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キーボードの音が部屋を響き渡る。
男は黒い仮面をつけていた。
目元が隠れた仮面は黒く光っていた。
「チッ。やっぱ見つかんねえ」
彼は苛立ってマウスをカチカチしている。
「早く見つけねえと、ダメなのに……」
保健室にて。
「景音~!」
「こ、こら!放せ‼」
保健室のベッドには景音が横たわっていた。
景音に抱き着いていたのはバスケ部の部員だ。
「もう~心配したんだからな!」
ベッドの隣には尚が居た。
「おい、お前らくっつきすぎだぞ」
雪は呆れて言った。
「ねえ景音くん、貧血大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。心配かけて悪かったな」
「ほんとに。優しくて貧血って……」
紗季は歩美の隣で呆れたように言った。
「ハイハイ。それじゃ、事情聴取始めるから」
「愛川。頼んだ」
「今藤はどうすんの?」
「俺は先輩と捜査するから」
今藤はそう言って保健室を出て行った。
「雪、今日部活あるっけ?」
「ああ、あるよ。なんか風景画描くらしい。明日はデッサンと資料スケッチらしい」
「秋原ちゃん、あなたも事情聴取受けてよ」
「分かってる。尚、絵菜に部活遅れるって言ってくれ」
「あーめんどくせ。分かった」
尚は首を指すりながら保健室を出て行った。
「それで、事情聴取なんだけど。いくつか質問がある。中家、秋原ちゃん。あなた達何者?」
「ッチ。聞くと思った。まあ、お前らに教えられる範囲だが、あたしは元CIAだ。こいつは元FBI。どちらも、解雇ではなく辞職」
「なんで辞めたの」
愛川の質問に景音の表情が曇る。
雪はそんな景音の表情を見て言った。
「事情があったんだ」
「はあ、まあいいわ。今は二人とも聞いていた通り銀行員と小説家に転職したのね」
「まあな」
雪は景音のベッドの柵に腰掛けた。
そして腕を組むと、愛川に聞いた。
「お前のバディ、今藤だろ。うまくやってんのか?」
「最近交代したばかりなの」
「ふ―ん」
愛川が答えると、雪は適当に返事した。
「それより、早く事情聴取を進めて、私達も暇じゃないの」
「ごめん。それじゃあ、話を進めようか」
愛川はメモ帳を開いた。
歩美と紗季は事情聴取を終えて廊下を歩いていた。
「だいぶ遅くなっちゃったね。部活、まだやってるかな」
「やってるでしょうね。一年生の歓迎会の準備があるし」
「確かに」
そう言って笑った時、美術室の部屋のドアが開いていたことに気が付いた。
「あれ?美術部も?」
「おかしいわね。確かにあるって言ってたけど……歓迎会の準備は終わったって絵菜も言ってたし」
「風景画を描くにしたって、もう八時だよ?外も暗いのに……」
「気になるなあ。入ってみる?」
「うん」
2人は灯りのついた部屋に近づき、ドアを開けると、そこには目元に黒い仮面をつけた男がパソコンを見ていた。
「あなた、誰?」
男はとっさにパソコンの隣にあった、彫刻刀を投げつけた。
「あぶなっ‼」
歩美はサッと避けた。彫刻刀は床に転がり落ちた。
男が身体を横に倒したことで、パソコンの画面が見えるようになった。
そのパソコンの画面には”404 Not found”と書かれていた。
「何のサイトを探していた――」
紗季が顔を上げると、目の前には男の足が見えた。
回し蹴り!
紗季は顔を伏せると、眼鏡を取って机に置いた。
紗季は手を伸ばして男の仮面をとろうとした。しかし、身体を翻しそれを拒んだ。
男は、人差し指を立てると口の前にやった。
彼はよく見るとネクタイを取っていて学年が分からない状態だった。
男は机の上の定規を手に取ると、机の上を叩き始めた。
トン、トントントン、トン、トントントン、トントントントン、トントントントントントン、トントントントントントントン、トントントントン、トントントン、トントントン。
「モールス信号!」
「今すぐ出て行け、か。なるほど」
歩美は紗季の手首を掴むと、廊下に出て行った。
男は黒いマスクをつけると美術準備室に行った。
男はそのまま美術準備室の絵具で汚れた茶色い棚から灰色の金庫を取り出すと中から一万円を取り出した。それを無造作にポケットに入れると、そのまま教室を出た。
そして、菅沢流の働くバーの隣の部屋に入ると、黒いコートを取り出した。
その部屋から出ながら黒いコートを羽織った。
そしてそのまま真っ直ぐ歩いて、階段を上がって行った。
階段を上がってすぐ左の部屋の前に立つと、男はドアにノックを三回した。
「はーい」
部屋の奥から適当な返事が聞こえてくる。
「……誰だ?お前」
部屋から出てきたのは海だった。
男は黒いコートの内ポケットから、一枚の顔写真を取り出すと、海に見せた。
「あ?」
男はその写真を指さすと、手のひらを上にして海の方に向けた。
「そいつの情報が欲しいのか?」
海が聞くと、男は頷いた。
海は男の不自然な格好を奇妙に思い、頭の上から下まで見たとき、男の靴を見て、海の疑惑は最高潮になった。
男の靴はシークレットブーツだった。
「お前、何者だ?」
海がそう言うと、男は海の足を蹴った。
「いっつ……」
海はバランスを崩し、その場に倒れこんだ。
すぐに立ち上がって男を止めようとしたが、男の足は速く、部屋の中に入られた。
ガチャ。
「あっ!おい‼」
ドアのかぎが閉められ、開けることができなくなった。
「なんなんだよ……」
転んだ拍子で、鼻血が出ていたが、それに気づかなかった。
気が付いたのは、部屋の前で転んでいるのを歩美たちに気づかれてからだった。