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夜明け前のスタジオ。
窓の外はまだ暗い。
元貴はソファに座って、
スマホも触らず、ただ天井を見ていた。
「元貴、眠くない?」
若井は床に座り、
ソファにもたれかかって振り返る。
「……別に」
即答。
声はいつも通り素っ気ない。
「顔に出てるよ」
「目、半分閉じてる」
「うるさい」
でも、どかない。
若井のすぐ後ろにいるまま。
若井は嬉しそうに笑う。
「ねえ元貴」
「俺さ、こうやって一緒に静かなの好き」
「……知らん」
「知ってる」
「だって元貴、俺が話しかけないときも離れない」
その一言に、元貴の眉がぴくっと動く。
「……たまたまだ」
「はいはい」
若井は立ち上がって、
元貴の前に回る。
距離が近い。
でも、元貴は目を逸らすだけで動かない。
「元貴ってさ」
若井は楽しそうに言う。
「ツンツンしてるくせに、油断するとすぐ甘くなるよね」
「……は?」
「今とか」
若井が指差す。
「無防備」
「声、柔らかい」
元貴は一瞬黙ってから、
低く言った。
「……調子に乗るな」
でもその直後、
自分でも驚くくらい自然に、若井の袖を掴んでいた。
一拍の沈黙。
若井は目を見開いてから、
すぐにデレデレの笑顔になる。
「え、今のなに」
「デレ?」
「違う」
「寒いだけだ」
「はい可愛い」
「可愛くない」
元貴はそう言いながら、
袖を離さない。
若井は逃げない。
掴まれたまま、優しく言う。
「元貴がデレる瞬間さ」
「俺、めちゃくちゃ大事にしたくなる」
「……言うな」
「言う」
「だって好きだから」
即答。
ためらいゼロ。
元貴は顔を背けて、
しばらくしてからぼそっと言った。
「……若井は、ずっとそうだな」
「なにが?」
「……恥ずかしくないのか」
若井は笑う。
「元貴相手なら、全然」
その言葉に、
元貴の指に少し力が入る。
「……離れるなよ」
ほとんど命令みたいな声。
でも、どこか弱い。
若井は即座に答える。
「離れない」
「最初から、そのつもり」
元貴はそれ以上何も言わず、
若井のほうに少しだけ体重を預けた。
ほんの一瞬。
でも確かに、デレだった。
若井は心の中で思う。
――この一瞬のために、
ずっとデレてるんだよ。