞬間を仲間と楽しみたい。音楽を共に奏でる喜びを、楽しさを。この場でわかちあう。
静かなシンセサイザーの音が鳴る。それにあわせドラム、ギター、ベースの旋律が流れる。
「♪夜空に光る星よ 我らを照らして――!」
獅子合side
彼女の声で会場の空気が変わるのを感じた。
引き込まれる。彼女たちの決意を、覚悟をこの胸で感じる。
「どうですか、獅子合の兄貴。彼女たちの音楽は」
昔、俺に付き従っていた速水が俺に声をかけてきた。
「すげーっしょ。自慢の生徒達です。」
「……あぁ。」
これが音楽を通してヒーローになることを選んだ彼女たちの音楽か。音も素晴らしいが何より――。
「楽しそうだな。」
「えぇ」
星歌side
一瞬だった。気が付けばこの曲が終わり会場は歓声で包まれていた。
「大成功だね、星歌ちゃん!」
隣でギターを弾いていた二葉が抱き着いてくる。ステージ脇で見ていた弘田先生も悔しそうにだが認めざるを得ないという顔をしていた。
大歓声の中、一人の男性が会場から出ていくのが見えた。その姿は墓地で見たあの初老の男性と同じに見えたのは気のせいだろうか。