12月25日 20歳 クリスマス
可愛らしいイルミネーションの光が薄暗い部屋を照らす。
街中に幸せな雰囲気が広がる中、俺は「親友」との別れを 決意していた。「親友」との関係に幸せの雰囲気などなく、 俺達の関係は限界を迎えていた。本心が分からない、勘違いしそうになる。もうこいつと一緒にはいられない。
「親友」がまだ寝ている早朝に、一言だけ残して家を出る。
静かに降る初雪がひどく冷たく感じた。
5年後
ピピピピッ ピピピピッ
目覚ましの音が鳴り響く。
夏らしい蒸し暑い朝だ。
カチッ
目覚ましを止め、重い体を起こし嫌々ベットから出る。
安藤 尚矢(あんどう なおや)25歳独身 アパート暮らし 高卒
仕事は1年前から始めたBARの店員 昼はバイト。
正直、なんでこんなに味気ない生活になってしまったのかと 後悔している。
スマホ:ピロンッ
(メール)ひなちゃん:はぴばー♡♡今年もよろしくネ😘
「ひなちゃん」こと森岡 陽太(もりおか ひなた)
高校時代のバ先の先輩であり、今の職場の上司だ。
今日は8月16日 俺の誕生日だった。
世間では誕生日と言えば家族や友人、大勢の人から「おめで とう」と祝福してもらえる日だろうが俺にとっては昔を思い 出し、意味もなく年齢だけが増える、ろくでもない日でしか なかった。
ピロンッ
ひなちゃんから引き続きメールが来る。どうやら俺以外に BARの店員が2人増えるらしい。少し仕事が楽になりそうだ。家を出る支度をしながら、変な奴は嫌だな、年下の感じのいい子がいいな、と考えながら自転車に乗り昼のバイトへ向かう。
信号待ち、ふと向かいのマンションのベランダを見ると綺麗 な花が飾られている。水やりをした後なのだろうか。夏の暑い日差しに照らされてキラキラ輝いているその花は、
チューベローズの花だった。
花を見た瞬間、ある1人の名前が浮かんだ。
渡辺 悠稀(わたなべ はるき)
俺はつい、昔のことを思い出してしまった。