テラーノベル
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#自探索者
ゆむ。
98
#腐向け注意!
テリー・オスト
130
207
カミガカリじゃない世界線
事前設定
・御剣家
カミガカリでは無いが何百年と続いている大きな家で政界にも足を踏み入れている
総代は苑良達兄妹を意外と可愛がっている
だが教育方針に口出しなどはせず静観している
・御剣分家
苑良達が生まれた分家は他分家と比べ本家との繋がりが太く、筆頭分家としての役目を果たしている
槐は次期当主候補
苑良はその補佐や影武者、何かあった時の次期候補
伊沙奈は冷遇というほどでは無いが苑良達とは別の扱いを受けている。ほとんど母と二人で過ごしているが、父親が構わない分兄たちが大層可愛がっている
父親は伊沙奈に対して初めての女の子であること、自分の代でも姉や妹はいい境遇ではなかったためどう接すればいいかわからずほぼ放置している。ただ虐げたい訳では無いので不自由のない暮らしだけは保証している。
母親はそんな当主の悩みや不器用さを知っているから特に不満を漏らすこともなく娘と穏やかに暮らしている。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『俺だって弟だもん』
苑良は楽しそうに笑う伊沙奈と、その相手をする兄を隣で眺めていた
─伊沙奈、楽しそうだなぁ
キラキラと輝くような笑顔で兄と楽しそうにままごとに励む姿はとても可愛らしくていくらでも眺めていられる
とでもいうように既に1時間ほど宿題を傍らに眺めていた
「にぃに!はい!これどーぞ!」
「はは、ありがとう」
伊沙奈がおもちゃのケーキが乗せられたお皿を兄へ手渡すと外では絶対にしないような柔らかな笑みで受け取る
─いいなぁ、
眺めながらも宿題を進めていた手はふと止まり頬杖をついてなんとなく思う
兄と最後に2人きりで遊んだのは、いつだったろうか
物心がつき始めれば始まった兄の代わりとしての教育。
仮面ライダーごっこなんかをしたのは去年とか、それくらい前だったかもしれない
伊沙奈は女の子だからか、父からはあまり構われず母と2人離れで暮らしている
俺たちがやっている稽古も、父たちの仕事についても、自分の家がどういったものなのかも何も知らない
─俺も兄ちゃんと遊びたいのに
何も知らず何も気にせず兄に甘え遊ぼうと言えるのが羨ましかった
兄は多忙な人だ、剣術も勉学も努力だけでひたすらに上り詰めた人だ。
既に次期当主として認められつつあるほどの兄に、俺は「俺とも遊んで」なんて言えなかった
鉛筆を握る手に力が入る
だめだ、このままでは宿題は進まないし伊沙奈に酷いことを言ってしまうかもしれない
そう思えば嫌な思考はぐるぐると回り伊沙奈に対する嫉妬や構ってくれない兄へ理不尽な怒りが湧いてきてしまう
そんな状態でどうしてもふたりを見ていたくなくて宿題と筆記用具を抱えて部屋を出る
襖を開け出ようとした時
「苑良?」
「おにいちゃん?」
2人の、気にかけるような声が耳に届いた
でも、今振り返れば泣いてしまいそうで
酷い言葉を言ってしまいそうで怖くて、聞こえないフリをして自室へ籠った
それから数刻、何度も止まる手を何とか動かしながら宿題を終える
時間を見れば自室に来てから三時間ほど経っていた
─この時間だと、伊沙奈はもう部屋に戻っちゃったかな…
落ち着いたら話したかったな、なんて、聞こえないフリをして出てきたのは自分なのにと眉を寄せてしまう
溜息をつきながら机を片付け、晩御飯まで何をしようかと思っていると
コンコン
軽くノックをされ、声がかけられる
「…苑良?今、いいか?」
兄の声だった
「…うん、いいよ」
なんとなく気まずく感じながらも、突っぱねることもできず部屋へ招き入れる
「宿題、終わったんだな」
「ん…」
素っ気ない、可愛げのない短い返事しかできず服を握りしめる
「…さっき、急に出ていったから、あー…何かあったか?」
ぽん、と大きな手が優しく撫でてくれる
兄が気にかけてくれている、それだけで心の奥がぎゅうっとなり暖かく包まれたような感覚になった
「…なんも、ない、」
「…そうか」
「兄ちゃん」
俯いたまま、兄の顔は見ることができない
「にいちゃん、おれ、おれも、にいちゃんの弟だよね、?」
思ったよりも情けない声が出てしまい涙が滲む
「苑良…?」
普段こんなふうにならないからか、戸惑ったように撫でる手が止まる
「伊沙奈ばっかり兄ちゃんと遊んでる、おれも、…おれだって……」
─兄ちゃんと遊びたい
声に出ていたかは分からない
でも、いつの間にか俺は兄の服を掴んでいた
「…苑良も、俺の弟だよ」
ふ、と軽く笑うように息を吐き、再び優しく撫で付けられる
「今度、二人で出かけて遊ぼうか。…伊沙奈には内緒だぞ?」
出かける、の言葉に顔を上げれば、いつもの涼しげで優しい笑顔ではなくて、イタズラをするような少し意地悪そうな笑顔で
兄の初めて見る笑顔になんだか嬉しくて
「…うん!」
頷くと同時に強く抱きついた
─俺だって弟なんだから、甘えてもいいんだ
暖かくて大きな兄の腕の中はさっきまでのヤキモチも何もかもを包んでくれてとても心地が良かった
─fin
コメント
1件
うわあ…読んでて胸がぎゅっとなりました。苑良くんの「俺だって弟なのに」って気持ち、すごくわかる…。普段はしっかり者の影武者ポジで甘えられないのに、妹にだけ見せる兄の優しい顔を見てると、悔しくなっちゃうよね。最後の兄ちゃんの「伊沙奈には内緒だぞ」って悪戯っぽい笑顔、最高でした。弟として甘えていいんだって認めてもらえた瞬間、涙出そうになった…🌙