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ユキ
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喧嘩を重ねるたびに、私は気づき始めていた。
この人は。
今の私を好きなんじゃない。
自分の思い通りになっていた頃の私を、好きやったんや。
就職してからのヤマは変わった。
特殊な仕事だったこともあってか、言葉は少しずつ強くなり、気づけば何でも自分が正しいというような話し方をするようになっていた。
昔、私が好きだったヤマとは少し違って見えた。
そんなある日。
ヤマのお母さんと二人で話す機会があった。
帰り際、お母さんは少し笑いながら言った。
「私の息子やから、こんなん言うのも変やけど。」
少しだけ表情が曇る。
「最近、昔の旦那に似てきてる。」
「しんどいやろ。」
私は何も言えなかった。
すると、お母さんは私の手を握って言った。
「無理やと思ったら、別れ。」
「女として、私は伊織のこと好きやから。」
その言葉を聞いた瞬間。
張りつめていた糸が切れた。
好き。
その気持ちは、まだあった。
でも。
どれだけ好きでも。
自分が苦しくなる相手と一緒にいることは、私自身が一番かわいそうなんじゃないか。
そう思えた。
きっと。
これはタバコの話じゃなかった。
お互いが、お互いのままでいられなくなってしまった。
ただ、それだけの話だった。
コメント
1件
うわっ、この話めっちゃ刺さった……。「好き」って気持ちと「自分を大事にすること」って、どっちも大事なのに、重なってくれない時があるんだよね。ヤマのお母さんの「無理やと思ったら、別れ」の一言で張りつめてた糸が切れるシーン、グッときた。最後の「タバコの話じゃなかった」ってオチも、無駄がなくてめちゃくちゃ好き。イツカさんの心情描写、毎回解像度高すぎるわ…🔥